38.グリフォンのグリさん
100/7/13(水)18:00 クランハウス
ゴブリン獣の森。
その傍らに建てられたクランハウスで過ごす初めての夜。
クランハウスといっても、柵は壊れ建物もボロボロ。
野営しているのと大して違いはない。
だが、こちらにはグリさんがいる。
眠る必要のないサマヨちゃんもいる。
半端なモンスターは近寄らないだろう。
なら、俺の仕事はというと──
「よーし。俺は料理を作るぞー。楽しみにしていてくれ」
2人の接待。特に大事なのはグリさんの機嫌をとることだ。
俺の熱い視線に気づいたグリさん。
しばらく俺を見返した後、プイと横を向いてしまった。
今のグリさんは、ただの野生モンスター。
カモナーに従ってはいるが、いつ気が変わるか分からない。
少し抜けた所のあるカモナー。
ポカをして嫌われても不思議ではない。
そんな時のため、俺もグリさんと仲良くなる必要がある。
まずは餌付けだ。
集めた薪で焚火を起こして、シカ獣の肉を焼く。
もっとも焼くだけならカモナーでも出来ること。
ここからが俺の腕の見せ所だ。
スマホのショップから購入した高級焼肉ソース。
このソースがポイントだ。
ガーリックをふんだんに使用した焼肉と相性抜群のソース。
こいつをタップリかけてやる。
ジュワー
立ち込めるガーリックの香りが食欲をそそるぜ。
「グリさーん。できたぞー熱いうちに食べてくれ」
シカ獣の丸焼きガーリックソースがけ。
パンチの効いたこの味なら、グリさんもいちころだ。
「グルゥ?」
俺の呼びかけでグリさんがノシノシやって来た。
匂いを嗅いだ後、肉を一口かじる。
そのまま顔を背けると、隣に置いておいた生のシカ獣を食べ始めた。
「なっ!? まさか俺が丹念に焼いた肉より、生を選ぶだと?」
ガツガツ
「どういうことだ? サマヨちゃん!」
サマヨちゃんは鼻に手をあてると、首を横に振る。
「まさか……ガーリックの匂いが駄目だと。そういうことか?」
シカ獣の肉はおいしいのだろう。
生のまま一心不乱に食すグリさん。
その顔は、素材の味が一番だと。
下手な料理人ほど、ごてごてソースを使って素材の味を殺す。
これだから貧乏人は困る。そう言っているようにも見える。
グリさんの力があれば、モンスターは狩り放題。肉も食べ放題。
良い肉を食べつくしたグルメのようなものだ。
くっ。餌付けするにも、その舌を満足させるのは難易度が高い。
まあ良い。
餌付けには失敗したが、まだだ。
だが、その前に。
せっかくの料理。俺が食べるとしよう。
げっぷ。お次は、お風呂だ。
お風呂でお互い裸の付き合いをする。
これで一気に仲良くなれるはずだ。
スマホから以前に購入した五右衛門風呂を取り出す。
しかし……グリさんが入るには小さすぎるな。
仕方がない。お湯を沸かして身体を洗い流すとするか。
庭の井戸から水を汲み、薪に火を点ける。
しばらく焚いたところで、手を入れて温度を確かめる。
良い湯加減だ。
やはりお風呂は熱々に炊き上げるに限る。
ぬるいお風呂なんて、お風呂じゃない。
「グリさーん。お湯が沸いたぞー。身体を洗ってあげるからおいでー」
俺は服を脱いで素っ裸でグリさんを迎える。
お風呂には入れないが、裸の付き合い。
その気分だけでも味わってもらおう。
俺の呼びかけで、ノシノシお風呂に近づくグリさん。
風呂釜に前足を突っ込んだところで、踵を返してしまった。
「どういうことだ? サマヨちゃん!」
サマヨちゃんは俺の下半身を指さすと、首を横に振る。
「まさか……俺の裸が駄目だと。そういうことか?」
立ち去る後ろ姿からは、そんな貧相な物を見せられては困る。
高貴な者は他人に易々と裸体を見せるものではない。
これだから貧乏人は駄目だ。そう言っているようにも見える。
グリさんは最高レアリティであるSSRモンスター。
上流階級の存在。人間でいえば貴族のようなものだ。
くっ。裸の付き合いをするには、一般人の俺では難易度が高い。
まあ良い。
裸の付き合いには失敗したが、まだだ。
だが、その前に。
せっかくお風呂を沸かしたんだ。
サマヨちゃんと一緒に入るとしよう。
ふう。お風呂に入りさっぱりした。
後は寝るだけ。
俺はグリさんの後を追って、小屋へと入る。
仲良くなるには一緒に食事、一緒にお風呂、そして一緒に寝ること。
寝食を共にした仲という奴だ。
グリさんの小屋。
今は骨組みだけの作りかけの状態。
外壁がないため、ここからなら外の状況が良く見える。
モンスターが襲ってきても、すぐに分かるというわけだ。
警戒しながらグリさんとも仲良くなれる。
一石二鳥というやつだな。
敷かれたわらの上で、前脚を畳んで座り込むグリさん。
その近くへと移動する。
「グルル……」
なんだ? まだ俺を警戒しているのか?
一緒にご飯を食べてお風呂に入った仲だろう。
もっとも、どちらも失敗はしたが。
ここはグリさんの緊張をほぐすためにも、世間話から入るとしよう。
「いやー昼から戦い詰めで疲れたよなあ。サマヨちゃん。グリさん? 俺たちも座って良いかな?」
疲れ知らずのスケルトン。疲れるわけがない。
が、何せグリさんは人間嫌い。
ここはサマヨちゃんを出汁に近づくとしよう。
興味ないかのように横を向きながらも、グリさんは少し場所を空けてくれた。
「ありがとう。サマヨちゃんもこっちで休もう」
カタカタ
サマヨちゃんは首を横に振ると、警戒するように小屋の入口へと座る。
グリさんと仲良くなるのは俺に任せると。そういうことか?
分かった。
サマヨちゃんの期待に応えるためにも、俺はグリさんのすぐ側まで。
香箱のように座り込むグリさんの隣へと腰を降ろした。
「ふう。座るだけでも休まるけど、どこかにもたれないなあ」
「グルル……」
それ以上、近寄るなと言いたげに唸るグリさん。
何かグリさんに近づく口実が必要だ。
「あいたた……カモナーを助ける時に受けた傷が急に痛みだしてきた」
俺は大げさに身体を丸めてみせる。
「うう……グリさん。すまないが少し寄りかかっても良いだろうか?」
「……」
唸るのを止めたグリさんは、黙ったまま横を向いていた。
カモナーがさらわれたその時、最終的にカモナーを助けたのは俺だ。
グリさんには貸しがある。この話題になれば、黙るしかないだろう。
グリさんのお腹のあたりに身体を預けるよう寄りかかる。
おお。柔らかい。
ふんわりした羽毛が高級ベッドのようだ。
カモナーがグリさんに張り付いて離れない気持ちがよく分かる。
手でグリさんの身体を撫でてみる。
「グルル……」
さわるなとでも言いたいのだろうか。
身体を揺すって唸るグリさん。
「そういえばサマヨちゃん。カモナーを助けるのは大変だったよなあ」
「……」
身じろぎする動きを止めるグリさん。
俺は手を使ってグリさんの身体をブラッシングしていく。
「リオンさんの召喚するモンスター。手ごわかったよなあ」
羽毛に顔を埋める。
クンクン。お風呂に入っていないのに良い匂いがする。
どこかで水浴びでもしているのだろうか?
「あの時は、さすがの俺も死んだと思ったよ。今、生きているのが不思議なくらいだよ」
4つ足で座るグリさん。
その身体の下へと手を差し込み、お腹をさわってみる。
ぷにぷにだ。
もう少し上、ここはグリさんの胸あたりか?
ちょっとくらいなら、さわっても良いかな?
もみもみ。
相変わらず横を向いたままのグリさん。
これは、もっとさわっても良いということだな。
「カモナーが無事で良かったよ。俺も命をかけた甲斐があった」
そういえば、カモナーはグリさんはメスだと言っていたが本当だろうか?
オスとメス。どうあっても男女によって体力差が生まれる。
筋肉のある男性は力に優れ、身軽な女性は敏捷に優れる。
仲間の性別を把握しておかなければ、指示を出すにも判断を誤る恐れがある。
身体を撫でながら、俺はグリさんの下半身へと、その手を移動させる。
クランのリーダーとして、確かめねばならない。
なにより、ここまで来てオスでしたでは洒落にならない。
グリさんの後ろ脚を撫でながら、その根元へと手を動かしていく。
「グルッ! グルルッ!」
と、これまで大人しくしていたグリさんが首を起こして唸りだした。
「グリさん暴れては駄目だ。せっかくのグリさんの小屋が壊れる。カモナーが見たら悲しむぞ」
うなだれたように座り込むグリさんの後ろへ回り込む。
尻尾が邪魔で見えないな。
尻尾をどかそうとする俺に対して、尻尾を揺すって抵抗するグリさん。
ふぬぬ。尻尾といえどグリフォンの尻尾。なかなか手ごわい。
グリさんの抵抗を弱らせなければ……どうする?
犬猫はブラッシングが好きだと聞く。
グリさんの下半身はライオン。似たようなものだろう。
まずはブラッシングでグリさんを気持ち良くさせ、抵抗を弱める。
「なら行くぞ! 勇者パワー発動だ」
勇者パワーで、グリさんの感度を強化する。
今ならさわるだけの俺のブラッシングでも、気持ち良くなるはずだ。
振り回される尻尾をつかんで撫でつける。
「グルッ?!」
驚いたように首を伸ばすグリさん。
ビビッと来たようだ。
グリさんのお尻を揉むように撫でる。
「グルッグルッ?!」
あまりの気持ち良さに驚いているのか?
だが、今は真夜中だ。
「グリさん。静かに。声を上げるとモンスターを呼び寄せるぞ」
再び静かになるグリさん。
つかんだグリさんの尻尾を持ち上げる。
尻尾に隠されていた穴が見えてきた。
だが、まだだ。
この穴は性別に関係なく存在する穴。
この下なんだが、身体の下に隠れていて見えない。
グリさんの背後から、お尻をなでる手を身体の下へ滑り込ませる。
「グルゥッ!!」
グリさんの身体に、棒は存在しなかった。
代わりに、柔らかい肉。そして、濡れたような液体が俺の手に触れていた。
メスに間違いない。
「ほう。グリさん……どういうことだ? これは?」
「グゥ……」
「この匂いに釣られてモンスターが寄ってきたらどうする?」
「グゥ……」
「悪い娘にはおしおきが必要だ。そうだな?」
しかし、おしおきするにも、俺とグリさんではサイズが違いすぎる。
人間の頭くらいのサイズが必要だが……そうか。頭か。
「サマヨちゃん。少し頭を貸してくれ」
入口で警戒するサマヨちゃんを呼び寄せ、頭蓋骨を取り外す。
頭蓋骨といっても魔王の頭蓋骨。
触れるだけで力を吸い取られる魔王のオーラをまとっている。
だが、今のグリさんなら、勇者パワーを受けたグリさんなら暗黒耐性があるため、サマヨちゃんに触れても問題ない。
俺たち3人がクランにおける主戦力。
3人の連携を高めるためにも──頭蓋骨を手に取り、グリさんに差し込む。
「グウゥッッ!!」
「静かにっ! グリさん、外を見ろ」
小屋の外。
いつの間にか、庭にオオカミ獣が集まっていた。
柵は半分しか完成していない。その切れ目から侵入してきたのだろう。
シカ獣の食べ残しに食らいついている。
「声を上げて騒げばオオカミ獣に気づかれる。カモナーの建てた小屋が壊されるぞ?」
「グゥ……」
もっとも、勇者パワーを発動した俺の身体は金色の光を発して輝いている。
気づかれるもクソもないのだが、まあ良い。
4つ足で座るグリさん。その身体を横に倒す。
ゴロンと抵抗なく倒れるグリさん。
これで動きやすくなった。
サマヨちゃんの頭蓋骨を動かしながら、俺はグリさんの後ろ脚。
その肉球へと自身を擦りつける。
「ううっ! グリさんっ! 行くぞ!」
「グルッ! グルルゥッッッ!!!」
ふう。グリさんから取りだしたサマヨちゃんの頭蓋骨は、白く濡れていた。
3人での共同訓練は成功だ。
グッタリしたグリさんを残して庭へ向かう。
俺に続くのは、頭蓋骨を身体に戻したサマヨちゃん。
オオカミ獣が食べているのは、シカ獣の丸焼きガーリックソースがけ。
俺の食べ残しだ。
濃厚なガーリックの匂いに釣られたのか?
グリさん用に作ったものが、モンスターを呼び寄せる羽目になるとは。
ドシーン
オオカミ獣へと近づく俺の背後から、大きな足音が聞こえた。
振り返る俺の前に、ノシノシ歩み寄るグリさんの姿があった。
「グルアアアアッッ!!!」
深夜にも関わらず盛大な咆哮。
オオカミ獣は腰が抜けたのか、その場に座り込んでいた。
俺も腰が抜けそうだ……怖い。
俺の横を通り過ぎたグリさんは、オオカミ獣へと爪を振り下ろした。
「キャイーン」
振るわれた爪が、黒い光跡を残してオオカミ獣を吹き飛ばす。
グリフォン。鷲の上半身とライオンの下半身を持つモンスター。
その鷲の前足が黒く変色していた。
これは、サマヨちゃんを差し込んだのが原因か?
魔王の影響を受けて、暗黒パワーを身に着けた。
そういうことか?
「グ、グリさん。凄い! 一振りでオオカミ獣を全滅させるなんて!」
「グルッ!」
俺のお世辞にギロリと向き直ったグリさんは、口に咥えるオオカミ獣を俺の前へと放り投げた。
「えっと……?」
戸惑う俺を余所に、グリさんは別の死体を食べていた。
手つかずの俺を見ると、その死体を俺の前までズイズイ押してくる。
これは……あれか? 俺に食えと? そう言っているのか?
しかし、生だぞ?
血がドクドク流れ落ちるオオカミ獣。
さすがにこれを生のままでは……
そういえば、俺はシカ獣の丸焼きガーリックソースがけをグリさんに出した。
俺はガーリックに目がないが、グリさんは苦手なのだろう。
一口しか食べてくれなかった。
それでも、一口は食べてくれた。
なら、俺も食べるしかない。
俺は血がしたたるノラ犬獣へとかぶりつく。
マズイ。気持ち悪い。死にたい。
だが、これを食べきらねばグリさんの信頼は得られない。
「お、おいしいよ。グリさん、ありがとう」
げぷっ。これ以上は無理……
なんとか胴体の肉だけは……内臓とか骨とか皮とか俺には無理だから。
なんとか食べ終えた俺の上着を咥えたグリさんが、空へと舞い上がる。
ひえ。な、なんだ?
空。グリさんに咥えられて空を飛んでいるのか?
俺を咥えたまま空を飛び続けるグリさん。
ひえ。何がしないのか分からないが、服が、服が脱げる。
服を咥えただけだから、服が脱げれば俺は地面に落ちる。
脱げないようしがみつくのに精いっぱいで、景色を眺める余裕などない。
そのまましばらく飛んだグリさんが、地面へと降り立つ。
目の前には、川が、流れ落ちる滝があった。
ザブザブと川へと入り込んだグリさんは、滝に打たれていた。
「えっと……どうすれば?」
滝に打たれたまま俺を見つめるグリさん。
これは……あれか? 俺も入れと。そう言っているのか?
しかし、夏とはいえ滝だぞ? 夜だぞ? 冷たいぞ?
しかも、ゴウゴウと流れ落ちる滝。
巨体のグリさんならともかく、俺では流されかねない。
そういえば、俺はグリさんにお風呂を勧めた。
江戸っ子ではないが、俺は熱い風呂が好きだ。
熱々になるまで炊き上げた五右衛門風呂。
もしかしてグリさんは熱い風呂が駄目なのか?
それなら、俺の裸が原因じゃない。
サマヨちゃん……嘘じゃないか!
いや、それよりもだ。
熱い風呂が苦手にも関わらず、グリさんは前足だけでも入ってくれた。
なら、俺も入るしかない。
俺は勢いよく流れ落ちる滝へと身を進ませる。
冷たい。身体を叩く水が痛い。寒い。
だが、これに耐えなければグリさんの信頼は得られない。
「つ、冷たくて気持ち良いよ。グリさん、ありがとう」
滝の勢いで流されそうになる俺の服をグリさんが咥える。
危ない。助けてくれたのか?
俺はグリさんの身体にしがみつきながら、一緒に滝に打たれる。
滝の前は岩場になっていた。
滝を出たグリさんは、濡れネズミのようになった俺の服を咥えると、口で服を剥ぎ取り始めていた。
「ひあ! グ、グリさん? 何を?」
俺の服を全て剥ぎ取ったグリさんは、俺の身体をペロペロと舐め始める。
これは……あれか?
俺の身体を綺麗にしようと。そういうことか?
そういえば俺はグリさんの身体をブラッシングした。
そのお返しとでも言うのだろうか?
こんな一方的に舐められては、あ、ちょっ? そこは……ああっ。恥ずかしい。
だが、俺も嫌がるグリさんを無理矢理ブラッシングしたのだ。
ここは耐えるしかない。
「ううっ! いくっ。獣に舐められていくのおおおお!」
はあ……俺の純情が奪われてしまった……
体液を舐め取ったグリさんは、お尻を向けると尻尾を跳ね上げた。
今まで尻尾に隠されていた場所まで、俺の前に晒すグリさん。
俺を仲間だと、男だと認めたということか?
いや、違う。
思えばグリさんは、とうに俺を認めていたのだ。
だから、俺の食事も1口だが食べた。
お風呂も少しだが入った。
一緒に寝床に入り、ブラッシングも受け入れた。
認めていなかったのは俺だ。
グリさんは、しょせんは野生のモンスター。いつかは居なくなると。
壁を作っていたのは俺だ。
何を考えているか分からない。凶暴で近寄るのが怖いと。
だが、そうじゃない。
グリさんは、俺のハーレムの一員。俺の第2夫人なんだ。
なら、頭蓋骨では駄目だ。
俺自身でないと意味がない。
俺はグリさんのお尻へと飛びついた。
俺の高さに合わせるよう、膝を屈めるグリさん。
お互いのサイズは全く違う。だが、そんなことは問題ではない。
愛だ。愛情があれば、でも、やはり体の相性が悪いと……
いや、そのための勇者パワー。
「勇者パワー全開!」
時刻は深夜。
暗闇の中で一際光を放つ俺の身体。
身体の相性を、種族の壁を超えて一つになるのが、勇者の力なんだ!
サイズ差があろうと、感度を極限まで高めれば!
「グリさんっ! グリさんっ! ううっ!」
「グルッ! グルルッッッ!」
ひとつになった俺たち。
グリさんの背中をベッドに夜を明かした俺は、すっかり乾いた服を着直した。
「グリさん戻ろう。サマヨちゃんが待っている」
俺の前で膝を折るグリさん。
「グルルッ!」
その背中に俺を乗せたグリさんが宙に羽ばたいた。
高い。気持ち良い。
空を舞うグリさん。
夜は明け、遠く地平線から朝日が昇ろうとしている。
背中にしがみつく俺の目に、遠くクランハウスが見えてきた。
空から見れば良く分かる。
広大なゴブリン獣の森。
その森から街を守ろうとポツンと立ちはだかる俺たちのクランハウス。
俺たちのクランハウスは、完全な出城。
森から、ゴブリン獣から街を守る最初の砦だ。
苦しい戦いになる。
だが、俺には頼れるハーレムがある。
恐れるべきものは何もない。




