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不気味な集落 1

 フリューシャたちはエルージャに案内されて、彼らの出身集落の手前にある集落に来ていました。ひらけた場所はわずかで、一軒の平屋の宿があるだけ。他には、その周りに四軒の家がぱらぱらとあるだけでした。四軒は樹上の家で、とても古い建築様式なので、慣れている人でないと樹だけなのか家があるのか区別がつきにくい状態です。


「おかしいな。もともと小さなところだったけど、リャワやリューシャんとこ行く時に通ったときにはこんなにも寂れた風じゃなかった」


 わずかひと月にも満たない間に、何があったのでしょうか。



 宿に荷物を置いた一行は、魔物や大型動物の襲撃かと思い、装備を整えて四つに分かれ、樹上の家の近くの木に登って偵察しました。

 最近雷が落ちた記録もないのに、焦げている木が点々と見えました。やはり、何かに襲われて魔法を使ったつめあとでしょうか。集落の人に確認して見ますが、首を振るだけで何も答えません。

 焦げた木に近づこうとエルージャが波動生物ハユハユを肩に載せ、夏樹を連れていこうとすると、集落の人が引き留めます。


「魔物が出たら怖いからここから出ないでくれないかね」


「いや、だから原因を調べるために、あの木の焦げ方や周りを調べたいんだよ。必要があればこいつ(夏樹)の道具で写真を撮って、アカデミーや専門の研究所で調べてもらえる。しかも、いちいちそこまでいかなくても、こいつの機械があればリャワにいる直接偉い先生とやりとりできるんだ」


 エルージャの説明が分かるのか分からないのか、集落の人々は抗議の声を上げます。


「そんなもの信じられん!」


 エルージャは腹が立ってきました。


「機械が信じられねえってんなら、余計に、誰かがじかに見に行かないとわかんねえだろうが!」


「波動生物たる私もいるのだ。危ないことが起こる前に切り上げて帰ってこられるから、問題はない。それに、このアーシェ人の耳を見るのだ。試練を超えて、経験は十分つんでいるのだ。おまえたちの魔法の出来によっては、おまえたちよりこいつのほうが魔物退治に向いておるのだ。」




 エルージャと夏樹とハユハユが集落の人と揉めているあいだ、フリューシャたちも困惑していました。木から降りて話し合うフリューシャたちは、集落の人たちに、宿の前のひらけたところから離れないでほしいと強く頼まれました。そして、エルージャたちが外へ出ないように説得してくれと言われたのです。


「それは困るよ。あの焦げを調べないと、魔法なのか、自然の雷なのか、魔物の能力なのか、解らないよ。今のところ、ぼくたちには『雷が落ちた』ってことしか、解らないから、何かあっても守り切れないかもしれない。そういうわけにはいかないから、調べてきてもらうんだよ。」


 フリューシャが集落の人をなだめますが、彼らは納得してくれません。やがて、エルージャたちも一度戻ってきました。宿に入って隙間からこっそり外の様子をうかがうと、集落の人は解散せずに出入口を見張っています。

 必ず、宿の出入り口を見ている人がいます。こっそり出ていくのは難しそうです。それとも、粘り強く待てば、諦めてくれるか、人手が足りなくなったりするでしょうか。


 交代しながら二人以上で夜になるまで見張っていても、集落の人々も数人ずつちゃんと交代しています。その様子を見ていて、猫獣人のテトグが妙なことに気付きました。


「ねえ、まったく同じ人がいるんだけど、何なんだろう」


 彼女が指さしたところにいる人は確かにそっくりです。しかも、そっくりなだけじゃありません。顔のしわや、ほくろの位置まで、まったく同じです。双眼鏡で見ると、指の関節の細かいしわまで同じです。双子や三つ子でも、そこまで同じにはならないでしょう。


「気味が悪りぃな」


 双眼鏡を下ろしながらエルージャが言いました。続いてハユハユがうむ、と相槌を打ちました。


「これは何かあるのは間違いないが、これだけの人数の目をかいくぐるのは難しいからな。わしとシュピーが行こう。フリューシャたちは、村を出て引き返すふりでもして目を引いてくれ。どうせ揉めるだろうから、適当に時間稼ぎもできるだろう。エルージャは無理そうならフリューシャたちと一緒にいてくれ」


 一同は筆談で作戦を練りました。それから、荷物をまとめて宿を出ました。

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