なぜ気づかなかったんだ 1
二か月も投稿を忘れて申し訳ありませんでした。
五人と一体は少しずつ北西へ向かう。外国人に厳しい謎の国ツァーレンを通らなくてもよい道のなかで二、三の候補を選び、その共通の部分となる町を目指す。
選んだルートは、あちこち国境を通って手続きをしなくていい代わり、何日も森の中の登山道のような舗装のない道を、間違わずに進まなくてはいけない。幸い、道はわかりやすくなっているから、道から外れなければただ遠回りになるだけで済む。
とりあえず抜ければ必ず目的地に着ける。それが選んだ理由の一つだ。必要な装備や地図などは目的の町についてからで揃う。
その手前の、最後の国となる、ルプシア諸王国に入国した一行は、一般公開されている王宮の一つを訪れた。気分転換と、久しくこの手の建物に縁がなかったという理由である。
庭は、広い芝生が解放されて、国民の憩いの場となっている。その真ん中を、自動車や乗鳥車などが通れるような土のむき出しになった道があり、実際に見学用の乗鳥車が通っていく。
道に沿うように芝生を歩きながら、たまに通る車を見ていると、犬や猫を連れて乗っている人を見かける。車に乗せるとき用のかごに載せていたり、抱いていたり、車内に放したり。
「金持ちめ……」
ダージュとタリファが車の後ろを睨みつけながら悪態をつく。この星では犬や猫はまず飼うための資格を取るための費用が必要だ。さらに資格を取ろうとする時点である程度飼うために必要な品物をそろえていなければいけないのだ。
それだけで地球上の何倍も費用がかさむうえ、無事資格を取っても、犬猫自体がそれこそ物価などをそろえた場合でも一〇倍近くのお値段がつけられている。
なので、犬猫を連れている=金持ちで家が広い、である。
自分たちも、ケチらずにせめて乗り合いの車に乗ればよかったかなあ、と足をほぐしながら夏樹が言った。
半時ほどは歩いて、やっと建物の入口のそばにある洒落た門の前に着く。駐車場へ向かい道を曲がっていく車に気を付けながら、受付の兵士から建物内への入場券を購入する。
券をそれぞれ手にして列に並び、入口の扉の脇に立つ兵士にスタンプを押してもらっていると、順番を抜かすように通り抜ける集団があった。兵士が呼び止める様子もない。
「ちょっと何だよてめえ」
五人より前に並んでいるヨレ気味の普段着の男が怒鳴ったので、気づいていなかったか、気にしていなかった五人はつられて、通り抜けた人々を見た。そして、先頭の金髪が振り向いて、怒鳴った男の前に歩み寄って、皮肉を浴びせた。
「ああ!あいつじゃん!!」
ダージュと夏樹が叫び、フリューシャがわぁ久しぶりと口にしたところで、金髪の背後にずらっと並んだ護衛の半分と、内部にいた警備の人が合わせて二〇名ほど駆け寄ってきて、五人と怒鳴った男の後ろ手を組んで手錠をかけた。
「久しぶりだね、えっと、クリスさんだっけ」
叫び暴れる男や、独り言なのか話しかけてるのか分かりづらい雰囲気で文句を言い続けるダージュと対照的に、フリューシャはのんびりと言い直した。金髪の男はふっと短く息を吐いた。
「フゥハッハハハハ!!このぼくの居城の一つへようこそ!この華麗なる凱旋の供に、お前たちを加えてやってもよいぞ!もちろんそこの無礼な男どもはこの宮殿を荒らした者としてこのまま地下の牢へ連行するのだが、せっかくだから、連行する前に、反省の機会を与えよう。この寛大なるクリスティン・ノヴァレグ・リュフォン・ブディア・スティアーナの慈悲の心と人徳と人望に感謝するがよい!!」
うるせーよ、と男とダージュがハモり、拘束している警備の者がほぼ同時に肘鉄を食らわせた。フハハハ、とクリスティンの笑い声が室内に響きわたり、見学者の一部がざわざわと彼の噂を口にした。
次回は今月中にあげます。出来れば今月中にこの話数ぶんはあげます。