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9.スマホ

 残るサマヨちゃんの骨を野良犬獣の住居で回収した。

 そして、そこには他の人間の骨。そしてスマホがあった。


 スマホがある。

 ということは、この骨は俺と同じプレイヤーのものだろう。


 お知らせによれば、初日だけで20人のプレイヤーが死んだという。

 当然、死体と出くわすこともある。


 もっとも死ぬといっても、元の地球に戻るだけ。

 なら死をいたむ必要はない。

 むしろ死んだことを祝福すべきだ。

 初日に死ぬような雑魚であれば、とっとと地球に戻る方が本人のためにも良い。


 全ての骨を回収、ようやく一本足から人型スケルトンに戻るサマヨちゃん。

 その隣で俺はスマホを拾うと洞窟を後にする。



 他プレイヤーのスマホを拾ったは良いが、操作できるのだろうか。


 画面をタッチしてスライドさせる。普通にメニュー画面が表示された。



 100/7/2(土)16:10

 【所持金】 0ゴールド


 【お知らせ】NEW!

 【ステータス】

 【アイテム】

 【マップ】

 【ショップ】



 【お知らせ】NEWは俺が今朝見た内容と同じ。

 持ち主は今朝のお知らせを見る前に死んだということだ。


 【ステータス】をタッチする。




 名前:ダモン・キリコ

 種族:人間

 称号:プレイヤー

 職業:木こり

 レベル:1

 HP:0

 MP:0

 攻撃:15

 防御:16

 敏捷:10

 魔法攻撃:0

 魔法防御:0


 ポイント:0

 スキル:【両手斧術1】【体力強化1】【木こり2】

【木工2】【植物知識1】【植物強化1】




 職業は木こり。

 周囲が森なのを見て木こりで生計を立てようと考えたのだろう。


 プレイヤーはプレイヤーでも生産プレイヤー。

 当然、戦闘プレイヤーに比べて戦闘力は低い。

 モンスターに遅れをとるのも無理はない。


 そういえば死んだプレイヤーが習得したスキルはどうなるのだろう?

 習得者が居なくなったことで、他のプレイヤーでも習得できるようになるのだろうか。


 自分のスマホを取り出して確認する。が、駄目。

 【両手斧術1】はグレーアウトしたまま習得することができない。


 となると死んだプレイヤー、ダモンのスキルは勿体ない。

 特に【木工2】。

 名前から予想すれば木製の武器や道具を作れるスキルだよな。


 説明を見ようとダモンのスマホから【木工2】にタッチする。


<<ポイント2を消費して【木工2】を譲り受けますか?>>


 お! 他プレイヤーのスマホからスキルを貰えるのか?

 しかも、本来なら【木工2】の習得には4ポイント必要なのが、半分の2ポイントで貰えるようだ。


 なら1ポイントで習得できるスキルはどうなる?


 【両手斧術1】をタッチする。


<<ポイント0を消費して【両手斧術1】を譲り受けますか?>>


 来たな。俺の時代が。


 小数点以下は切り捨て。

 それなら0ポイントを消費して【両手斧術1】【体力強化1】【植物知識1】【植物強化1】を譲り受ける。


 【木工2】は良いスキルだが今は【魔王】に備えて貯蓄する。

 【木こり2】は勇者のスキルではないので無視。


 ダモンさん。ただの雑魚だと思っていたが良い人じゃないか。

 俺のためにスキルを習得、残してくれたようなものだ。

 貴方のスキルは俺が引き継ぐ。安心して地球で暮らしてくれ。


 しかし、他プレイヤーのスマホからスキルを譲り受けることができる。

 もしも10ポイントスキル【強奪】を所持していた場合どうなる?

 譲ってもらうまでもなく、0ポイントで全て強奪できるのか?


 ……やはり危険なスキルだ。

 【強奪】プレイヤーだけは何としてでも処分する。

 でなければ、俺の【勇者】スキルが危険だ。


 ともかく、これで俺のステータスはどうなっただろう?




 【ステータス】LVUP!


 名前:ゲイム・オタク

 種族:人間

 称号:勇者

 職業:勇者

 レベル:5 (1UP)

 HP:110/160(27UP)

 MP:3/4(1UP)

 攻撃:14 (1UP)

 防御:15 (2UP)

 敏捷:14 (1UP)

 魔攻:4  (1UP)

 魔防:9  (1UP)


 ポイント:4(1UP)

 スキル:【勇者】【盾術1】【骨術1】NEW

【両手斧術1】【体力強化1】【植物知識1】

【植物強化1】



 ほうほう。体力と防御が特に伸びている。

 【体力強化1】の恩恵だろうな。


 そして、いつの間にか【骨術1】なんてものを習得している。

 これは、やはりサマヨちゃんの骨で敵を殴っていたのが原因だろう。


 しかし勇者が骨を振り回して戦うとか、あってはならない絵姿だ。

 子供の夢を壊してはならない。なるべく人前では控えるようにしよう。




 レアリティ:レア

 名前:サマヨちゃん

 種族:暗黒アンデッドスケルトン(クオーター)

 称号:暗黒聖女

 職業:暗黒バレエダンサー


 レベル:8 (2UP)

 HP:160 (30UP)

 MP:3/6 (2UP)

 攻撃:20 (4UP)

 防御:17 (4UP)

 敏捷:31 (8UP)

 魔攻:6  (2UP)

 魔防:19 (4UP)


 種族スキル:【不死】【自動再生1】【痛覚無効】

【空腹無効】【状態異常無効】【不眠不休】【暗黒1】

【献身】NEW


 やはりサマヨちゃんのMPが減っている。

 野良犬獣に吐きかけた黒い煙が【暗黒1】のようだ。


 【暗黒1】暗黒の煙を放出する。


 俺は煙たい程度だったが、野良犬獣は涙に涎に糞尿とあらゆる液体を撒き散らすヒドイ事になっていた。


 首吊り死体などは筋肉の弛緩により糞尿が垂れ流しになると聞いた記憶がある。

 【暗黒1】の黒い煙には、相手の筋肉を弛緩させる効果があると予想する。


 俺に効果がなかったのは、やはり俺が勇者だからだろう。

 光の使徒である勇者に暗黒が効かないのは当然といえば当然だ。

 そもそも勇者が糞尿を撒き散らすなど……勇者はウンコをしない。人前では。


 そしてサマヨちゃんがまた新しいスキルを習得していた。


 【献身】自身を犠牲にして他人に尽くした証。


 確かに今回の戦いでは、いや、今回の戦いでもサマヨちゃんには助けられた。


 囮として大勢の野良犬獣を引き連れる。

 ……不死身だからといって少々無理をさせすぎたかもしれない。

 普通のモンスターなら死んでいる。


 ということは、【献身】の習得条件は命を犠牲にして他人に尽くすことか?


 これは通常の人間やモンスターには習得できない、レアな称号だ。

 何せ習得する時には死んでいる。

 どういった効果があるかは不明だが、間違いなく強力なスキルだろう。


 その【献身】の影響だろうけど、称号が暗黒聖女って……暗黒なのか神聖なのかはっきりして欲しいものだ。



 それにしても、サマヨちゃん強くなったなあ。

 俺とはさらにLV差が開いている。


 大量に退治した野良犬獣のラストアタックボーナス、大半はサマヨちゃんだ。

 サマヨちゃんの左手を武器に殴り倒していったから無理もない。


 まあサマヨちゃんは俺の召喚モンスターだから、俺の一部みたいなもの。

 つまり俺とサマヨちゃんは一心同体。

 サマヨちゃんが強いとうことは、俺が強いというのと同義。


 結論からいくと、やはり勇者は最強だった。



 それじゃステータス確認も終えたし、引き続きダモンさんのスマホを調べるか。


 【アイテム】薬草、薬草、薬草


 ナイスだダモンさん。【植物知識1】で薬草を見つけている。

 俺がタッチすれば普通に取り出せるし、野良犬獣に噛まれた怪我を治療するのに活用させてもらおう。


 でも、同じ薬草なのに、薬草×4個とか、重ねて表示できないものか。

 アイテムを大量にスマホに収納した場合、目当てのアイテムを探すのが面倒になる。インターフェイス最悪だな。


 それ以上に気になるのが、スマホにアイテムを何個収納できるのかだ。


 元々俺が所持しているアイテムは、イノシシ獣の肉、オオカミ獣の死体、タオル、毒リンゴの5個。


 付近から石ころを拾って、自分のスマホに収納していく。


 石ころ、石ころ、石ころ。


 石ころを3個、アイテムの合計が8個になったところで、それ以上は石ころが入らなくなった。


 つまり、スマホに収納できるアイテムは合計8個。


 非常に少ないと言わざるをえない。


 ゲーム感覚で各種操作を行うスマホ。

 無料ゲームの場合、課金することでアイテム所持枠を増やせるものが多い。


 このスマホの場合も、ゴールドで機能を拡張できないだろうか?


 通常、そういった課金要素は【ショップ】に集約されるが、これまで確認したところスマホの機能拡張に関する商品は存在しなかった。


 やっぱり無理か……いや、待てよ。


 1台のスマホに収納できるアイテムは8個まで。

 ダモンさんのスマホにアイテムを8個収納した状態で、俺のスマホにダモンさんのスマホを収納する。

 これで持ち運べるアイテム数は8個+7個で合計15個になる。


 やはり勇者は天才だった。


 さっそく試してみるか。

 ダモンさんのスマホを俺のスマホへと近づける。


<<所有者の居なくなったスマホを統合、機能を拡張しますか?>>


 また来てしまった。勇者のターン。

 もちろんYESだ。


 ダモンさんのスマホが俺のスマホに吸収される。

 結果、俺のスマホのアイテム収納数は、倍の16個まで拡張されていた。


 さらに、ダモンさんが習得していたスキルのうち、俺が譲り受けていないスキル【木こり2】【木工2】をいつでも消費ポイント半分で習得できるようになっていた。


 喜ぶべきことではある。

 だが、今さらではあるがますますプレイヤー間の争いが激しくなるな。


 勇者は争いを好まない。


 可能なら平穏無事に過ごしたいところだが、俺が勇者である限り世間が放っておかないだろう。勇者とは罪な存在だ。



 【マップ】には俺が踏破していない場所まで、おそらくダモンさんが記録した場所までもが表示されていた。


 それによれば、ダモンさんの小屋はここから南の方角にある。

 俺の小屋周辺の探索をある程度終えたなら、ダモンさんの小屋まで行ってみるとしよう。

 何かアイテムがあるかもしれない。


 一通りスマホを調べ終えた俺は、野良犬獣の処理に取り掛かる。


 スマホに入るだけ野良犬獣の死体を収納する。

 収納できない死体はこの場で解体、魔石だけをゴールドに変換する。


 全ての処理を終えた俺は自分の小屋へと帰宅した。


【所持金】2000 → 2万5千ゴールド


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