61.スマホと鑑定
100/7/27(水)11:00 ファーの街 冒険者ギルド
ギルドで暴れる悪役プレイヤーの捕縛に成功した。
6人のうち2人はすでに帰らぬ人となったが、手加減できる状況になかったのでは仕方がない。
気絶した4人を縛り上げた俺は、6台のスマホを回収。
自身のスマホに統合する。
災い転じて福となす。
悲しい事件ではあったが、結果として、最強勇者がさらに最強となったのだ。
長い目でみれば、これで良かったのだろう。
さて、お姉さんは大丈夫だろうか?
「ユウシャさん。ありがとうございます」
上衣を羽織るお姉さんは俺に礼を述べると、いまだ困惑を続ける職員に指示を出していた。
大丈夫かどうかは分からないが、身体を動かしていた方が気が紛れるのだろう。
そもそも連中から暴行を受けたといっても、入れられたわけではない。
殴られたり、蹴られたり、揉まれた程度だ。
冒険者として女性が働くなら、その程度は日常茶飯事。
俺にとっては一大事でも、異世界の人にとっては、誰も気にすることじゃないのだろう。
それなら俺も変に気を使わない方が良い。
お姉さんのもとを離れ、バラバラになったサマヨちゃんの頭蓋骨を拾い集める。
そんな俺に声を掛ける女性がいた。
「お手柄ですわね。ゲイムさん」
誰だよ。お前……と思えば、鑑定のお姉さん。
リオンさんじゃないか。
そういえば、ギルド職員になっていたんだった。
今までどこに居たんだ?
「鑑定スキルを貴方に盗られたとはいえ、わたしともなれば、あの6人。見ただけで怪しいと分かりましたもの。見つからないよう、奥に隠れていたのですわ」
いや。怪しいならギルドマスターに警告してやれば良いのに。
しかも、俺にスキルを盗られたとか、ひどい言い掛かりである。
「いきなり襲ってくるなど、世の中、悪いプレイヤーもいたものだ。俺のように清く正しい心を持って、誠実に暮らせば良いものを」
俺はあくまで専守防衛を行ったまで。
リオンさんといい連中といい、血の気が多いのは困ったものだ。
「……まあ、ゲイムさんの醜い心はともかく、回収したのでしょう? スマホ。1台くらいは私に融通しても、よろしくてよ?」
なるほど。それが目的か。
言われてみれば、6台もあったのだ。
1台くらいは他人にまわしても良かったかもしれない。
「すまないが、すでに6台とも俺のスマホに統合済みだ。もう少し早く言ってくれれば良かったのだがな。惜しいことをした」
「はあ。まったく使えないですわねえ。次は1台、残しておきなさいよ」
その場合、譲る相手はカモナーになるだけだがな。
敵に塩を送る馬鹿はいない。
「考えておこう。それより、あまり俺に近寄らない方が良いぞ? 連中がスマホを使うのを大勢の人に見られている。捕まえた4人への尋問もある。俺たちプレイヤーの存在が明るみになるのは、時間の問題だ」
「そうですわね。遅かれ早かれ、こうなるのは時間の問題でしたわ。チート能力を持つ者が66人もいたのでは、お調子者が1人いるだけでアウトですもの。いつまでも隠し通せるものではありませんわ」
誰もが俺のように穏やかに生きれば良いのだが、調子に乗って力を誇示する者がいる。
今回、ギルドで暴れた連中がそうだ。
「貴方も勇者アタックとかいって、調子に乗って意味の分からないスキルを見せびらかすのは、考えものですわよ?」
あれは止むを得ない処置だったのだ。
悪党を目の前にして、勇者が見過ごすわけにもいかない。
そもそも勇者の俺は力を隠す必要など、どこにもない。
それどころか、他者が見ている前でこそ力を見せねばならない。
他者からの称賛を得て、他者が認めて、勇者はパワーアップするのだから。
「認めるも何も、貴方、スマホから勇者スキルを習得して、自分で名乗っているだけじゃないですの」
うるさい。
それはあくまで一般論であって、最強勇者の俺には当てはまらない。
俺が勇者なのは誰の目にも確定的に明らかで、何の問題もない。
「ユウシャさーん。って、ああぁ?! ま、また鑑定女がユウシャさんにちょっかいをぉ! この、帰れぇ!」
見ろ。
カモナーも、そしてクランハウスの誰もが俺を勇者と呼ぶ。
やはり、俺は自称勇者ではなく、誰もが認める勇者なのだ。
「それは勇者じゃなくて、ユウシャじゃない。貴方のギルドカード。名前がユウシャだもの。当然ですわ」
そういえば、リオンさんは頑なに俺を勇者とは呼ばない。
無様に負けたというのに、いまだ俺を勇者と認めていないようだ。
「無様は余計ですわよ。それに私が負けたのはサマヨちゃんですもの」
まったく嘆かわしい……
自身の敗北を認める素直さも必要だというのに。
「消えろぉ。消えろぉ!」
「はいはい。もう行きますわよ」
カモナーは、リオンさんを追い払おうと必死で背中を押していた。
「そういえば、もう【鑑定】を習得したかしら? 習得したのなら、スマホを確認してご覧なさい。【鑑定】持ちだけが見れる情報にアクセスできるはずですわよ」
最後に振り返ったリオンさん。
そんな情報があるのか。
なんだかんだ言いながらも情報を提供してくれるとは、俺に気があるのだろう。
今度、機会があればお礼をするとしよう。
「はぁはぁ。やっと行ったよぉ」
「カモナー。スマホを開いてみてくれ」
「ん? スマホ? あーい」
【鑑定】持ちだけが見れる情報。
カモナーのスマホに変化があるということだが……
100/7/20(水)11:00
【所持金】 100万ゴールド
【お知らせ】
【ステータス】
【アイテム】
【マップ】
【ショップ】
TOP画面に変わりはない。
カモナーに【お知らせ】をタッチさせる。
【新しいお知らせ】鑑定スキル習得者へ
【最近の出来事】地球でパチモン5がブーム
【ランキング】毎日24時更新
お! 【鑑定】スキル習得者へのお知らせが書かれている。
【新しいお知らせ】
スマホには、情報制限が掛かっています。
情報閲覧LVを上げることで、閲覧できる情報が増えてまいります。
情報閲覧LV1:初期状態
情報閲覧LV2:初めてスマホを統合
情報閲覧LV3:スマホを5台、統合
情報閲覧LV4:スマホを20台、統合
情報閲覧LV5:スマホを50台、統合
なお、スキル【鑑定】を習得した者は、自動的に情報閲覧LV5となります。
マジかよ。
そういえば初めて他人のスマホを統合した時、情報閲覧LVの上昇と同時に、スマホから見れる情報が増えていた。
今回、連中のスマホ6台を統合した俺は、情報閲覧LV3になっているわけだ。
そして、情報閲覧LV5になるには、50台のスマホを統合する必要があるという。
プレイヤーの総数は66名。
そのうちの50台を集めるなど、到底、現実的ではない。
それが、【鑑定】スキルを習得するだけで可能になるとは。
なるほど。
【鑑定】は、対象の情報を引き出すスキル。
それは人物やアイテムだけではない。
スマホの情報も引き出せるというわけか。
なら、いろいろ調べてみるとしよう。




