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番外・長耳族の一生とフリューシャの成長について

 長耳族は生まれて10年くらいで人間の4~5歳にあたる。自分の身の回りのことができるかどうかといった具合。例えば、ボタンなどの複雑でないものなら着れるくらいか。行事で長老や魔導士(高位の場合は魔導「師」)と出会う以外に家族以外の者と交流することは少ない。


 12歳の誕生日に日本の七五三のような行事を行う。それ以前に死んだ者は、死んでから一〇〇年間、家族以外のものからは存在しないものとして扱われる集落が多い。

 フリューシャには、12歳以下で死別した知り合いがいる。ダージュと別の幼馴染で、彼にはフリューシャしか知り合いがいないため、集落からは比喩でも何でもなく「存在しない」者扱いである。



 20歳で人間の7~8歳くらいにあたる。

 集落にいる『せんせい』に読み書きなどを教わり始める。人間種族だと学校(日本の小学校相当)に通い始める頃だ。

 学校の場合は最低限の読み書きや計算、社会科や理科や生活科相当の内容を習う。単に「学校」といった場合はこの初等教育の学校をさす。学校は早かったり遅かったりしなければ5年間。一日に3~4回(合計で3時間程度)の授業がある。

 フリューシャは『せんせい』のところへ通うようになっても、周りの集落の子も行く簡単な学校施設(『せんせい』よりは高度だが学校よりは単純、一日3~4時間)へ行っても、いろいろ行動がゆっくりすぎた。せかしても急がない。超手のかかる問題児だった。もしかしたら障害かなにかがあるのかもしれないと学校の人間たちは考えていたほどだった。


 学校では日本の学校と違い単元ごとに試験を行い一定の点数を取ると単位がもらえ、全ての単元を終えると卒業というしくみになっている。フリューシャは覚えが悪いのか何なのかわからないが、何度も同じ単元を学ばないと単位が取れなかった。先生たちには予想通りだ。



 30歳で人間の10歳くらいになる。遅い子でもそのあたりまででようやく身支度が自分でできるようになる。フリューシャは遅かった。

 地球上よりも発達がどうの知恵がどうのというのを気にとめない緩やかな世界であるが、長耳族はさらにゆるい。

 その代わり、発覚した場合は特に皆で見守るようにしており、何ができて何ができないかを皆が気づいたりそれを共有したりして、大人になるまでの方針が決まる。中には得意なことを見いだされ道を極めて職人として歴史に名を遺す者もいる。




 40歳で人間の14~15歳くらいにあたる。「せんせい」から学んでいた者も、その「せんせい」の元を離れる。あるいは学校の高学年で学ぶ。早い人は学校で教わる内容を終えて、ほかの人間種族に交じって高等科目学校(日本の高校の専門学科や専門学校などに相当)に通う者もいる。しかしフリューシャは高等科目の単位は半分くらい残っていた。


 50歳~60歳で人間の16~17歳くらいに当たる。このころには集落を出てアメリアなどへ渡り、同じ年代に相当する人間に混ざって高等科目学校の専門科、通称アカデミーに通う。我らがフリューシャは57歳でようやく残っていた単位を終えて、学校のあるリャワ通いを終えるのだった。


 それ以降、人間の17~18歳前後のように、体は成人と変わりないが精神的には宙にういたような状態となる。そのまま卒業までアカデミーに通う者は少数だが一定数いる。集落で仕事や役割を持って働くものも多い。しかし長耳族には一定の割合でニートが出現する。


 いや、出現しても誰かに責められるとか社会的に邪魔とかそういうことは集落においてはまったくない。ないのだけども、人間社会ではやはり「何もしてないやつ=社会の敵!」みたいな人はいる。成人の儀のためなどで旅に出るときに職業欄などで扱いに困るので、役割がない人には集落内で何らかの役割があることにする慣習がある。




 成人以降は、非常にゆっくりと年を重ねていく。早い集落では成人前後から200歳までの間に結婚して家庭を築く。子供が産めるのはだいたい80歳ごろから500歳くらいまでのあいだ。女性の閉経のほかに、男性も極端に欲がなくなったりするなど。生まれるまでの期間はさすがに十倍ということはなく、2年か2年半くらいである。


 450歳くらいで中年。しわが少しずつ増える。髪はなかなか白くならない。交流が少ない時代は髪の毛関係のおまもりとして長耳族の抜け毛を一本詰めたものが人間種族(多口種と両性種と赤眼)の間で売られていた。

 800歳でようやく見た目もしわが増えて、年寄りの仲間入りである。


 だいたい900歳を超えると寿命が見えてくる。なくなる10~20年ほど前から急速に衰え、晩年は数年は寝たきりや座ったままで、周りの世話を受ける生活になる。

 平均が1000歳程度で、記録にある長寿は1500年と少し、1499年、1300年くらいが10人ほど。記録がない者だと1700年生きた人がいるという言い伝えがあるがさしずめ、人間でいうと150歳くらいになってしまうのかもしれない。




 集落の仕事は狩猟採取や農林業が多く、次にリャワなどの大きな街から野菜や果物や生活雑貨などを仕入れて売る小売業が多い。あとはどの集落にも必ずひとつかふたつは喫茶店があるのでそこで働いている。それ以外の人はほぼ皆自分で家事を行う。もちろん、先にあげたニートであっても。


 子供は何か才能を見出されたり新しい業種が生まれない限りは親の仕事を継ぐ。ただし小売りと喫茶店は世襲でなくても知り合いや近所の人に継いでもらうことも珍しくない。例えばフリューシャの父親は両親が小売りだったが継がず、基本は採集だった。つなぎとして数年だけ喫茶店をもっていたくらいで自分の店は持っていない。両親も祖父母もフリューシャに小売りや店をやってほしいと思っていない。おそらく本人も言われてもやらない。

次回は9月3日月曜日に投下する予定です。

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