番外 世界地図がない
メインの舞台となる大陸は海峡によって大きく南北に分かれている。なお、この世界の人からみるとこの海峡は、特別ではあるが単なる大きな川(水が流れている地形)という認識である。海峡なので地質を調べると年代によって広さが変わったり、変形していることが分かるはずである。
大陸は伝説上のものを除き、この大陸しかない(と考えられている)ため、名前がない。アーシェ人が地図を作るとしたら、そのままTHE CONTINENTだとか主大陸などと書くのだろう。
大陸はこの海峡をはさんで大きくふたつに分けられる。それぞれを北大陸と南大陸という。北大陸は中央にある大山脈のふもとに広がる森を除いて、だいたいの地図が生活に必要程度に完成している。
南側は、長耳族集落を多くふくむ大森林地帯・通称「長耳族の森」など、海峡に近い北部のわずかな部分しか判明していない。古い地図により、大まかな大陸の形と昔の地形はわかっている。しかし、南大陸は南半分が現在の状態が不明である。
わかっていない部分には、このシェーリーヤ世界でのジャガイモやトウモロコシなどの原産地である巨大な山脈がある。名前は長耳族の古い言葉でついたものしかなかったが、アーシェ人の間でつけられた「アンデスポイ(アンデスっぽい)山脈」という名称が極地的にではあるが、徐々に認知されつつある。
南大陸の全容が分かっていないのは、古代の大戦争ののちの長耳族同士の戦乱によって外縁部の町が消滅し船の往来が途絶したことと、平地の広い範囲に住む南方人が、外来の者に対して非常に攻撃的であることが原因である。
なお、アーシェ人の探検家など地図製作のための探検隊がつくられたことが何度かあるが、たいていは南方人に遠方から投げ槍で惨殺されるか、その前に逃げ帰るのがせいいっぱいであり、外縁部しか進まない。
アーシェ人向けの説明を総合すると、南方人は
「ステレオタイプな『未開のアフリカ人』を、肌を赤くして、装飾品の色を地味にして、体格を高身長ゴリマッショにした上で2メートルくらいの槍を装備させた者」という風に見えるようだ。
アーシェのアフリカ系などと異なり、南方人は手のひらなども皮膚の色が濃い。また、かつては歯や爪も濃いとされていたが、歯が白い個体が目撃されており、歯や爪は何かで塗ったり染めたりしているものだと判明した。
彼らについて分かっていることで最も重要なのは、森に逃げ込めば追ってこないということである。投げやりは飛んでこないが、足もとの石などを投げてくる。森までたどり着いてもそこで安心せずに出来るだけ遠くまで走ることが肝要である。