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プロローグ

足元に綺麗な紋章が浮かび上がる

小さな円環には幾何学模様が所狭しと描かれており、紋章から放たれた淡い青色の光が体を包む。


美しい……

見る者はその精巧な模様に目を奪われ立ち尽くすだろう。実際に、彼もそうなっている。

元々美術品に興味はないが、営業という職業柄、そういったものには詳しくなった。しかし、このようなものは近世だけでなく、古代の技術まで振り返っても見当がつかない。


そんな光と一緒に何かが纏わりついてくる感覚がする。感動を邪魔された気分になる。

「あぁー、気持ち悪いな!」と少しイラついた声を漏らしながらすべて払い落とした。

どうして分かるのかと言われれば感覚である。デフォルトでついてきたものだ。


「ちょっと演出にしてもやりすぎじゃないのか?」


最近の店内は内装に力を込めているからと言って何でも許されるというわけではない。

せめて客に対する礼儀は弁えなくては、話にならないのだ。

もしドッキリならば、そろそろ店員が笑いながら出てくるはずなんだが…………来ない


一瞬脳裏にフザケタ妄想が浮かぶ ───── あぁ、みんなこうやって異世界にいってたっけ



ウソだろ? オレは本当に異世界に……?

有り得ない、有り得ないけど可能性が拭えない。



「何だよコレ! ドアも開かない! 糞ったれーーー!!」





「お~い、瑛太? どうした? 何かあったのか? すごい叫び声が聞こえたぞ」


一人の男がドアをノックして、後輩の様子を尋ねる。

しかし、ドアの奥に答える者はもういない───

服はもちろん、髪の毛の一本さえその場所には残っていなかった。

もう、彼はこの世界にはいないのだ、と言わんばかりに




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




時は少し遡り、21時。


「今日ははやく終われた~」


溜まっていた案件を処理し終え、首と肩をボキボキと音を鳴らし回しながら八代やしろ英太えいたは深いため息をつく。

幸いにも、明日は一応・・、暦上では休みになっている。

社畜? 生きるためだ、仕方ないと自分に言い聞かせ早一年。時が経つのは早いものだと感慨深く天井を見上げた。


「エイタ、終わったのか? なら久々に飲みに行こう!」


声を掛けてくれたのは先輩の佐藤だ。入社3年ながら営業成績は常にトップ。瑛太はこの男に営業を教わった。そんな先輩の誘いを無碍にするわけにはいかないので、家にいる家族に連絡を入れ、荷物を片付け、彼の後を追う。




「これは……洒落た店ですね」

「ん? こんな店を知っておくことも話のタネになる。”日々精進”だぞ?」

「えぇ……そうですね」


瑛太は佐藤のストイックさに若干引きながらも相槌を打つ。

そんな瑛太に構うことなく、佐藤は入店と注文を流れるようにやってみせた。


(本当にこの人からは学ぶところが多いな)


瑛太は佐藤の知識を次々と吸収していく。彼は秀才タイプの人間なのだ。それゆえ面白がった佐藤が更にエイタを可愛がり、エイタが一段と佐藤を慕うという稀にみる理想的な関係を気づいていた。


「最近、妹さんの様子はどうだ?」

「思春期だからですかね? 日に日に当りがきつくなっているような」


佐藤が料理を口に運びながら尋ねる。見方によっては失礼な質問ではあるが、瑛太は気にする素振りも見せない。このあたりが二人の関係の深さを物語っているといえよう。


「まぁ、お前たちもいろいろあったしな。食事の席で言うのもなんだが、あの男、異例の速さで死刑になったんだろう? ニュースでも取り上げられていたしな」

「……そうですね。それで恨みが無くなった訳ではありませんけど、少し心が軽くなったのも事実です」

「……そうか。悪いな、気分を下げさせるようなことを聞いて」

「はい、大丈夫です。だけど、少しお手洗いの方に……」


トイレへと向かう途中、瑛太は軽くため息をついた。今のことも”話題集め”の一環なのだろうが、エイタは少し事件のことを思い出して気分が悪くなる。佐藤がもう少し遠慮してくれないものかと思うが、多分無駄なのだろう。


(強引さも必要ってわけか)


瑛太は大人しい人柄ではあるが、陰気さは感じられない。話しかけられれば相手を気遣った返事をするし、自ら話しかけることもたまにある。ただし佐藤のように踏み込んだところまで、というわけではない。佐藤も有益なことしか聞いてこないのだが、今回は少し配慮が足りなかったと感じた。

こういう時は一人になることで気分を落ち着かせている。今回は店内なのでトイレというわけだ。

かくして物語は冒頭へと戻る。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



八代 瑛太は朧げな意識の中で、自身の職である”営業”について考える。


方々を駆けずり回り

相手方に取り入るために笑顔を作り

口から都合のいい甘言を吐き、頭を一心不乱に下げながら契約に漕ぎつけ

そのために広く深い知識と物を見極める目が要される。

少し歳の離れた先輩と酒を飲みながら、昇格について語り、決して折れない心を持つ。


「まぁ、少なくともヒーローではないな」


軽い自傷を交えながら、徐々に小さくなる光のままに瑛太は意識を手放した。

小説名を『藻にすむ虫のワレカラ』から『ニュートラル』に変更しました。

もし気に入っていただけましたら筆者としては嬉しい限りです。

後書きを少し書かせていただこうかと思うのですが、筆者を「硬い文章を書く人」というイメージを持って下さり、それを崩したくないならば、そのままページを遷移いただくことをお勧めいたします。





さて、名前の件でございますが、作者には”ネーミングセンス”というものが著しく欠如していると思われます。

話題に上がりました小説名や人物名、サブタイトルなど”ネーミングセンス”は至る所で必要とされます。

人物像の表現や服装、雰囲気の書き方は所詮は素人と割り切れるのですが、こと”ネーミングセンス”に関しましては日常生活にも不安が残ります。

例えば、主人公の「ヤシロ エイタ」ですが、彼の名字は会社の”社” 名前は営業太郎より”えいた”を変換したものです。

もうお分かりいただけたでしょうか? 


もう一つ例をお上げします。

小説名は読者の皆様にご一読いただくうえで、作品の第一印象を決定づけるものです。

ゆえに一目見て内容を把握する”分かりやすさ”が必要ではないかと作者は考えます。


引き合いに出すことも憚られますがご了承ください。(著作権などが絡むようでしたらすぐに削除いたします)


『無職転生 ─異世界行ったら本気だす─』 作者:理不尽な孫の手 様

なろう様発の言わずと知れた人気作


『無職転生』 ふむ、無職の人間が転生するのでしょう

『異世界行ったら本気だす』 主人公の人物像が端的に伝わってきます


非常に分かりやすい題名で、ついつい手を伸ばして読みふけってしまいます


『ありふれた職業で世界最強』 作者:厨二好き/白米良 様


『ありふれた職業』 明記しないことですごく興味が湧いてきます

『世界最強』 作者の厨二魂がガリガリと削られていきます


魂を共有している方ならば読まずにはいられませんよね


では



『藻にすむ虫のワレカラ』 作者:一握



……………………は?


何を言っているんだ、この作者は……? 

そう思われた方はごく普通の感性を持っていらっしゃいます。

逆に、この題名で手に取っていただいた方には感謝してもしきれません。


もしも気になって古語辞典で『ワレカラ』を調べてみたとしましょう


※ワレカラ:海藻に付着する小さな節足動物の名 


───ほう。虫か……


調べていただいた時の感想が目に浮かぶようです。

もちろん主人公は節足動物ではありませんし、節足動物になる気もございません。

期待なされた方は申し訳ありません。


長々と綴りましたが、結局のところ要旨は”ネーミングセンスの欠落”

どうかコツを……文章を書く際のコツを……


ちなみにニュートラルは「どちらにも与さない」という意味なので、一応小説の趣旨は捉えていると思います。

先にも申した通り、この小説を皆様が気に入っていただければ幸いです。


この長い後書きを最後までお読みいただきありがとうございました。

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