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不気味な集落 3

 人間の乗っ取りをする魔物は数種類います。たいていはドッペルゲンガーというもので、単に見かけた人間の姿を真似してふらふらしているだけで、害は少ないです。

 まれに、もっと珍しい、上位の知性的な魔物の記録もありますが、古代の大戦争で滅んだり、人間の目の届かない場所に秘密の住処を作って彼らだけで暮らし、現在では人間に干渉することはありません。


 今回の集落を乗っ取ったのは、不定形のスライムのような存在です。冒険者時代に散々狩られたような、小さくて知性もなにもないようなものではなく、大型動物も包み込めるくらいに大きくて、学校に通う子供程度かそれ以上の知恵があります。


 探し当てた記録によると、数百年前、この星の何か所かに隕石が落ちました。その隕石にくっついてやってきたよその生き物がいくつか、落ちた場所の近くの人間を食べて、その人のふりをしてしばらく暮らしていたというのです。彼らは名前を持たなかったので、『不定形の者』という呼び名がつけられました。


 消化してしまった人間を助けることはできませんでしたが、他の人が食べられてしまう前に、その『不定形の者』自身の協力もあって、彼らを特別な波動で出来た炎で燃やし尽くすことができました。


 その、とっても特別な魔法を紡ぐために、多くの魔法使いが周りの集落に集まっていました。フリューシャやエルージャの集落にも、魔法に協力するための魔法使いや、そうした人が森の中で隠れたりするための野外活動の専門家、地球アーシェと比べればまだ未熟ではありますが植物学者もいました。国際機関の書記が何人か、せっせと筆を走らせているのも見えます。




「ずいぶんと、面白いものを見つけたじゃあないか!!」

 現場から東へ数日ぶん先のそこそこ大きな村の喫茶店に、喧騒に負けない威勢の良い声が響きます。


「げっ」

「あっ」

「え……」

「む」


 六人と一体はその声の主を素通りする途中でしっかりと声の主とその取り巻きに捕まってしまいました。世界で一番の規模を誇る魔法学校の成績第一位・クリスティンとその学校で選抜された生徒たちです。揃いの制服が六人を囲み、中にはハユハユをちょいっと捕まえて観察するやからもおりました。


 クリスティンは六人と一体の腐れ縁です。性格に難はありますが、悪い奴じゃあないし、学校で魔法を学ぶ者の中では最高に腕が立つのも間違いありません。そんな彼が、六人と一体に、周りの人々のことを教えました。


「我々のような次世代を担う者から、各地の長耳族の長老や高名な魔術師、記録に残る古の魔術師の子孫まで、最大にして最高峰の魔術集団が今ここには存在しているのだ!百を超える東西を超えた集団のその波動を!まとめあげ、浄化の炎をつくりあげる!なんて素晴らしい!!」


 大声をあげ、天をつかみたいがごとくに手を勢いよく伸ばし、クリスティンが叫びます。小声でうるさいとツッコミが入りました。取り巻きの生徒が声の主に突っかかっていくと、声の主が大きくため息をつき、同時に生徒がぶわっと後ろに飛ばされました。


 声の主は体格の小さな碧眼の民の女の子です。体格のいい、十七、八歳の男子生徒を勢いよく突き飛ばせるようには見えません。碧眼らしい白い腕には入れ墨のような深い傷のような、不気味な黒い紋様がありました。


「ああ、貴女はかの高名な風の王の子孫でいらっしゃるミユル様ではありませんか!!」

「うるさい。」


 クリスティンが勢いよく席を立ってミユルと呼んだ女の子に走り寄ろうとして、吹っ飛ばされました。風の王というのは、数百年前に高原地方の国を治めていた王様の二つ名のひとつです。


 風の王は、生活に使う以外の魔法が禁止されていた年代に生まれ育ち、魔法の教育を全く受けていなかったため、高い素質に気付かずに暮らしていました。ある時、家族に災難が降りかかった精神的なショックで嵐を巻き起こしたことでその素質が見いだされました。見いだされてからは、暴発しないように鍛錬を重ね、嵐を起こすことによって外敵の侵入を阻んだなどの記録が残っているのです。

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