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25.サイ獣狩り


 100/7/12(火)9:30 ギルド建物前


 クランハウスの受け渡しは明日の朝。

 それなら、今日はこのままモンスター退治でレベルアップといこう。

 クランハウスを守るためにも、強くならなければならない。


 と、その前に買い物だ。


 昨日のサイ獣との戦いで、俺の盾とサマヨちゃんの棍棒は壊れてしまっている。


 街の武器屋を見に行くのも良いが、まずはスマホの【ショップ】を見てみるとしよう。


 ・木の棍棒 2万ゴールド

 ・鉄の棍棒 10万ゴールド

 ・鋼の棍棒 20万ゴールド

 ・銀の棍棒 100万ゴールド


 うむ。高い。

 鉄や鋼ならまだしも、木の棍棒なんて木の枝をちょいと加工した程度じゃないのか?

 なんでこんなに高いんだろう。


 もしかして、スマホの【ショップ】は物価が高いんじゃないか?


 例えば、水1リットルの売価が1000ゴールド。

 地球と違って、安全な水を手に入れるのは手間がかかるとはいえ、高い。


 というわけで、次は街の武器屋へ行って棍棒の価格を調べるとしよう。


「ごめんください。棍棒を見せてもらえませんか」


 ・木の棍棒 1万ゴールド

 ・鉄の棍棒 5万ゴールド

 ・鋼の棍棒 10万ゴールド

 ・銀の攻防 取り扱いなし


 結論。スマホの【ショップ】は、市場の2倍の価格と考えて良い。


 アイテムなどを購入するなら、普通に市場で購入する方がお得だな

 スマホの【ショップ】といっても、万能ではないということだ。


 もっともスマホの【ショップ】には大きな利点がある。


 どこに居てもアイテムを購入できる。


 例えば、旅をするのに、水、食料を持ち歩く必要がない。

 スマホからささっと購入すれば良いので、重い荷物を持ち歩く必要がないのは大きなメリットだ。

 そう考えると、市場の倍額というのは破格に安い納得価格だ。


 そして、希少なアイテムも取り扱っており、在庫切れもない。


 例えば、銀の棍棒は街の武器屋で取り扱っていない。

 だが、スマホなら常時販売しており、在庫切れもない。


 その他にも、破壊の剣(1000万ゴールド)とか、オリハルコンの剣(1億ゴールド)などなど、いかにもレアっぽい武器まで普通に並んでいる。


 ゴールドさえあれば、レア装備で身を固めることだって容易い。


 俺たちプレイヤーをチートたらしめている元凶。

 それがこのスマホだ。

 何があろうと失うわけにはいかない。

 スマホを失ったプレイヤーは、普通の人間になってしまうだろう。


 そんなわけで、サマヨちゃんの棍棒と俺の盾を街の武器屋で購入する。


 ・鋼の棍棒 10万ゴールド

 ・木の盾  1万ゴールド


【所持金】14万5700 → 3万5700ゴールド


 パーティの役割でいえば、サマヨちゃんは囮。

 俺が攻撃役なのだが、それはあくまで強敵相手のこと。


 雑魚を乱獲するぶんには2人で殴りまくるのが一番というわけで、サマヨちゃんには奮発して鋼の棍棒を購入した。

 おかげで、ドランク野郎から貰った慰謝料が早くもなくなってしまった。


「それじゃカモナー、モンスター退治に行こうか?」


「うゆ? 僕も行くの?」


「当たり前だ。クランハウスが、お前のお店や畑が壊されても良いのか?」


「駄目だよぉ。僕のお店は僕が守るんだよぉ」


 街を出た俺たちはグリさんと合流。

 サイ獣がうろつく荒野へと移動する。



 100/7/12(火)11:30 荒野



 荒野に到着した俺たちを、さっそくモンスターが出迎える。


「ひぃぃっ! な、なにあれぇ」


 岩陰から現れたサイ獣の姿に、カモナーが声をあげる。

 サイ獣の巨体を初めて見たなら、驚くのも無理はない。


「あ、あんなのと戦うの? む、むりむりむりだよぉ」


 だが、カモナー。お前が驚いてどうする。

 お前が連れているグリさんも、同等の巨体を誇るモンスターだ。


「グルルァー!」


 怖気づくカモナーを励ますかのように、グリさんが雄たけびを上げる。

 空中へ飛び上がるとサイ獣目がけて急降下。速度と体重を乗せて圧しかかった。


 ドスーン


 巨体を誇るサイ獣を、あっさり押し倒すグリさん。


「グルァッ!」


 唸りと共にグリさんの前足がサイ獣の頭を打ちつける。


 スッパーン


 爪を立て横殴りに振るわれた前足が、血潮を上げてサイ獣の固い皮を切り裂いていく。


「ブモーォォォ」


 凄いな。これがグリさんの攻撃。

 名付けるなら、グリフォンクロー。


「グルァッ!」


 さらに続けて前足を振るうグリさん。


 スッパーン


 サイ獣は、早くも全身を血に染め息も絶え絶えの有様だ。


「待った。グリさん。待ってください」


 グリさんが止めとばかりに振るう前足を、慌てて止めに入る。


「グルル?」


 なに? とばかりに小首をかしげるグリさん。

 俺はスマホから野盗の剣を取りだし、カモナーの手に握らせる。


「カモナー。お前が止めを刺すんだ」


「ふぇ? ふえええ!?」


 渡された野盗の剣を手に、変な声を上げるカモナー。

 剣を落とさないようにしてくれよ。怪我するからな。


「この世界には、ラストアタックボーナスというゲームのような仕組みがある。止めを刺した者が、最も多く経験値を手に入れることができる」


「ふぁい」


「カモナーが止めを刺さないと、グリさんばかりレベルが上がっても仕方がないだろう」


 おぼつかない手つきで野盗の剣を握るカモナー。


 俺のクラン最大の弱点はカモナー。お前だ。

 同時に、最大の利点であるグリフォンを操るのもお前だ。


 グリさんがお前を守るのに手を取られ自由に動けなくなっては、クランの火力が激減する。


 少なくとも自衛できるまで、鍛え上げねばならない。


「うゅう。で、でも、グリちゃんが倒しても僕のレベルが上がるよぉ」


「パーティメンバーであれば経験値は貰えるからな。だが、それで良いのか?」


「うゅう?」


「サイ獣に戦う力はない。しかもグリさんが押さえているから、動くこともできない。後は止めを刺すだけ。素人にだってできる仕事だ。なのになぜ嫌がる?」


「うゅ……だって、血がいっぱいだよぉ」


 グリさんの爪で切り裂かれたサイ獣。

 皮膚の下。ピンクの臓器からはポンプのように血が溢れ続けており、辺りはむせるような匂いで一杯だ。


「お前は自分が嫌な仕事を、グリさんにやらせるのか? 確かにお前とグリさんで得意分野は異なる。だから普段はグリさんがやるのは当然だ。だが、お前も1度はグリさんと同じ経験をしておくべきだ」


「うゅう」


 レベルだけ上がれば良いというわけではない。

 いざという時に身を守るには、いわゆる殺す覚悟というヤツが必要だ。


「グリさんに甘えすぎていないか? お前も主人なら、グリさんのご飯を1度は自分で手に入れてみせろ」


 グリさんのためという言葉にピクリと反応するカモナー。

 それでも、剣を振るおうとするまでは決意が固まらない。

 情けなくもあるが、それがカモナーの良いところでもある。


「カモナー。サイ獣を見てみろ……せめて楽にさせてやってくれ」


 グリさんの下で苦し気にうごめくサイ獣。

 臓器がはみ出した身体を弱々しく動かし、苦し気な呻き声をあげている。


 悲哀を伴う鳴き声を聞かされては、止めを刺すのがますます躊躇われそうに思える。

 だが、カモナーは優しいヤツだ。


「う、うゆー!」


 目を閉じたカモナーは、野盗の剣をサイ獣の胸へ。

 ピンクの肉が露出した心臓部へと突き刺した。


 カモナーは、優しいからこそ苦しむサイ獣を一息に眠らせる。


 モンスターを、人間を、嬉々として残虐に徹底的に殺しつくす。

 パーティメンバーとしてなら、そんな戦闘狂は頼りになるだろう。


 だが、俺が求めているのはハーレムメンバーだ。

 そんな狂人が入ったのでは、せっかくのハーレムが血みどろの地獄絵図になる。


 動けないモンスターを倒すにも躊躇するような、情けなくも弱いカモナー。

 だからこそ、俺のハーレムにふさわしい。


 目を閉じるのはいただけないが、血の匂いに負けずよくがんばった。感動した。


「よし。ここからは俺が手本を見せてやろう。グリさんにどんどんモンスターを運んできてもらうよう、頼んでくれないか」


 岩場のモンスターは今の俺より格上。とて強といった相手だ。

 だが、SSRモンスターのグリさんが居れば、なんてことはない。


 グリさんがモンスターを痛めつける。

 俺が止めを刺す。


 これで何の危険もなく、効率的にレベルアップできる。

 名付けて、小判鮫作戦の実行開始だ。


 やはりカモナーは、奴のグリフォンは役に立つ。

 いっそカモナー本体より、グリフォンをハーレムメンバーに加えたい。

 メスだというし丁度良いだろう。



 100/7/12(火)14:00 荒野



 その後の俺は、グリさんが死ぬ寸前まで弱らせたサイ獣を野盗の剣で突き刺し続ける。

 刺身の上にタンポポを乗せるようなものだ。

 これでレベルが上がるのだから、異世界はおいしい。


「うゆぅ。疲れたよぉ」


 カモナーの声でスマホの時間を確認する。

 あまりの効率の良さに夢中になりすぎたようで、お昼をとっくに過ぎていた。


 適当にサイ獣の肉を焼いてお昼にする。

 この調子で昼からも狩り続けるぞ。


「僕はお昼からは薬草集めに戻りたいよぉ」


 と意気込んでいたのに。まったく。

 カモナーは効率良く稼げる当たりパーティの暗黙の了解を知らないようだ。


 稼げない外れパーティなら、友達に呼ばれたと言って即抜ける。

 その代わり、当たりパーティとなれば飯も睡眠もとらず、ぶっ続けで狩り続けるのがMMOの礼儀だというのに。


 ま、今日が初日だ。

 あまり無理させても仕方がない。

 俺たちは固定パーティ。明日以降も稼げるのだし今日は多目に見るとしよう。


「分かった。俺は夕方まで狩りを続ける。また17時くらいに草原で合流しようか」


「あいおー」


 グリさんも居なくなったので、サイ獣狩りは中断だ。

 俺とサマヨちゃんの2人では、時間と消耗が激しいため効率が悪い。


 それなら森へ行くか。

 今のうちからゴブリンとの戦闘に慣れる必要もある。

 格上狩りはあきらめて、ちょうど良い相手を乱獲するとしよう。


 その後、森でゴブリンやノラ犬獣といったモンスターを狩り続ける。


 やはりゴブリン単体なら弱い。

 そして、ゴブリン魔法使いは数が少ないのだろう。遭遇することはなかった。


 いずれクランハウスで激突するだろうゴブリン。

 注意するのは、魔法使いとリーダーだけだ。


 ある程度モンスターを退治したところで、カモナーと待ち合わせの時間になる。

 ステータスを確認しながら草原へと移動する。


【ステータス】


 名前:ゲイム・オタク

 種族:人間

 称号:勇者

 職業:勇者

 レベル:14(3 UP)

 HP:371(88 UP)

 MP:18 (6 UP)

 攻撃:28 (6 UP)

 防御:30 (6 UP)

 敏捷:28 (6 UP)

 魔攻:18 (6 UP)

 魔防:23 (6 UP)


 ポイント:9

 最強スキル:【勇者☆】

 武器スキル:【骨2・片手剣1(NEW)・両手斧1・盾1】

 強化スキル:【体力1・魅力1・植物1】

 他スキル :【身かわし1】【植物知識1】



 レアリティ:レア

 名前:サマヨちゃん

 種族:暗黒アンデッドスケルトン(クオーター)

 称号:暗黒聖女

 職業:暗黒バレエダンサー


 レベル:20 (4 UP)

 HP:320 (60 UP)

 MP:18  (4 UP)

 攻撃:44  (8 UP)

 防御:41  (8 UP)

 敏捷:79  (16UP)

 魔攻:18  (4 UP)

 魔防:43  (8 UP)


 種族スキル:【不死】【自動再生1】【痛覚無効】

【空腹無効】【状態異常無効】【不眠不休】


 スキル:【暗黒1】【献身】

 【棍棒1】【魅了ダンス】



 サイ獣の止めに野盗の剣を使っていたおかげで、ようやく【片手剣】スキルを習得した。

 他に特筆すべきことはないが、サマヨちゃんのレベルが4上昇。俺は3だけか。

 止めを差した俺よりレベルアップが早いとか、サマヨちゃんの【献身】スキルの影響は大きい。

 とはいえ、俺もあとわずかでレベルが上がるだろう。



 100/7/12(火)17:00 草原



 到着した草原。そこにカモナーの姿はなかった。


 もちろんグリさんの姿もなく、草原にはウサギ獣などのモンスターがぽつぽつ徘徊するのみ。


 カモナーのやつ、どうしたんだ?


 グリさんが一緒なのだ。草原にいる限りカモナーに危険はない。


 先に街に帰ったのか?

 時間に遅れた場合は先に帰ってくれとは言ってあるが、俺は時間どおりだ。


 だが、草原に姿がないということは、街に帰ったとしか考えられない。

 このまま草原にいても仕方がないので、俺もサマヨちゃんと街への帰路につく。


 しばらく歩くと、遠くに街の入場門が見えてきた。

 そして、門の先。街中から立ち上る大きな煙も。


 街中で騒ぎがあったのだろう。入場門の兵士たちの動きが慌ただしい。

 その影響で入場が遅れているのか、街へ入ろうとする群衆で入場門は長蛇の列を築いていた。


「何かあったんですか?」


 列の最後尾の男に聞いてみる。


「ああ。なんでも街中でグリフォンが暴れているそうだ。それで兵隊さんが大勢向かっているんだとよ」


 街中で暴れるグリフォン。

 そんなのグリさんに決まっている。


 そして、グリさんが暴れるということは、カモナーの身に何かあった。

 そういうことだ。


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