巡礼 16日目~
十六日目から数日間、フリューシャたちは何事もなく進んだ。時折、長くて数時間のあいだ雨が降った程度で、道は険しい箇所もない。朝晩が冷え込むが、日中は雨がない限り暑くも寒くもなかった。時折、乾いた涼しい風が吹いていた。地面は薄く草が生えており、砂埃が舞うような場所はわずかだった。
進むにつれて、朝晩の寒さがきつくなってきたため、野ウサギのような小型動物以外に、中型の動物を狩って、干し肉と防寒着を増やすことにした。北方にいたこともあるエルージャたちは寒さにも対応できていたが、山地の中にある高地の国にすら立ち寄っていなかったフリューシャたちには、朝の冷え込みはかなり厳しいものとなっていたのだった。
二十一日、二十二日目。教えてもらいながら三人がかりでなんとか自分たちの分の皮を処理し、縫い合わせていくことに専念する。防寒具づくりの間に肉を香草と共に煮込み、スープを作る。夏樹が風邪をひいたので大事をとって移動を最低限にせざるを得なかったのもある。洞窟を見つけ、一行はそこで体を癒した。
夏樹のスマートフォンで地図を確認しても、予定の遅れは少ない。もともと幅を大きくとっているのもあるし、エルージャたちを助けた以外に寄り道もないし、魔物や動物との遭遇も多くない。
風邪を引いた夏樹以外も、消耗は大きかった。回復に専念し、寒さに体を慣らしていく。
二十四日目、一行は、一つ目の遺跡で教えてもらった次の遺跡を見つけた。先の遺跡と違い、途中でなくなっているものの、地上部分に高い塔が残っていて、それが森の間からちらちらとのぞいていた。周りの森も、場所的にありふれた、寒帯の植物中心だ。南方の木々はわずかしか見られなかった。
知識としても誰も知らないものもあり、フリューシャが愛用する木々についての本で調べながら、慎重に遺跡に近づいていった。
夕方、遺跡の入り口を見つけた。半分開いたまま固まっている扉があった。森に魔物や夜行性の動物が出始めたため、一行はそのまま遺跡に入ることにした。
次回は5月7日(連休あけのどこか)に投下します