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88.タローシュハーレム


 100/11/9(水)15:00 ニーアの街 冒険者ギルド


 ニーアの街でエルフ狩猟作戦を実行するハレム。

 タローシュハーレムの一員にして、スマホを持つ神の御使い。


 見た目可憐な少女であるが、何の葛藤もなくエルフを刈る非道な者。

 であれば、最強勇者は、相手が少女であっても容赦はしない。


 確かにハレムの見た目だけは、殺すに惜しい可憐さ。

 可能であれば、タローシュから寝取りたい欲望はある。


 だが、俺はそんな葛藤を排除する。

 正義を成すには私情を排除しなければならないもの。


「神速・勇者アタック!」


 スパーン!


 俺の迷いのない剣撃が、ハレムの胴を切り裂いていた。

 致命傷である。


「わたし……負け……?」


 そんな事は言われるまでもなく分かっている。

 俺は血を吐き倒れるハレムの懐からスマホを取り上げた。


「死ぬお前が持っていても仕方あるまい。権利を寄こせ」


「……駄目よ……これはタローシュ様から貰ったもの……絶対に渡さ……ない」


 死の間際であっても主への忠誠を守るとは、なかなか見上げた根性である。


 だが、それはまったくの無駄に終わる。

 時間の経過とともに、ハレムの出血は量を増していた。


 現所有者の許可。

 もしくは現所有者の死亡をもって、スマホの所有権を変更できる。


 俺はただハレムが息絶えるのを待って、スマホの所有権を奪えば良い。


「……わ、わたさない……タローシュ様の……わたしを救ってくれた方……」


 それでも、死を間際にして最後まで抗おうとするハレム。

 スマホを取り返そうと、力の入らない身体で俺に掴みかかっていた。


 憎むべき敵ではあるが、その忠誠心。

 その根性には見習うべきものがある。


 勇者は敵であっても、優れた者には敬意をもって相対する。

 ハレムが最後まで、死のその時まで俺に抗おうというのなら。


「なるほど。まだ勝負はついていない。そういう訳だな?」


 腹部を大きく負傷したハレム。

 正義のためとはいえ、そのような少女を相手に勝負を続行するのは勇者とて気が引ける。

 しかし、相手が望むのであれば──死を覚悟してでも、勝負の続行を望むのであれば──


 その心意気に応えてみせるのが勇者。


「なら、いくぞ! 勇者パワー全開!」


 相手はすでに武器すら持たない身。

 であれば、俺も自身の肉体一つで勝負を続行する。


 モミモミ


「!?……な、や、やめてよ……」


 ハレムの得意とするカウンター攻撃。

 先ほどは相手の反応を上回る神速でもって勝負を決めた。


 だが、他にも対策はある。

 密着状態からの寝技勝負。

 接触状態からの這いずるような攻撃であれば、避けることもできまい。


「あっああっ……さ、さわらないで。だっ駄目ぇ……」


 今さら言うまでもないが、勇者パワーは仲間の、対象の能力を強化する。

 俺程の使い手であれば、敵であっても相手の感覚だけを強化することが可能。


 ハレムの触覚だけを、快感神経だけを100倍に強化した今。

 俺の触手攻撃に耐えきることは不可能だ。


 そして、快楽に相手の防御が緩んだ今。

 俺は全精力を込めた突きを放つ。


 ズン


「いっいや。ああっ……わ、わたしはタローシュ様の……ひいいっ」


 ズンズン


 確かに俺の突きは、ハレムを捉えている。


「だめえっ……せ、せめて外に」


 それでも、ハレムの持つカウンター。

 優位に試合を進めるボクサーが、カウンターの一発でノックアウトされるなど、逆転力に長けたスキル。油断するわけにはいかない。


 であれば、俺は最後のカウンター対策を繰り出す。


 カウンターといえど連続した攻撃。

 放水などの連続的な攻撃、全てを弾き返すことはできない。

 なら──俺の全精力を体内へと放出する。


 ドビッュシャアア


「ひぎいいいい……タ、タローシュ様……ごめんなさい……」


 カンカンカーン

 カウンター攻撃破れたり。

 止めの放水攻撃がハレムの奥底を捉えると同時、勝負の終わりを告げるゴングが打ち鳴らされた。


「やっぱり人間ね」

「ひどい」

「最低だ」

「死ねよ」


 俺の行動を遠巻きに見守るエルフ女が、冒険者たちが口にする。


 いったい何がひどいのか?


 これだから表層しか見る事の出来ない愚民どもは困る。

 まさか俺が、勇者が欲望のままに、力を失った少女を狼藉したとでも思っているのか?


 だとしたら、それは考え違いも甚だしい。

 これはただの放水攻撃ではない。

 彼女を、ハレムをタローシュハーレムという呪縛から解き放つ聖なる一撃。


「ハレム。貴様はもうタローシュの特別でも何でもない。ただのビッチだ」


 ハーレムを望むような独占欲の強い男が、処女厨のタローシュが、今のハレムを見てどう思うだろう?


「そのような身体でタローシュハーレムに加わるなど……タローシュに対して失礼ではないか? まさか他人の子供をタローシュに認知させるのか?」


「うう……ごめんなさい。わたしはタローシュ様のハーレムにふさわしくない」


 タローシュの嗜好を知るハレムが、どう考えるかは明らかである。

 俺に敗北した今。

 タローシュハーレムに自分の居場所がないことは、ハレム自身が一番良く分かっているはず。


「タローシュから貰ったスマホ。貴様のようなビッチが持ってどうする? タローシュを侮辱しているのか? タローシュのことを思うなら権利を手放すんだな」


 タローシュへの忠誠心が高ければ高いほど。

 ハレムは自責に駆られ、タローシュを遠ざける。


「はい……ごめんなさい。タローシュ様からプレゼントを頂く権利なんて……わたしにはない……」


 スマホの権利を放棄したハレム。

 俺のスマホに統合。ポイントでスキルを習得する。


 GET! カウンターLV5


 強敵との戦いを通じて、最強勇者がさらに最強になったわけだ。


 だが、それはあくまで副次効果。

 勇者の狙いは別にある。


「ハレム。高級治療薬だ。これで怪我を治療すると良い」


 スマホから取り出した高級治療薬。

 俺は血を流して死の間際にあったハレムを治療する。


 相手が命より大切にする宝物。

 相手を殺して奪うことは簡単だ。


 だが、勇者は決して命を粗末にしない。

 確かにスマホは優れたアイテムだが、美少女の命には劣るもの。


 美少女は殺さない。宝物は奪う。

 やれやれ。

 両方こなさなければならないってのが、勇者のツライところだ。


「タローシュ様の元にも帰れない……もうどこにもわたしの居場所はない」


 せっかく命が助かったというのに、ハレムは暗い顔で呟くばかり。


 おそらく元々は行き場の無い、未来の無い孤児だったのだろう。

 それを救って力を、スマホを与えたのがタローシュ。

 だから、病的なまでにタローシュの命令を遂行しようとした。

 他者を、罪のないエルフを犠牲にしてまで。


 その心の支えを失ったハレムは、生きる屍。

 放置すれば、自身で命を絶ちかねない惨状。


「わたしはただのビッチ……もう死ぬしかない」


 確かに複数の男性と関係を持ったハレムはビッチである。

 しかし、ビッチ化した女性の全てが、望んでそうなった訳ではない。


 戦乱の続く異世界。暴力が蔓延する異世界。

 無理矢理ビッチ化させられた女性も、たくさん存在するだろう。


 いわば彼女たちは戦乱被害者。

 ハレムもまた、勇者が守るべき存在。


 だから俺は声を高らかに宣言する。


「勇者ハーレムはビッチであっても歓迎する!」


「……えっ!?」


「ハレム。お前は今から勇者ハーレムの一員だ」


 俺の言葉にハレムは暗い目で聞き返す。


「本当……? 本当にわたしが居ても良いの? わたしビッチだよ?」


 タローシュハーレムの一員であるには、潔癖な身体であることが条件なのだろう。

 未だ半信半疑のハレムに、俺はエルフ女。ウッディを指し示す。


「このエルフ女を見ろ」


「はへ?」


 異世界の常識によれば、一般的に長命のエルフ。


 見た目まだ20代に見えるウッディだが、英雄となるまで力をつけるには、長年の修練が必要である。

 実際の年齢は、はるかに上だろう。

 そして、これほどの美人だ。

 これまでの年月で、いったい何人の男を食ってきたか分かったものではない。


「お前など比較にならないスーパービッチ。それでも勇者ハーレムの一員なのだ」


「な、な、なに言ってんのよ! ていうか、勝手にハーレムに加えないでよ」


「そうなの? そんなスーパービッチでもいいの?」


「問題ない。むしろお前はビッチとしても半人前。今後は俺が相手になる。勇者ハーレムでもっと修行を積むべきだ」


「はい……ありがとうございます。こんなわたしを拾ってくれるなんて……誠心誠意お仕えします」


 自身の居場所を見つけた今。ハレムの目には光が満ちていた。


 世の中。綺麗ごとだけでは生きてはいけない。

 蛇の道は蛇。

 悪を倒すには、悪の手段が必要となる場合もあるだろう。


 それでも勇者だけは正義のまま。

 民の希望として、どこまでも綺麗でなければならないのが勇者。


 そんな時。

 勇者に代わって悪事をなすものが必要。

 まさかカモナーにやらせるわけにもいかない。


 その点。この女。ハレムは違う。


 主のためであれば、罪なき者をもためらいなく狩る決意。

 自身の命に代えても主を守ろうとする忠誠心。


 今後。俺の手を汚す事無く、悪事にも手を染められるというわけだ。

 仮にハレムが捕まっても、俺とは無関係。

 なかなか貴重な人材が手に入ったといえよう。


 しかし、クソザコの強奪野郎め。

 タローシュハーレムだと?


 弱者を救済するのは賞賛される行為だが、それを盾に少女を意のままに操るなど、悪魔の所業。

 相手の心や行動まで束縛したのでは、ただの奴隷契約でしかない。


 勇者は相手の自由を尊重する。

 勇者がハーレムに求めるのは肉体のみ。

 肉体の具合さえ良ければ、それで良い。


 そして、日本人であることを忘れて勝手三昧する貴様の悪行。

 例え世間が見逃しても、最強勇者は見逃さない。

 タローシュハーレム。貴様が操る奴隷の全てを俺が解放する。


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