ふたたびの別れ 1
新しい街を作る商人に誘われて出ていったタリファを見送った後のことだ。五人と一体は昼食のあと、何もせずぼーっとしていた。
ふと、フリューシャが、集落に帰ったらそれぞれどうなるのかと、夏樹やダージュに話しかけた。多くの長耳族は、巡礼の旅から帰ったら、それまでに決まっていた仕事や、親から受け継いだ職に就く。だが、フリューシャの父親は職を継がせないということだけ決めて、具体的に何をするとか提案もしなかった。フリューシャ自身も、できれば店を継ぐ気でいたというのもあって、特に考えはない。
ダージュは親の職を継ぎたくない上に、やりたい仕事があった。けれど、その仕事はもう集落では飽和状態なので、高確率で就けない。夏樹は、二人が知らない仕事や役割については知らないし、戻ってみないと何ができるか分からない。
最も具体的なダージュの希望についてあれこれ盛り上がっていると、二人と一体も加わった。
テトグは旅の間に、同胞だけの国を作るのは難しいだろうと思い始めていた。同胞に出会うたび提案するが、共に国づくりをしようと誘いに乗ってくれる人は少ない。いないわけではないが、数人の力では限界があると感じていた。
なので、何かあるまでは、シュピーツェの放浪に同行し、同行できなくなったら、旅の途中に見つけた、国の端で新しく作られた村に入れてもらおうかと考えている。必ずしも同胞のみの環境でなくてもいいかと、途中から考えが変わったので、早いうちから、どうしようかいくつか決めてあった。
シュピーツェは逆に、自分がどうしたいのかという信念というか、思考の元がなかった。過去を知りたいという気持ちを全くなくしてしまったわけではないが、アクヴァの仲間たちのように真相を明かすために積極的に行動を起こす気持ちはない。
それらしい者に命を狙われるのはアクヴァやその仲間と行動しているときだけだったのだから、ただの旅人として、どこかの国に定住しておとなしくしていれば狙われずに済むのではないかという思いが無視できなくなっていたのだった。
アクヴァたちは、シュピーツェを同志としてみていて、暗部とか裏の世界的な分野の仕事に誘ってくるが、シュピーツェはそういう暗いことに積極的になりたくない。積極的に活動するなら、おそらくもう二度と、五人と一体に話しかけることはできない。クリスティンのような要人の敵になるかもしれない。
アメリアから旅をさかのぼる前に、立ち寄った町で獣人のパーティがテトグに話しかけてきた。同じ猫獣人ワシェナだけでなく、犬耳や狐耳、兎耳などのワシェナよりさらに珍しい獣人もいた。かつてどこかでテトグに出会って誘いを受けた者やその仲間が、仲間を集めるために作ったパーティだった。
もう、小さな集落ができ、定住している者もいるのだと聞いて、テトグは、パーティに付いていくことを決めた。五人と一体は、四人と一体になった。