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6.アイテム


 襲いかかるオオカミ獣の撃退に成功した。


 とはいえ、時間をかけすぎた。

 すでに日は落ち森は夕闇に染まりつつある。


 こういったゲームでは、夜になれば手ごわいモンスターが徘徊するもの。

 いくら勇者といえど夜の森を踏破するのは難しいといわざるをえない。

 一刻も早くセーフゾーンである小屋まで戻りたい。


 そのためにも、まずはサマヨちゃんを回収する。


 倒れたままピクリともしないオオカミ獣。

 そのお腹にめり込むようにサマヨちゃんの頭蓋骨があった。


 勇者シュート……思ったより威力があるな。


 これを勇者の必殺技にするか。

 ただ、問題はラストアタックボーナスがサマヨちゃんに行くことだ。

 ということは、サマヨちゃんの必殺技じゃないか。

 まあ、傍から見れば俺の技に見えるだろうし問題ないか。


「サマヨちゃん。大丈夫か?」


 オオカミ獣に埋まったサマヨちゃんの頭蓋骨は必死にカタカタ動いているが、残念ながら独力では腹から抜け出せないようだ。


「よし。引っ張りだすぞ」


 頭蓋骨の眼窩に指を引っ掻け一気に引き抜く。


 スポン


 と同時にオオカミ獣の腹から食べられたサマヨちゃんの右腕が出てきた。

 まだ消化されてなかったか。良かった無事で。


「ふう。サマヨちゃんよく頑張ってくれ……」


 あれ? 引き抜いたサマヨちゃんの頭蓋骨。何かおかしいぞ?


「サ、サマヨちゃん? どうしたの? 何か色が黒くなってない?」


 乳白色だったサマヨちゃんが真っ黒に染まってしまっている。


 もしかしてグレた?


 カタカタカタ


 サマヨちゃんが首を振る。その口から黒い石が地面にこぼれ落ちた。


 これは宝石? オオカミ獣の腹から取り出したのか?

 モンスターの体内から獲れる宝石。いうなれば魔石か。


「この魔石をサマヨちゃんが見つけたのか。凄いぞ」


 カタカタ


 色は黒くなったけど今までのサマヨちゃんと変わらない様子だ。


 サマヨちゃんの頭蓋骨を胸に抱えて撫でてみる。

 今までよりツルツルしており、触り心地に磨きがかかっている。

 凄いパワーアップだ。


 そういえば、パワーアップといえばモンスター退治でレベルが上がったんじゃないか?


 【ステータス】LV UP!



 名前:ゲイム・オタク

 種族:人間

 称号:勇者

 職業:勇者

 レベル:4 (2UP)

 HP:80/133(23UP)

 MP:0/3  (2UP)

 攻撃:13 (2UP)

 防御:13 (2UP)

 敏捷:13 (2UP)

 魔攻:3  (2UP)

 魔防:8  (2UP)


 ポイント:3(2UP)

 スキル:【勇者】【盾術1】NEW



 やれやれ。また強くなってしまったか。

 サマヨちゃんも少しは強くなったかな?



 レアリティ:レア

 名前:サマヨちゃん

 種族:暗黒アンデッドスケルトン(クオーター)

 称号:暗黒美少女

 職業:暗黒バレエダンサー


 レベル:6 (4UP)

 HP:130 (60UP)

 MP:4   (4UP)

 攻撃:16 (8UP)

 防御:13 (8UP)

 敏捷:23 (16UP)

 魔攻:4  (4UP)

 魔防:15 (8UP)


 種族スキル:【不死】【自動再生1】【痛覚無効】【空腹無効】

【状態異常無効】【不眠不休】【暗黒1】NEW



 ……はい!?

 暗黒アンデッドスケルトン(クオーター)ってなんだ?

 しかも暗黒美少女ってなんだよ。腹黒になったとかじゃないよな?


 これはあれか。

 真っ黒で怪しいオオカミ獣のお腹に頭がめり込んだからか?

 クオーター(1/4)なのは頭だけ真っ黒になったからか?


 とにかく、行動によってスキルを習得したりクラスが変わることもあるというわけか。

 考えれば当然だな。

 でなければ、スマホのない現地の人たちはスキルを覚えられない。


 ますます【剣術1】や【料理1】を習得したプレイヤーはご愁傷さまだ。

 未知の技術である魔法ならともかく、貴重なポイントを使わずとも、実際に試せば習得できただろうに。


 しかし、サマヨちゃんがえらい強くなってしまったな。


 これはマズイぞ。ご主人様である俺より強いとか。

 ご主人様の威厳がだいなしな上に、グレて反抗期に入ったとしたら、俺の命が危険すぎる。


「サ、サマヨちゃん? サマヨ様? なんだか強くなった? 調子はどうです?」


 カタカタ


 サマヨちゃんは相変わらず無表情でカタカ言うだけだ。

 そうだよな。

 一緒に死線をくぐり抜けた俺とサマヨちゃんの絆が壊れるわけがない。


 何より課金ガチャの召喚モンスターが反抗するなら返金案件だ。

 よし。大丈夫。



 というわけでサマヨちゃんの頭蓋骨は放り捨てておくとして、残ったオオカミ獣の死体をどうするべきか。


 これだけ手ごわいモンスターだ。

 人里で売りさばけばお金になりそうだ。

 人里じゃなくても、お肉に毛皮に爪と、このまま捨てるのは惜しい。


 しかし、今から死体を抱えて移動したのでは、小屋に戻る途中で完全に夜になる。


 どうする? 諦めるか?


 ……いや、待て。スマホだ。


 スマホ画面には、【ステータス】の他に【アイテム】という項目がある。


 【アイテム】なし


 ゲーム的に考えるなら俺の所持品が表示されるはずだ。

 オオカミ獣の死体は俺の所持品じゃないのか?

 どうすれば【アイテム】になる?


 そういえば硬貨をスマホに近づけると、スマホで使えるゴールドに変換された。


 スマホを掲げてオオカミ獣の死体に近づける。

 死体は光に包まれ、その場から消え去っていた。


 【アイテム】オオカミ獣の死体


 キター!

 やはり俺はゲームの天才だった。


 勇者は未知のアイテムであっても使いこなす。


 この魔石もスマホに取り込むとしよう。

 魔石が光に包まれ手元から消える。が、【アイテム】に魔石の表示はない。


 あれ? 俺の魔石どこいった?


 【所持金】10万ゴールド


 おお。魔石は直接所持金に変換されるのか。

 てことは、これで【ショップ】からアイテムを買い放題だ。


 早くもこの異世界の攻略法を発見した。


 とにかくモンスターを退治してレベルアップ。

 ポイントでスキルを習得。魔石を売ってショップで武器防具を購入。

 さらには課金ガチャで最強モンスターを召喚。


 もはや負ける気がしない。


 そのためにも、まずは小屋まで戻らなければ。

 勝利の軌道に乗る。

 その前に夜の森でモンスターに殺されては元も子もない。


 つっ……!


 安心したからか、オオカミ獣に切り裂かれた肩が痛み始める。

 必死で忘れていたが、そういえば俺の肩はどうなっているのだろう。


 自分の肩を見ると、肉が切り裂かれ血にまみれた先に筋肉が見えていた。


 まずいぞ。治療魔法……は無理だな。

 おそらく光魔法というのが治療魔法だろうが、【光魔法1】はすでにグレーアウトしている。


 そして【光魔法2】には8ポイント必要だ。

 【炎魔法3】と同じ8ポイント必要だということは、それだけ光魔法は貴重だということか。


 魔法が駄目ならアイテムを使えば良い。


 【ショップ】から消耗品。傷薬をタッチする。


<<10万ゴールド必要です。購入しますか?>>


 たっけええええ。


 しかし、命には代えられない。購入。


 現れた傷薬は瓶に入っていたので、蓋を開け肩へと振りかける。


 HP:80 → 133

 所持金:10万 → 0ゴールド


 おう。あれだけ酷かった肩の怪我がもう治った。

 高いだけのことはある。

 というか、この効果でこの値段なら格安だ。


 治療魔法も同じような効果だとするなら、必要ポイントが多いのにも納得する。

 【魔王】を狙う予定だったが【光魔法】も良いな。

 ま、それはポイントが溜まってから考えよう。


 これでHPは満タン。体調も万全。

 だがMPが減っているのは何故だ?

 1あったMPが0になっているが、俺は魔法など使っていない。


 いや、勇者パワーで一瞬身体が光ったな。


 あれでMPを使ったのか?

 だが、特に身体に変化は感じなかった。

 MP不足で効果を発揮しなかった?


 まあ、勇者パワーについては時間のある時に考察するとしよう。


 それじゃ小屋まで走って戻るとしよう。

 サマヨちゃんはまだバラバラのままだが、問題ない。


 俺は転がるサマヨちゃんの頭蓋骨を拾い上げ、小屋目指して走りだす。


 放っておいても自動再生で本体まで引き寄せられる。

 戻ってこない骨があれば明日探しにくれば良い。


 最悪、本体の頭蓋骨さえ無事なら何とでもなる。


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