巡礼 7日目~
出発した集落から次のポイントまでは、何もない距離が長く、迷いやすい。少しずつ歩きやすい平地が減り、平らでも土壌が違って砂っぽかったり足を取られるような土だったり、進みにくくなる。次のポイントは、古い遺跡の一部が露出しているだけの場所だ。遺跡の周りだけ、古代の魔法のせいで森ができている。
遺跡の森は、本来はもっと南に生えるような木々を含んだ奇妙な構成をしている。港で売られるような木の実から、リンゴに似た涼しい気候に生えるものまで、様々な気候にあるはずの植物が混ざって生えている。
知識がある者が見れば、久々に新鮮な果物にありつけるなかなかのポイントだ。森の中で育った長耳族の中には、果実や木の実の知識を全く持たないものはほぼいないと言っていい。
「さっきの魔物のこともあるから、このあたりは乗鳥でとばしていこう。歩いてなら抜けるまで四~五日かかるらしいから、目標としては今日はとにかく進んで休もう。天気がひどくならなければ明日中に着けば十分だろうし。」
六人は二列に並んで警戒しながら進んだ。エルージャたちの仲間の他にも、あちらこちらに、古いのから最近のものまで、盛り土が点在していた。元から魔物が多い場所は世界中にあると言われていて、特にあの冒険者の街から入った森と、この北西部には広く分布しているのだ。
「うわっ見てよあれ花が供えてある。かなり新しいよ」
「風で砂が飛んで骨見えてる気持ち悪りぃ」
数時間はどこかしらに盛り土が見えていた。盛り土が見えなくなったところで、大きな岩陰で休憩を取りつつ暑くなる前まで乗鳥を走らせ続けた。午後のお茶の時間くらいにほどよい場所を見つけてテントを張った。魔物よけの火や草は念入りに使用した。
夜、星を見上げて場所を確認し、予定通りの方向へ進んでいることを確認して見張りをつけて眠りについた。何も現れなかった。
八日目。朝方に北方へ向かう行商人を見つけ、いくつか売買した。走り通して目的の遺跡の森へたどり着き、そこでテントを張った。それから昼食である。出発してすぐに作った野ウサギなどの干し肉を分け合い、それから手近な位置の果物をとって食べる。あとは休憩しつつ適度に採集する。一部は切って干す。一日干せば、数日は持たせることができる。
保存食にしようと思うとできれば数日間きっちり干したいのでついついたくさん採っては切り、採っては切り、日の当たる場所に手持ちの道具でうまく干し場を作る。
夕方までずっと採集に明け暮れ、夜は見張りをしつつも、ついついつまみ食い。
何人目かで見張りを交代したフリューシャは、輪切りいくつ分も空いている干し場を見てつい笑ってしまうのだった。
九日目、生えている木で、まともな添え木を作り直し、ファグーシャの足に縛り直した。あとは採集と干すの繰り返しだ。薬草も集めて、必要なものは果物とは別に干し場を作る。
ファグーシャが添え木なしで歩けるようになるまで三日ほど、遺跡の森で過ごす間、脅威となるものはなかった。大型の動物や魔物が出ることもなかったし、雨は弱いものが一時的に降っただけだった。
出発してからも、時折小動物を捕るくらいで何事もなく進んでいった。
十五日目、少し広い遺跡の森があった。中の遺跡の露出部分も多い。遺跡は植物と鉱石の間のような奇妙な素材が多く使われていて、入れる場所があれば、悪天候をやり過ごすにも便利だ。そしてこの遺跡は、巡礼の最初の目的地でもある。
次回は明日投下します。