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23.決闘。その後


 100/7/11(月)20:00 ギルド訓練場


 ドランク野郎とのクラン戦は終了した。

 もちろん俺たちブレイブ・ハーツの勝利でだ。


「おめでとう。で、私との勝負は?」


 声をかけるのは、Aランク冒険者のチェーンだ。


 まだ、俺の魔法バッグを狙っているのか?


 しかも、先ほどの戦いを見たにも関わらず、自信満々の模様。

 となると、これは今の俺では、サマヨちゃんでは勝てないな。


「いたたた……先ほどの戦いで身体が……くっ。これでは戦えない」


「ユウシャさん。大丈夫? なんなら代わりに僕がこの女の相手をするよ?」


 やめてくれ。

 カモナーで勝てるわけないだろう。


「いや、それにはおよばない。だが、チェーンさん。俺は平和主義者だ。理由のない決闘は行わない。諦めてくれ」


「理由はある。私は貴方の魔法バッグが欲しい。これで大丈夫」


 全く大丈夫ではない。

 しかし、しつこい奴だ。

 しかも、実力のある相手だけにたちが悪い。


「なら、はっきりと言おう。俺では貴方に、チェーンさんに勝てない。俺は負ける勝負はしない。これで良いか?」


 相手はAランク冒険者で、この街のギルドのナンバー1だ。

 俺が敵わないと公言しても恥でも何でもない。

 元々この街で彼女に敵う者は1人も居ないからだ。

 したがって、俺に腰抜けと言える者も誰も居ない。


「駄目。勝負はやるまで分からない。だから大丈夫」


 だから、全く大丈夫ではないと言っている。


「お姉さん。このしつこい人、何とかしてもらえませんか? 無理矢理勝負を挑むって、これパワハラですよね?」


「そうね。チェーンさん。決闘の無理強いは駄目ですよ。いくら楽に勝てるカモだといってもね」


 俺に味方してくれているのか、煽っているのか、よく分からんな。


「分かった。それなら私も賭ける。貴方が勝てば私を1日好きにして良い。これで大丈夫」


 なるほど。

 確かに魅力的な条件ではある。

 だが、チェーンさんの提案に、俺はきな臭いものを感じていた。


「チェーンさん。つかぬことをお聞きしても、よろしいだろうか? 返答によっては俺も勝負を受けざるをえないと思うが、どうだろうか?」


「大丈夫。なんでも聞いて」


 何でも聞いて良いというなら、遠慮なく聞かせてもらうとしよう。


「貴方は処女か?」


 チェーンさんは、私を1日好きにして良い。そう言った。

 男が女を好きに扱うとなれば、もう、アレしかない。


 そのような言葉を軽々しく口にするということは、単に自分の実力に絶対の自信があるのか? それとも……まさか?


「……は?」


 は? じゃない。そこで、なぜお姉さんが反応する。

 しかも、少しは仲良くなったと思っていた所に、その虫を見るような目は止めてほしい。


「……大丈夫じゃない。私は処女じゃないもの」


 肩を落として答えるチェーンさん。

 やはり……貫通済みでガバガバだから、今さら気にしないというわけか。


 もっとも、美人で見た目20代前半に思える彼女。

 経験のない方がおかしいというものだが、魔法バッグを賭ける対価としては失格だ。


「なら駄目だ。ビッチでは話にならない」


 俺もまた肩を落として返答する。


「残念。私はビッチだったの」


 そう言い残して、チェーンさんは俺の前から立ち去っていった。


 ……本当に残念だ。

 せっかく知り合った美人が、すでにビッチだったとは。

 恐れていたことを現実として突きつけられては、さすがの俺でも困惑するしかない。


「ユウシャさん。いくらなんでも女性に対して失礼すぎませんか」


 俺を咎めているのだろう。お姉さんの声音は低かった。


「確かに失礼かもしれない。だが、体よく断るには、ああするしかなかった」


 お姉さんは、俺の相手をしてくれる貴重な美人さんだ。

 しかも、見るからに仕事一筋といった雰囲気がある。

 チェーンさんは駄目だったが、お姉さんならもしや……?

 となれば、今は仕事だけの付き合いでしかないが、いずれその先へと進めるよう、機嫌を損ねないのが大切だ。


「本当に断るつもりだったのかしらね? もしも、その、しょ、処女だったら決闘を受けたんじゃないんですか?」


「もちろんだ。俺にとって魔法バッグは大切なもの、例えるなら魔法バッグは俺の処女だ。同等の物を賭けるというなら断ることはできない。それは彼女の決意に対して失礼だからな」


 勇者には戦わなければならない時がある。

 だが、今はその時でなかった。それだけだ。


「全く。ビッチのくせにユウシャさんに言い寄るなど恥知らずな女です。その点、僕なら安心ですよ」


 そう言って俺の手を取るカモナー。

 今時の若者は進んでいると聞くが、カモナーは無事のようだ。

 いや、そうではなくて、なんだかカモナーの奴の仕草が妙に女っぽい。

 いや、元々少女が男装しているだけだから、女っぽいのは良いのだが。


「ふふ。ユウシャさん、僕と一緒にこの世界を歩いて行きたい……だなんて。安心してよ。僕はどこまでも、墓場までも一緒だから」


 ヤバイ。

 変な属性に目覚めていやがる。

 止せ。複数属性を付与してはキャラがおかしくなる。

 しかも、可愛いというより何だか怖いし……やむをえん。

 記憶が混濁した時などは、ショック療法が効果的だと聞いた覚えがある。


「カモナー」


「なんだい?」


「勇者チョップ」


 バシッ


「いたっ。いたいよぉ。ユウシャさん、ひどいよぉ」


 おお。戻った。


「すまない。カモナーの頭に虫が止まっていたからな。もう大丈夫だ」


「そうなの? ありがとぉ」


 やっぱりカモナーは間抜けなくらいがちょうど良い。


「そうそう。ユウシャさん。サイ獣の解体と魔石の買い取りが終わりました」


「おお。そういえばどうなったのだろう?」


 決闘騒ぎですっかり忘れるところだった。


「サイ獣ですが、魔石は4万ゴールド買い取り。魔石の他にも皮、角、肉なども買い取り対象になりまして、これらの合計買い取り額が2万ゴールド」


 ほう。サイ獣1匹で6万ゴールドの稼ぎとは。

 薬草集めに従事するのが、主に少女たちだけだというのも納得だ。

 薬草を集めるのが馬鹿らしくなる。


「そしてFランクの場合、解体料金は魔石買い取り額の70%で、2万8000ゴールド。ユウシャさんへのお支払いは、3万2000ゴールドになります」


 解体料金たっけええええ。


「……解体料金って高いんですね」


「ユウシャさんのランクが低いからです。ランクが上がるごとに10%ごと下がりますので、がんばってランクを上げてくださいね」


 ランクの低いうちは、モンスターの解体を頼んでも手数料が高くなるばかり。

 自分で解体しろということだ。

 それでも儲かったことに変わりはない。


「そして、ユウシャさんもギルドランクがEに上がります。ギルドカードを貸してください。手続きします」


 よし。

 これで俺も2日でFからEへ。

 ランクアップの最速記録保持者になったわけだ。


「ついでにユウシャさんの職業を戦士から魔物使いへ変更しておきます。このままじゃ詐欺ですからね」


 それは、俺もモンスターを使えると言ったのに、お姉さんが無視するからだ。

 本当は勇者に変更して欲しいところだが、ギルドで名声を上げれば希望を聞いてくれるだろう。


「最後にお二人とも。クランについてギルドから話があります。今日はもう遅いので、明日の朝、ギルドに来てください」


「分かりました。じゃ、カモナー。サマヨちゃん。宿屋へ帰ろうか」


「あーい」


 荒野での戦闘、ギルドでの決闘と俺も少々疲れが溜まっている。

 早く宿屋へ戻って休むとしよう。


 受付を退去した俺たちは、ギルドの広間を通り出口へと向かう。

 決闘の効果があったのだろう。

 ギルドを出るまでの間、俺たちは冒険者の視線を集めていた。


「あいつが2日でランクアップしたというユウシャって奴か?」

「ああ、さっきの戦い。凄かったぜ……スケルトンが」

「確かに。連れてる魔物は強いが、主人は弱そうだ」

「アレはそのうち魔物に反逆されて殺されるな」


 サマヨちゃんが有名になったのは喜ぶべきことだが、反面、俺の評価はかんばしくないようだ。


 俺の希望。職業 勇者への道は遠い。


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