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55.戦い終わって休息

 100/7/23(土)12:00 クランハウス


 クランハウスを襲撃するゴブリン軍団との戦い。


「ゴブリンキング。この勇者が討ち取ったりいいい!」


 大将首を挙げる俺の活躍により、勝負は決まる。

 厳密にはウーちゃんの踏みつぶしが止めだが、それは些細な差異にすぎない。


 大事なことは、勇者の活躍によって勝利した。それだけだ。


 ゴブリンキングの死と同時に軍団は崩壊。逃げ惑うゴブリン獣たち。

 勇者は弱者に容赦しない。

 2度と歯向かうことがないよう、徹底的に狩りつくす!


「サマヨちゃん。グリさん。残さずやってくれ」


 だがまあ、それは2人に任せて、俺は倒したゴブリンキングの身体を漁ることにする。


 ゴソゴソ


 ほほう。ゴブリンのくせになかなか良い装備を身に着けている。

 勇者アタックで鎧が粉々になったのは惜しいが、武器は無事だ。


 成金趣味なのか、派手に輝く金色の剣。

 売れば大層なお金になりそうだが、これほど目立つ武器を活用しない手はない。


 勇者には、悪に立ち向かうシンボルとしての役割もある。

 要は目立ってなんぼ。


 そもそも、勇者がいつまでも野盗の剣を使うのもおかしな話。

 今後は、この金色の剣。ゴブキンソードを俺の武器にするとしよう。


 最後にゴブリンキングの魔石を回収する。

 以前はサマヨちゃんに回収してもらっていた魔石だが、あれから散々モンスターを退治したおかげで、俺も魔石の回収に慣れた。


 回収したのは、一際大きく輝く魔石。

 後でギルドに持ち込むか……お姉さんの驚く顔が楽しみだ。


 後は倒したゴブリン獣の魔石も全て回収するべきなのだが……1000を超えるゴブリン獣の死体。


 全部の魔石を回収するのは骨が折れる。

 そもそも、わざわざ勇者のやるべき仕事ではない気がする。

 こういう地味な作業は他の者、そう、生徒たちに任せるのが効率的というものだ。


 そういうことなら──


「ウーちゃん。戻ろう」


 跨るウーちゃんを促し、クランハウスへと戻る。


 クランハウスの前では、イモちゃんが倒したゴブリン獣を食べていた。

 イモちゃんって魔石も一緒に食べるんだよなあ。


 魔石。魔力の塊。

 こんな大量に魔石を食べて、身体に影響はないのだろうか?


 とにかく、魔石を食べられたのではお金にならない。

 イモちゃんが食べつくす前に、魔石を回収したほうがよさそうだ。


「ユウシャさんお帰りぃ!」


 クランハウスに戻った俺を出迎えるのはカモナー。


「おかえりなさい。パパ凄いの。ここから見てた」


 そして、ナノちゃんと生徒たち。


「さすが勇者さまー」「尊敬しまーす」「抱いてもいいのよ?」


 みんな興奮気味に俺の活躍を称えている。

 無理もない。1000を超えるゴブリン獣の撃退に成功したのだ。


 いくら俺が勇者といっても、結果が全て。

 結果を残せない者に、ついていく者はいない。

 つまり、結果を残した今。多少の無理でも聞いてくれる。そういうことだ。


「みんなもお疲れさま。すまないが、しばらく休んだ後で魔石の回収を手伝ってくれないかな?」


「分かったの。でも、やったことないの」


「それは教えるから大丈夫。まずは食事にしよう。朝から戦いづめだったからね」


 食べる肉ならいくらでも転がっている。

 ゴブリン獣。豚肉のような味でなかなかイケルな。


 ゴブリン獣を追撃していたグリさんも戻り、サマヨちゃんを除く全員が集合した。

 森の中へ逃げたゴブリン獣。グリさんではこれ以上の追撃はできない。


「グリさん。お帰り!」


 お疲れのグリさんを癒すよう、お肉を差し出した。


「グアッ」


 ポコポコと俺の頭をくちばしで突っつくグリさん。

 痛い。何か不満があるようだ。

 もしかして、俺がウーちゃんに乗ってゴブリンキングを倒したことか?


 自分の乗り心地を自慢していたグリさん。

 大事な戦いで放置されたことが不満のようだ。


「悪かった、悪かったから……次はグリさんに乗せてもらうから。ね」


 くちばしを捕まえて、その口にお肉を放り込み黙らせる。

 あれだけ戦ってもまだ戦い足りないとか、戦闘狂には困ったものだ。


 食事の後、生徒たちの前でゴブリン獣を解体、魔石を回収してみせる。

 血の溢れるグロイ作業だが、元々が過酷な環境で育った孤児たち。

 血を見る機会も多いのか、しばらく一緒に解体してみせるだけで慣れたようだ。


「ぐちょぐちょー」「おおー大きいの取れたー」「勇者さまーあげるー」


 今や俺が口を挟む必要もない。

 生徒たちの頑張りもあって、日暮れまでに集めた魔石の数は300個。

 死体はまだまだ残っているが、今日はここまで。


 集めた魔石は後日ギルドへ持ち込み換金、全員で分配する予定だ。


 もちろん生徒たちにも公平に分配する。

 生徒たちは、孤児院では院長のピンハネによって正当な報酬を受け取っていなかった。

 お金の価値も分からないだろうし、俺が報酬を横取りしても分からない。


 だが、勇者はそんな卑怯な真似はしない。

 生徒たちの働きに応じた報酬をきちんと支払う。

 それでこそ訓練にも身が入るだろうし、俺への忠誠心もうなぎ登りだろう。

 勇者のためなら死ねる。

 そう思わせるまで絆を深めることが、俺にとって最もメリットになる。


 ただまあ、働きに応じた報酬となると、当然、俺の取り分が一番多くなる。

 なにせ敵の大将首を獲ったわけだし、公平にいくなら仕方がない。

 俺とサマヨちゃんが6で、カモナーとグリさん、アルちゃんウーちゃんで3。

 生徒たち10人で1。そんなところか?


「おつかれさま。それじゃクランハウスへ戻ろう。お風呂が沸いているはずだ」


「やったー」「おふろ、おふろ」「勇者さまも一緒にはいろー」


 すっかりお風呂が気にいったのか、はしゃぐ生徒たち。

 お風呂に誘ってくれるのは嬉しいが、俺はロリコンではない。


 だが、子供と一緒にお風呂に入る。

 一般家庭ではごく普通に見られる家族団らんの光景だ。

 俺が目指すのは、家族のような絆を持った暖かいクラン。

 クラン方針は、まったりいこうというやつだ。

 ということは、一緒に入るのが正しい交流。そういうことか?


「駄目だよぉ。一番風呂は一番頑張ったユウシャさんだよぉ。みんなは後で我慢なんだよぉ」


「はーい」「それじゃカモちゃん後ではいろー」「勇者さんからー」


 ……カモナーには、ありがた迷惑という言葉を贈りたい。


 カポーン


「ふいー。働いた後のお風呂は格別だなあ」


 1日の終わりは、やっぱりお風呂に限る。

 お風呂はゆっくり落ち着いて入るべきだよな。これで良い。


「アルッアルー」


 といってもアルちゃんと一緒だ。

 お風呂に向かう俺に着いて着たので、そのまま連れ込んでみた。

 ハチ獣のファンちゃんも着いてきたが、お風呂は駄目そうなので、脱いだ服に包んで脱衣室に置いてきている。


「アルちゃん今日は頑張ったからなあ。よーし。お礼に綺麗に洗ってあげよう」


 と、その前に……


「アルちゃんにも黄金水をプレゼントだ」


 今日はアルちゃんの黄金水をたくさん飲ませてもらった。

 回復効果のある黄金水なしでは、戦い抜く事はできなかっただろう。

 それなら、お礼に肥料をかけてあげるのが勇者の心意気。


 座るアルちゃんの頭の上。葉っぱの上から放水する。


 ジョボジョボ


 ガラッ


「パパ。背中を流してあげる……何をしてるの?」


 お風呂のドアを開けて入ってきたのはナノちゃん。

 アルちゃんに放水する俺を見て固まっていた。


 マズイ場面を見られた。

 だからといって、途中で止まるものでもない。


 ジョボジョボ


「ああ。アルちゃんにたくさん飲ませてもらったお礼だよ……その、みんなには内緒で頼む」


 マジマジと眺めるナノちゃん。


 アルちゃんに肥料をあげるのは正しい行為。

 だが、お湯の中でないとはいえ、お風呂場で行うには褒められた行為ではない。

 他の生徒たちが真似してもいけないので、ここは内緒にしてもらいたい。


「そういえばパパ。アルちゃんのたくさん飲んでいた。そういう趣味なの?」


 そういう趣味ではない。

 アルちゃんの黄金水は、疲労回復の効果がある。

 俺が飲む理由はそれだけだ。


「それなら私もパパに飲ませてあげるの」


 そう言って俺の前に立つナノちゃん。

 お風呂に入るわけではないためか、制服のまま。

 そのスカートから伸びる足を肩幅に開くと、裾を持ち上げようとしていた。


 いや……だから俺にそういう趣味はないはずだ。

 アルちゃんの黄金水は特別なんだ……が待てよ?


 特別というなら、美少女の黄金水もまた特別ではないだろうか?


 しかも、ここは異世界。

 もしかするとだが、美少女の黄金水にも特別な効果があるかもしれない。

 地球の、俺の常識で判断するのは危険。


 そういうことなら、試してみるほかあるまい。

 試しもせずに特別な効果を見逃したとなれば、勇者の名折れである。


 だが、試しても特別な効果がない場合。

 恥ずかしい思いをしてまで協力したナノちゃんを悲しませることになる。


 検証のためと言うのではなく、俺の趣味という誤解のままにする。

 それなら特別な効果がなくとも何も問題ない。

 あえて俺が泥を被ることで丸く治める。それが勇者の優しさというものだ。


「すまないが、頼む」


 意を決した俺は、風呂場の床に寝転がる。

 お互いの身長差から、放水される液体を直接飲むならこの体勢しかない。


 見上げるナノちゃんが、下着を降ろす。

 真下から見る限り、やはりまだまだ子供としか言いようがない。


 ジャバジャバ


 その蛇口から放たれる液体を、俺は真顔で受け止める。


 ゴクゴク


 うまい!

 じゃなくて、検証のため飲み干すが、特別な効果は感じられない。

 予想はしていたが、やはり地球と同じでしかない。

 いや、飲んだことがないため同じかどうかは分からないが、多分同じだろう。


「パパ。ナノのどう?」


「ありがとう。おいしかったよ」


 冷静に考えれば美味しいものではない。

 アンモニア臭がするだけだ。

 それでも美少女補正というやつだろう。不快な気はしない。


「本当? それなら、これからもパパに飲ませてあげるの」


 まいったな……もう検証は必要ないというのに。

 それでも、せっかくのナノちゃんの好意。

 美少女の好意を無下にしては、勇者を名乗れない。

 その時は、また飲むしかあるまい……いやー困った困った。


 飲み終えた俺の顔と体は、すっかりナノちゃんの液体で濡れていた。

 少し名残惜しい気もするが、洗い流すとするか。


「それなら私がパパの背中を流すの」


 そういえば、俺の背中を流そうと入ってきたんだったか。

 すっかり脱線していたが、なんて立派な子だ。

 しかし、いくらまだ子供といっても、行為に甘えて良いのだろうか。


「あ、ああ。ありがとう。でも、ナノちゃんは後でみんなとお風呂に入るんじゃなかった?」


「大丈夫なの。お風呂に入らない。パパのお手伝いするだけだから」


 なるほど。屁理屈っぽい気もするが、まあ良い。

 これも家族団らんのため。絆のためだ。


 背中を向けて座る俺の背後から、ナノちゃんがタオルで背中を洗う。

 俺はナノちゃんに背中を洗われながら、アルちゃんの身体を洗ってやる。


「よーし。アルちゃん。前も洗おうねー」


 アルちゃんの背中を洗い終えた俺は、アルちゃんをひっくり返して、身体の前面を洗っていく。

 特に黄金水を排出する箇所は念入りに洗わないとな。

 今後も飲ませてもらうわけだし。


「パパの前も洗うの」


 うーむ。ナノちゃん、それはまずくないだろうか?

 何故かというと……俺は元気になっているからだ。


「いや。駄目だよ。これ以上は子供に洗わせるわけにはいかない」


 いくら女性に背中を洗ってもらっているとはいえ、相手は子供。

 勇者はロリコンではない。決して子供には手を出さない。


「大丈夫なの。ナノはもう大人なの」


 なんだ。もう大人だったのか。


「それなら頼む」


 相手が大人なら、元気になるのも仕方がない。

 良かった。やはり俺はロリコンではなかった。


 ゴシゴシコシコシコ


 ナノちゃんのタオル捌きを堪能する俺の耳に、ドアの向こう、脱衣所から声が聞こえる。


「ユウシャさーん。ナノちゃん知らないかなぁ?」


「さ、さあ……知らないなぁ。くうっ」


 あ、洗うだけだし。洗われて気持ち良いのは普通だし。


「うーん。外に出たのかなぁ……それならグリちゃんが見てるかなぁ? ちょっとグリちゃんのところへ行ってくるよぉ」


「あ、ああ。心配いらないよ。そのうち戻ってくるから、ううっ」


 ふう……すっきりした。

 せっかくだ。これもアルちゃんの葉っぱにかけておこう。


 しかし、ナノちゃんの手つき。

 妙に慣れているというか……どういうことだ?


「見ていたの。年長の子が院長のを洗うの。いずれ私にもやってもらうからって」


 なんて野郎だ。

 立場の弱い孤児たちに無理矢理とは。

 男の風上にもおけん不埒な野郎だ。


 俺は院長とは違う。


「ナノちゃん。ありがとう。洗ってくれたお礼に後でお金をあげるよ」


 きちんと相応の報酬を支払う。


 手だけのサービスだから1万ゴールドくらいで良いかな。

 しかし手で1万か……5万ゴールドも払えば……いけるのか?


「ナノちゃん……またお金が欲しくなったら言ってくれ」


 ナノちゃんも年頃となれば、色々とお金が入用だろう。

 援助してあげるのが勇者の責務というものだ。


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