巡礼 26日目~
二つ目の遺跡で疲れをとったフリューシャ一行は、遺跡にいた男の言う通り、最終目的地である古い町アル=カディアを探すために、大雑把な位置まで乗鳥を飛ばしていた。二十六日目のことだった。
考古学的な調査なども全く行われておらず、正確な位置が残されていない。どれだけ絞り込んでも、日本の都府県ほどの広さを彷徨うことになる。幸いなことに、このパーティは夏樹がこれまでの道のりをスマートフォンに記録しているし、アル=カディアに関する神話時代からの記述もメモしてある。
それが慢心を生んだのか、同行者のふんわりした性格がもたらした不幸なのか。それらしい長耳族の遺構自体が見つからない。百年たたない新しい集落の跡が二十七日目の朝と二十九日目の午後に見つかったのと、アメリア人やツァーレン人の祖先の遺跡らしきものを三十日目の夜に見つけて、そこで夜を明かしたほかは、人工物自体が遠くに見える近代の灯台しかなかった。
そもそもその灯台は、気象条件が良くて、望遠鏡などを所持していればかなり広い範囲で見える。そのことを、たまたま一行は知らなかった。
三十二日目、小さな森の中にあの植物鉱石で出来た塔の残骸があるのを遠くから視認し、乗鳥で駆け付けたが、その残骸を利用したアメリア人の祖先の定住跡だった。見えていた塔の残骸以外に長耳族由来のものはなかった。疲れ切った一行は、甘どんぐりや南方のものより小さくて味気ない果実をむさぼるように取って食べた。
三十三日目にとうとう持ち込んだ食料が底をついた。遺跡の捜索を諦め、森と川で肉や魚や果物をとっては食べ、あるいは干した。一度の食事の量を話し合って決め、出来るだけ長く持たせようと誓い合った。
三十六日目、遠くに人が住んでいそうな街並みが見えたため、一行はその街へ向かった。