本当の帰郷 2
リャワまでの道は、あまり変わらなかった。でも、港とリャワの近くは、道がしっかり固め直してあって、舗装された部分が増えていた。魔物や動物避けの柵も増えていたし、安すぎる簡易柵じゃなかった。
舗装が広くなったせいか、リャワの手前の鳥車屋が大きくなっていた。もう少しすると、東西ともに少し先まで広い道ができるから、それぞれ支店ができると教えてもらった。次に旅するときには、森の入り口まで舗装された道があるかもしれないね。
リャワにも、舗装された新しい大通りができ、それに沿ってルプシア式やアメリア式の四~五階建ての建物がいくつかできていた。同じくらいの高さのアーシェ式の建物もあった。夏樹が「エキソバのザッキョビル」みたいだと言っていた。ああいうのがいくつも固まっている場所が、夏樹のいたところにはたくさんあるらしい。
商人以外に住み着く人が増えていて、ルプシア式の噴水広場や公園があった。噴水はそんなに大きくないけど、目印には十分だと思う。東西南北、ひとつずつに違う格好の噴水があると教えてもらった。
旅の間にできた知らない店にも、最初に来たときに立ち寄った店にも、両方入ってみることに決めていた。
出発前に入った日用雑貨店は新しい大通りに場所を移していた。僕が換金用に持っていた宝石が、宿数日分くらいの何とも言いづらい値段でまだ売られていた。
東側の門を出ると、しばらく道沿いに無許可の露店があった。舗装された道は荷物用の大きな鳥車や馬車がすれ違えるほどに広がっていた。僕たちは、あえて歩いて進むことにしていたから、街道沿いをあれこれ観察しながら進んだ。新しい街道が、何年かかけて東西に通るようになるのだというのを、真新しい詰め所にいた国際機関の人に教えてもらった。一番先にある詰め所の位置と距離を教わり、そこまで進んだ。簡易施設の中で一晩明かした。
舗装された道のおかげで、移動時間は短くて済むし、野宿のために罠をはったり魔物よけの香をくさいほど焚きしめたりする必要がないのも、とても良いことだ。あれ、街の中の人には特に嫌なにおいがするんだろうし、商品によっては匂いが付くから商人だと使わない人も今までたくさん見てきた。
森に入って最初の集落は、半日分くらい先にある隣の村と一緒になって、賑やかになっていた。その先はあまり変化がないが、見かける行商人の荷物が増えていた。大きな荷車で入れる範囲が広くなったのはやはり影響があるんだなあ。
村や集落では、やっぱり耳飾りを見て祝福の言葉をくれる人がたくさんいた。中には、先に僕たちの噂が届いていて、村に着いてすぐから歓迎してくれたところもある。もちろん、夏樹にも祝福の言葉や贈り物があった。夜に特別な料理をふるまってくれたところもあった。
旅の最初の目的地、つまり、リャワに向かうまでに最初に夜を明かした集落で、僕たちはこの旅で最後の夜を過ごした。妙に無口になってしまって、なぜだか恥ずかしかった。
寝るまで、夏樹はアメリアで買った図鑑を読んでいた。ダージュは道具の整備をいつも以上に念入りにやっていた。僕は二人の様子をしばらく見ていて、それから二人に断らずに眠った。
最後の朝。集落を出る前にダージュが僕と夏樹の衣服や装備品を整えてくれた。ちょっとでも見栄えがいいほうがいいだろ、とか言ってた。
僕たちを気遣ってくれてるのが僕たちに伝わるのが恥ずかしいんだろう。わざと冷たいふうに言ってた。迷惑そうなわりに、最初のころみたいな喧嘩腰でもない。言うだけじゃなくてちょっと手をかけてくれたりしてるし。アーシェの小説にある「ツンデレ」というやつだろうか。
木々の合間から見えてきた僕たちの集落は、相変わらずのように見えた。さあ、どうなっているだろう。