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異世界旅行譚 六人が行く!  作者: 朝宮ひとみ
旅の始まりから
23/171

宣託による選択によって洗濯 7

 森に入るのは三人だけだ。準備の間にそれぞれ作戦を練っている。

 シューウィアは弓を磨いて大きな袋に仕舞い、仲間に渡した。入れ違いに最初の試練のビロードの袋のような、魔方陣が刺繍された布の袋を受け取り、中に入っている指輪やペンダントを身に着け、魔力の流れを見る呪文を唱えて具合を確かめている。魔法を打つだろうというのが見てわかる。


 一方クリスティンは同様に魔法具を取り出そうとしたが、シューウィア陣営の様子を見てから途中でやめて、荷物から型の古い銃器を取り出して組み立て始めた。地球の、ドラマなどでよく見る砲身の短い拳銃のような本体に、長い砲身の一部や、狙いをつけるための印、予備の弾倉などをつけていく。

 仕上げに、見張っている立会人に要件を告げ、試射用の脆い弾を込めて、遠くの家をねらって撃った。射程の外の何もないほうへ向かって撃ったので危険はないし、あまり飛ばない弾なので拾いに行くのが面倒くさいくらいである。もちろん、従者が拾いに行き、距離や飛び方や方向などを伝えた。


「俺は何もないからな、これをそのまま使うよ。」


 シュピーツェは補充の矢を一本一本確認すると、ベルトやズボンのあちこちに手入れの道具や工具、防具や矢筒などを身に着け、確認した矢を収納した。ちなみに、弓使いが複数いれば矢じりなどに色を付けることになるし、銃器ならライフリングなどで確認。魔法であれば属性を変えたりして、見分けがつくように決める。




 三人は、見届け人の案内でスタート位置に立った。仲間の助言などはなく、自分で的を見つけ出さなくてはいけない。日没が近く、ただでさえ薄暗い。森の中だから、すぐにも日が沈みそうなほどに暗く感じる。


 見届け人が、三人の得物を確認し、森から出て行った。二~三分ののち、笛が鳴った。


 三人は得物を構えていた。笛の合図と同時に、森の何か所かで木々の葉や草がこすれあう音が響いた。ほぼ同時に、三人は動き出し、魔法の水が細くなったものと木の矢がひゅうっと空気を割いて木々の間へ飛んで行った。一拍遅れて銃声が鳴った。


「邪魔だ!長耳と身元不明ッ!!」


 クリスティンが、射線上に飛びだしたように見えた二人に向かって悪態をついた。その間にも二人はあたりを見回し、どこかへ向かって魔法や矢を打ち込んでは警戒している。クリスティンから見れば二人が突然自分の背後だとかを狙っているように見えてしまい、そのたびに悪態が口からこぼれるのであった。


 彼は、貴族男子のたしなみとして、国の軍隊の徴兵を受けた経験がある。それゆえ、大勢での団体行動や、少人数のチームで役割を分担して動くなどは慣れていて得意なのだ。


 しかし、仲間ではなく各々で動いて、相手二人の動きも予想しつつ、自分のしたい行動も達成するという経験はほぼないのだ。どうしても、二人の行動が邪魔になってしまい、うまく動けない。せっかく的を早く見つけても先に撃たれてしまうし、的を見つけるのは二人のほうがはるかに早い。


 高い木の上のほうに的をつけた鳥が数羽一斉に飛び立った時は、適当な順番に一羽ずつ狙っていくシュピーツェや、魔法で二羽ずつくらい一度に狙って副次的効果で攪乱していくシューウィアに圧倒され、なかなか点を伸ばすチャンスをつかめない。


 小さな的をつけた大ネズミが足元を走り抜けたり、的を背中に着けた立会人たちが森の中を駆けまわったり、妨害のために的を持たない立会人が混ざっていたり、仕掛けで的だけ木々の間を移動したり、ちらりと一瞬だけ姿を見せては見えなくなる的があったり。


 大ネズミに気づいたシュピーツェが的をねらうと、矢が放たれる数拍前にクリスティンも銃を向け素早く打ち抜くが、狙いをずらそうとシューウィアの魔法が割り込んで、矢と銃弾の軌道をそらしてしまう。

 邪魔されないようにと一人になろうとするシュピーツェだったが、意図を理解してきっちりシューウィアがくっついてくるか、意図をわかっていないクリスティンが独り占めはならん!と追いかけてきて、なかなか点数が伸びない。


 その間にも、シューウィアは着々と点を稼いでいく。長耳族は全体的に落ち着いているといわれるし、成人前といってももう百年近く生きているのだ。二人よりも落ち着いているのは当たり前なのかもしれない。




 三人はそれぞれ力を尽くした。魔法や足元を射ることで逃げる立会人を足止めしたり、わざと何もないところを撃って残りの二人を牽制したり、一人でどこか影に隠れて様子を伺ったり、木の上に登ったり。

 三人はひたすら、終わりの合図を待った。途中それぞれ切り傷や擦り傷がいくつもできたが、治癒魔法や応急処置に長けていて問題はない。終わってから十分に手をかければいいのだ。




 日が落ちる寸前と言えそうな、かなり暗くなった状態の中、終わりの笛が鳴った。立会人たちが逃げるように去っていき、三人も追うようにして森を出た。

次回は17日に投下します。



昨日、熱中症の初期症状の頭痛で、昼から寝るまで、家事以外頭冷やしながらずっと横になってる状態でした。

体感で大丈夫そうでも32度~33度超えたら涼しくしたほうがいいです。

(・ω・;)もし びょういんいくと 処置によっては ン万円 とられるんですって……。

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