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異世界旅行譚 六人が行く!  作者: 朝宮ひとみ
旅の始まりから
14/171

旅を始めた頃には 3 ダージュ

 旅立ちの前のことを、ダージュは思い出しました。




 まず、準備のために朝集まるときから、フリューシャは寝坊しました。ダージュも、起きてはいましたが、着ていく服を枕元へ出しておくのを忘れて、いちいち引っ張り出していたため慌てて樹を下りていて滑ってしまい、集合場所で大人たちと夏樹が驚いていました。

 夏樹は借りた服の上から学校の制服だというアーシャ式の長袖の上着を羽織っていて、暑そうに見えました。


 もう初夏なのに、家でも体を拭くまでずっと暑そうな上着を着ていた、変な奴だ。それがダージュから見た夏樹の第一印象でした。


 ダージュは、はじめは人数あわせのつもりでした。異世界から着たばかりの夏樹では旅の同行者としては心細いなんてものじゃないからついていくが、仲間が増えたら帰ればいい。そんな気持ちだったのです。


 旅の支度をするのに、フリューシャは遅れてくるし、渡航で渡されるはずの夏樹の所持金は出立までに届かなくて、元々の日本円を珍しいコインや紙幣扱いで売って代わりにしましたし、近辺で一番大きな町リャワに行くまでに夏樹が何度かバテて倒れましたし、と面倒なことがいくつもありました。


 フリューシャは自分の旅なのにいまいち緊張感というか、真剣さがなくほんわかしているし、夏樹はこれまでの生活のせいで体力が違いすぎて予定の幅を大きくしなくてはいけないし、オマケのつもりが結局出立のときからダージュは自分で二人を引っ張っていくしかなかったのです。




「最初はほんとうに面倒くさくてさ。リューシャも夏樹もすぐ寝るし、起きててもぼーっとしてるしで。

 リューシャの無駄遣いと夏樹がだまされたせいでお金がないから、乗鳥も借りられなくて余計に時間かかってさ。リャワでもいきなり荷物を売る羽目になったよね。

 出発したばっかりの三人じゃ傭兵代わり出来るわけないから仕方ないんだけどさ。何売ったんだっけ。リューシャが家から持ってきた茶葉じゃ足りなくて、結局質入用の宝石いきなり出しちゃったんだったよなー」




 異世界人でも、転移の際の魔法の効果で、標準語なら会話が出来るようになっています。しかし、文字は自分で覚えなければいけませんし、東方語や長耳族の古い言葉などのまったく異なる言葉はそのまま聞こえるので、標準語を聞いて分かる人が相手でないと会話が成り立たないのです。

 それで、他の言葉や仲間内の暗号でこっそり話し合うとか、契約書などを声に出して読むときはよくても実際に書いてある内容は自分に有利なようになっているとか、という方法で異世界人ばかりを狙う詐欺師がいるのです。


 夏樹がそれに引っかかったのは、読んでいる内容を信じて文面を確認しなかった自分のせいだと、ダージュは心の奥に後悔をしまいこんでいます。それを出さず笑いながら思い出話をし、そして引っかかった当時は本気で怒ったのでした。




「ああ、早く仲間を探さないといけない、一人じゃ無理だと思ったのはそのときだね。せめて、リャワを出るまでは、一緒に来た商人たちと一緒に居るべきだった、って。俺ずっと怒ってたんだ。

 怒鳴られた夏樹が泣いていたときも、この弱虫!としか思ってなくて。


 ……俺が夏樹と同じ世界で同じように育ったら、俺も泣き虫だったと思う。」

次回は25日(月)に投稿します。

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