番外 残されるほう
北側にツァーレンの城壁がはっきり見える小さな町で、タリファとテトグとハユハユは農家の短期アルバイトをしていた。収穫から出荷までの手伝いである。機械でひたすら掘り上げた根菜類をテトグ班ハユハユ班は無心で洗い、選別器に放り込み、いっぱいになった箱をタリファ班のところまで持っていく。三つの班で一つのまとまりになっていて、食事の配膳はまとまりごとだし、部屋割りもまとまりごとの男女二つの大部屋だったりする。
その日の作業を終え、夕食を取っているときだ。タリファは根菜を刻んで乾かしたものが入った茶を飲んで思わず、
「ねえフリューシャ、これリャワで売れるかなー!?」
言いながらきょろきょろし、急に真顔になって、しょんぼりと首を垂れるのだった。
「恥ずかしい……。今日で三回目だよねえ、これ。」
「ううん、八回目かなー」
「本日三日目で通算二九回目だぞー」
すかさずテトグとハユハユからツッコミが入る。タリファは、うううー、とアーシェの漫画や小説の少女のような可愛らしい唸り声をあげながら、下を向いた顔を両手で覆った。同じ班の人が、ニコニコ笑いながら、様子を見ていた。
ドワーフだからどうせ本当に可愛らしい中高生の年齢でもしわ数本ぶんしか顔は変わらないが、三十路四十路でまさかそんな可愛らしい声が出るとは、本人にとって想定外すぎた。
「ああ、もう!調子狂うんだよッ!!あいつがリーダーだったから、あの中ではあいつと喋ることが一番多かったし」
手を外し、顔を上げたタリファは、食べかけの小皿のおかずを素早く口の中に片づけて、部屋へ逃げ込む。
土壁のような硬い床に線が引いてあり、それぞれ名前が書いてある。荷物や布団はそこからはみ出してはいけない。乱暴に広げたせいで敷布団がはみ出ていても隣接マスの人は事情を察してそっと手で布団を直すだけで彼女を放っておくのだった。
次は21日に投下します。今月来月はこのペースで投下したいですね。