17.薬草採取と闘技
100/7/10(日)10:00
【所持金】2000ゴールド
場所は冒険者ギルド。
カモナーが冒険者登録をしている間、俺は掲示板でも見て回るとしよう。
俺のギルドランクは、登録直後のためFランク。
Fランクの新人が受けられる依頼は……ふむふむ。
薬草1枚500ゴールドいつでも買い取ります。か。
さらに薬草+1なら700ゴールドで買い取りときたもんだ。
1枚買い取りしてもらう毎にギルドPが5P加算。
このギルドPを貯めればギルドランクが上がるわけだな。
そして、モンスターを討伐した場合は、魔石を買い取りしてもらうと。
その場合は、買い取り金額の100分の1、ギルドPが加算。
ノラ犬獣の魔石なら1000ゴールドの買い取りで、加算されるギルドPは10P。
ノラ犬獣なら俺とサマヨちゃんで楽に倒せる。
なんだ。これなら思ったよりすぐにSランクまで上がるんじゃないか?
やれやれ。また勇者として有名になってしまうな。
というか、ギルドランクを上げる意味ってあるのか?
モンスターの魔石は、ギルドランクに関係なく買い取りしてもらえる。
ギルド御用達ショップでの優待や引退後の就労に有利などはあるが、あくまで冒険者の強さというか信用度の目安なだけだ。
あいつらSランクかよ。すげーとチヤホヤされる。それだけだ。
そして、俺は勇者というだけで、すでにSランクみたいなものだ。
それなら魔石は無理にギルドに買い取りしてもらう必要はない。
スマホの【ショップ】で買い物するにも使用するからだ。
ギルドの買い取りとスマホへの吸収。
バランスよく利用していけば良い。
「ユウシャさん。お待たせぇ。僕も登録終わったよ」
掲示板を見て回るうちにカモナーが合流する。
せっかく冒険者登録が終わったというのに、カモナーの奴あまり元気がないな。
「おーおめでとう。で、どうした?」
「うん。その、僕の職業だけど……村人だって」
「え? 魔物使いじゃないのか?」
「うん。実際に魔物を使ってるところを見ないと駄目だって」
あー確かに。
使い魔も居ないのに魔物使いと言っても誰も信じてくれないよな。
「そうか。それじゃ、そのためにも早く10万ゴールド稼がないとな」
「だよぉ」
カモナーは意気込んでいるが、勇者の俺と、村人のカモナー。
美人とブスみたいなもので、案外良いコンビだ。
カモナーが居ることで、俺の優秀さがより引き立つというわけだ。
自ら俺の引き立て役になろうとは、カモナーもやるじゃないか。
少し見直したぞ。
「それじゃ薬草採取に行こうか」
「うわぁ僕、薬草採取やりたかったんだぁ。でも良いのかな? ユウシャさんはモンスター討伐の方が良かった?」
「薬草採取は冒険者の基本だからな。勇者は基本をおろそかにしない。基本があってこその勇者だ」
「うわーやっぱり勇者って凄いんだなぁ」
当然だ。俺以外には務まらない過酷な職業。
それが勇者だ。
俺たちは薬草採取のため、街を出ると草原へと向かう。
「カモナー。街の外にはどんな危険があるか分からない。油断せずいこう」
俺はカモナーに注意を促す。
コイツはどこか抜けたところがある。
注意一秒怪我一生。
勇者の俺が導いてやらねばならない。
「いや、その、なんで手を繋ぐの? これ、逆に動きづらいよぉ」
「いつでもお前を護れるようにだ。俺が盾になる。心配するな」
はあ。カモナーの手。スベスベしてるなあ。
「うぅユウシャさん。もしかして僕が、本当は、その……」
その時、草原に出た俺たちの頭上に巨大な影がせまっていた。
バサバサッバサッ
いつの間に?
さっきまで影なんて全く見えなかった。
ヤバイ。いや、これはヤバイなんてレベルじゃない。
「静かにっ! 何か来るっひいぃ」
ドシーン
俺たちの前に降り立ったのは、SSRモンスターグリフォン。
グルル……
ひ……
「うわぁ。グリちゃん! 迎えにきてくれたんだぁ」
ドシーンドシーン
足音を響かせて近づくグリフォン。
こ、こいつはカモナーの使い魔だよな?
なら大丈夫……
その目は、俺を、カモナーの手を握る俺を見ていた。
勇者の直感が告げている。これはマズイ。
目の前。息のかかる距離まで近づいたグリフォン。
「わあ。ちょっと、そんな、舐めたら駄目だよぉ」
グリフォンは、顔をこすりつけてカモナーに甘える。
「もうっ。紹介するからちょっと大人しくしてね。ユウシャさん、これが僕の……あれ? ユウシャさん。なんで寝てるの?」
お腹を見せて草原に倒れ伏す俺を見て、カモナーは不思議そうにしている。
「いや……その、そちらのグリさんが、なんか睨んでくるもので」
「ふうん。それで、どうして寝てるの?」
「……死んだふりだ」
「あははっ。ユウシャさん、おっかしい。死んだふりだって。グリちゃんは熊じゃないのに。ねぇーグリちゃん」
若い子の笑うツボはよく分からん。
死んだフリというか、お腹を見せて降参しなければ危ない所だったというのに。
カモナーとグリフォン。
幼女が猛犬を散歩させているようなものだ。
いつ猛犬が暴れ出すか分からない。
まったく。課金モンスターのしつけは主人の義務だというのに。
危なすぎるだろう。
しかし、これがSSRモンスターか。
思わず降参してしまったが、こいつのレベルはいくつだ?
カモナーのレベルが6だから、高くても10程度のはずだ。
それでこの迫力なら、レベルがあがればどうなるんだ?
だが……ふう。落ち着け。
カモナーの使い魔なら、俺の仲間でもあるわけだ。
そして、俺はグリさんに降伏した身。
今の俺はグリさんの子分みたいなものだ。
なら、俺に、子分に攻撃する親分は居ないだろう。
たぶん。
「それじゃぁ。薬草を探そうよぉ」
「あ、ああ。そうしよう」
よし。切り替えよう。薬草探しに集中だ。
ギルドで情報を集めたところ、この草原に生えているという話だが──
どこだ?
「あったぁ。これ、これ薬草だよぉ」
なに?
カモナーのやつ。まさか俺の先を越すとはな。
カモナーが手に持つのは確かに薬草だ。
「おお。やったな。カモナー。大発見だ」
だが、調子に乗るのはそこまでだ。
俺には【植物知識1】がある。
無数に草の生い茂る草原。
その中から1本の薬草を見つける。
なにより、勇者の集中力、そして悪を見逃さない観察力が試される時だ。
この先5メートル……そこだ!
「やったぁ。また薬草を見つけたよぉ。僕って才能あるのかも?」
野郎!
野郎じゃないが、その薬草は俺が先に目をつけたというのに。
「カッ……カモナーやるじゃないか。もう2本目か。何かコツでもあるのか?」
くそっ。俺はまだ0本だ。カモナーのくせに。
「うーん。なんだろう? なんとなくピキーンッってくる感じ?」
「……なるほど。よく分かった」
お前が薬草を独り占めしようということがな。
たかが薬草採取とはいえ、小娘に負けたとあっては勇者の名が廃る。
集中だ。集中するんだ。
目を閉じて意識を薬草に集中する。
ピキーンッ! そこだっ!
「勇者ダッシュ!」
俺は薬草めがけて走り寄る。
ドンッ
何? 目を閉じていたから前を見ていなかった。
しかし、こんな草原に俺がぶつかるものなんて……
グルル……
「あ……」
コテン
「うわぁ。また薬草だぁ。この草原、薬草がいっぱいだね。あれ? ユウシャさん。なんでまた死んでるのぉ?」
死んではいない。
死んだふりだ。
というか、本当に死ぬとこだったぞ。
「いえ、すみません。その、走ったらグリさんにぶつかってしまって。どうか勘弁してください。ごめんなさい」
「あははっ。ユウシャさん。グリちゃんそんなことで怒らないよー。なのに、おもしろーいぃ」
いや、お前は主人だから何しても怒らないだろうが、俺は違うの。
下手したら殺されるというのに。
しかし……駄目だ。
草原に来てからの俺は本来の調子ではない。
それもこれも、あのグリさんが原因だ。
あんな化け物が近くに居たんでは、おちおちカモナーへのセクハラもできない。
そもそもカモナーに張り合おうとするから、グリさんの目が厳しくなる。
薬草集めで遅れを取っても死ぬわけじゃない。
なら、ここはカモナーに花を持たせる。
それならグリさんも機嫌が良くなり、俺の心にも平穏が訪れるわけだ。
とはいっても、俺も少しは活躍したい。
なら、薬草集め以外のことでやるしかない。
「カモナーは薬草を見つけるのが上手いな。だが……カモナー。薬草を1本くれないか? 面白い物を見せてやる」
「え? なになにぃ?」
受け取った薬草を手に取り【植物強化1】スキルを使用する。
「ふう……勇者パワー発動!」
薬草に魔力を込める。
「ふわぁ。薬草が光ってるぅ。なにコレ?」
MPを1消費して薬草を強化する大技だ。
「勇者パワーだ。これで普通の薬草が、薬草+1にパワーアップする」
「うわあ。すごーい。ねえねえ。僕にもできるかなぁ?」
薬草集めでは遅れを取ったが、どうだ?
カモナーにも、少しは勇者の凄さが分かったことだろう。
「それは無理だ。これは【植物強化】スキルの力だからな」
「なんだ。そっかぁ。あ、でも僕は【植物知識3】を持ってるよぉ」
……そうだ。
花を持たせるも何も、俺の【植物知識1】で勝てるはずがなかった。
コイツはとんだチート野郎だ。
【植物知識1】の習得には1P必要。
【植物知識3】なら、おそらく4P必要になるだろう。
コイツ、こんなくだらんスキルに4Pも使ったのか?
死んだら元も子もないというのに。
でも……
「あははっ。また見つけたよぅ。凄いすごい。僕って天才かもぉ。ほらほら。ユウシャさんもしっかり探さないとぉ」
無邪気な笑みで楽しそうに薬草を集めるカモナー。
そうだな。戦うだけが異世界じゃない。
生産や採取といった裏方が好きなプレイヤーも多い。
そして、そんな裏方が居るからこそ、勇者は戦える。
ここではカモナーが主役だ。
勇者の見せ場は、裏方を、戦えない者たちを護る。その時だ。
なら、今はせいぜい間抜けなライバル役でもやらせてもらうとしよう。
「ああ。勇者に薬草集めで勝てると思うなよ? カモナー」
100/7/10(日)12:30
【所持金】2000ゴールド
「ふわぁ。ちょっと疲れたねぇ」
そう言って、草原に座り込むカモナー。
薬草を探して走り回りすぎだ。
「それはそうだ。午前中だけでカモナーは薬草を20枚も集めたからな。1日30枚も集めれば達人だというぞ」
現に俺の集めた薬草は5枚。
【植物知識1】のある俺ですら5枚だ。
同名のスキルであっても、1と3では天と地の開きがあるわけだ。
「昼だし、そろそろ食事にするか?」
「うん。そうだねぇ。でもお昼どうしよう?」
「そういうことなら俺に任せておけ。ちょっくらモンスターでも狩るとしよう」
薬草集めではカモナーに見せ場を譲ったが、ここからは勇者のターンだ。
バサッバサッ
「あ! グリちゃん。どこ行っていたのぉ? おかえりー」
む?
順調に薬草を集めるカモナーを見て安心したのか、グリさんは途中から居なくなっていた。
おかげで俺の緊張もほぐれてきたというのに。
「うわぁ。グリちゃん凄い! 大きなモンスターだねぇ」
戻ってきたグリさんは、その口に大きなイノシシ獣を咥えていた。
野郎!
野郎かどうか知らないが、まさか先回りして獲物を獲ってくるとは。
「ねえねえ。ユウシャさん。このモンスターを料理すれば良くない?」
「お、おう……いいね」
勇者のターンは終了した。
まあ良い。カモナーには、モンスターを解体するのは無理だろう。
街に来るまでの間に培った、男料理って奴を見せてやろう。
俺は腰からナイフを取り出し手に取ると──
「じゃあ、グリちゃん。ここに降ろしてよぉ。そうそう。うわぁ。皮まで剥いでバラしてくれるのぉ。グリちゃんえらーい!」
──そっと腰にナイフを戻した。
「で、燃えそうな草を集めてぇ……魔法ライターで点火ぁ ぼぉ」
ボッ。メラメラ
「あとは焼けるまで我慢だねぇ。おいしそー」
…マズイぞ。
思ったよりカモナーのサバイバル能力が高い。
勇者様すごーいのはずが、これじゃグリさんすごーいばかりじゃないか。
「サマヨちゃん。勇者って本当に凄いのだろうか……?」
カタカタ
とにかく、グリさんのおかげで、食事を終えた俺たちはその後も薬草を集め続ける。
100/7/10(日)16:00
「うーん。もうこの辺りに薬草ないねぇ」
「そうみたいだな。まあ、これだけ集めればな」
カモナーの集めた薬草はしめて50枚。
集めすぎである。
もっとも異世界の草原に生える薬草は、いくら集めても翌日には自然と生えてくるそうなので取りすぎることはない。安心だ。
「どうしようかなぁ。もう帰る?」
「帰るには微妙な時間だな。少し森でも行かないか? 試したいことがある」
「うん。分かったよぉ」
森。といっても森の奥まで行くわけではない。
森の樹を標的に、ギルドの受付で聞いた闘技。
それを試してみたい。
ドシーンドシーン
「うーん。グリちゃん森には入れないねぇ。樹にひっかかっちゃうよぉ」
まあ、あの巨体だ。無理もない。
「それは好都合。ではなくて、残念だがグリちゃんは森の外で待っていてもらおうか」
メキメキッドシーン
「うわぁ。グリちゃんすごーい。あんな大きな樹が折れちゃったぁ」
メキメキッドシーン
いかん。これ以上森林を破壊させてはエルフに怒られる。
見たことはないが、異世界だし居るはずだ。
「待った待った。ストップ。駄目駄目。意味なく樹木を折ってはいけません」
「あうぅ。そ、そうかな? でも、グリちゃんもついてきたいって」
グルル……
ひい。
「だ、大丈夫です。ここ。ここでやります。これ以上は奥へ行きませんから」
「だって。よかったねぇグリちゃん。これで一緒に居られるねぇ」
こういう秘密特訓は、目立たないようにやるものだ。
もう少し奥まで。人目につかない場所まで行きたかったが仕方ない。
俺は1本の樹を前にして構える。
「ギルドの受付の人が言っていたよな? 特定の武器で長い修練を重ねると使える必殺技。それが闘技だと」
「うん。でも、僕は武器なんて使ったことないよ」
こいつ。本当によく生きてこれたな。
「それはそれで問題だな。グリさんは強いが、いつでも一緒に居てくれるわけじゃない。自分の身くらいは守れるようにならないと」
「うん。そうだね」
「ま、それはそれとして、俺は武器スキルをいくつか習得している」
「ああ。あれ取ったんだぁ。いいなあ。どれにしようか悩んでいたら、なくなっちゃたんだよぉ」
【植物知識3】なんて習得するからだ。
「カモナー。それは心配いらない。同じ武器を使って戦っていれば武器スキルは自分で習得できる。現に俺はそうして習得した」
「ほへぇ。すごーい。ユウシャさんすごーい」
キタ。ようやく勇者様すごいがきたぞ。やる気がでてきた。
「サマヨちゃん。いくぞ!」
カタカタ
サマヨちゃんが差し出す左腕を引っこ抜く。
「ええっ! ちょっ、ユウシャさん何してるのぉ?」
サマヨちゃんの左前腕を右手に握る。
グリフォン。
SSRモンスターを前にしているというのに、不思議と心が落ち着く。
確かにSSRモンスターは強い。
だが、今、俺とサマヨちゃんは、腕を通して1つになっている。
俺1人では敵わない。でも、俺にはサマヨちゃんがいる。
「ふう。俺とサマヨちゃんのコンビプレイを見て驚くなよ」
闘技。
骨術の闘技とはいったいどんな技だ?
スマホは何も答えてくれない。
教えてくれる師匠もいない。
なら俺が自分で編み出すしかない。
俺の、勇者だけの闘技。
サマヨちゃんの前腕に魔力を込める。
暗黒の煙が立ち込め、白かった骨が漆黒の闇へと色を変えていく。
そして完全に闇に染まる……今だ!
「おおお! 勇者アターッック」
振りかぶった前腕を──フルスイング。
ドカ【暗黒粉砕打撃】ーン!
正面の樹が粉々に砕け散っていた。
魔力を込めて全力で殴る。これだ。
「す、すごーい! あんな大きな樹が粉々だよぉ」
「ふう。勇者の相手にならんな」
まさかこれ程の威力があるとは、俺も驚きだ。
ふと視線を感じてチラリと見ると
ググウ……
グリさんも驚いているようだ。
時代は下剋上。
俺がいつまでも子分に甘んじていると思わないことだな。
「すごいねー。その闘技? 名前とかあるの?」
「勇者アタック」
「?」
「勇者アタックだ」
「そうなの? 本当に?」
「勇者アタックが正式名称だ」
「あははぁっ。うそだぁ。絶対に嘘だよぉ」
正式な名称なんて俺が知っているはずがない。
だが、これだけの威力のある闘技となると、それにふさわしい名称が必要だ。
ならば、これ以上の名称はない。
「でもユウシャさんって剣で戦うんじゃないんだ?」
「まあ……剣も使える。使えるが、勇者は多数の武器に精通していなければならない。そういうことだ」
すまないが、剣術はまだ習得していない。つまり闘技は使えない。
両手斧術なんてのもあるが、そもそも1度も使ったことがない。
「そうなんだぁ。あ、でも樹木……ユウシャさんも折っちゃったねぇ。岩の方が良かったんじゃないのぉ?」
いや、岩とか無理だから。
たぶんサマヨちゃんの腕が粉々になる。
「……その、集めよう。折った樹木を。集めて薪にしよう。無駄にしたら駄目だけど、有効に活用すれば大丈夫。きっと怒られない」
グリさんの折った樹木もまとめてスマホに収納。
無駄に容量を使ってしまった。
100/7/10(日)17:30
闘技の確認を終えた俺たちは、冒険者ギルドに戻ってきた。
集めた薬草を、買い取りカウンターに持ち込む。
「すみませぇーん。この薬草、買い取ってくださいなぁ」
「あいよ。お? 坊主凄いな! 50枚で2万5000ゴールド。そのうち薬草+1が15枚だから追加で3000ゴールドだ」
「ありがとぉ」
俺が集めた薬草は15枚。
達人は1日で30枚集めるというから、【植物知識2】があれば、異世界では達人級ということか。
俺は集めた薬草15枚、全部を薬草+1に強化している。
今日の収入は、しめて1万500ゴールドだ。
【所持金】1万2500ゴールド
「しかし、今の新人は凄いのう。他にも薬草を30枚集めた若者がおってな。いやはや、若い者も捨てたもんじゃないのう」
カモナー以外に30枚も集めた奴がいるのか。
いったい誰だ? そんな新人。プレイヤー以外にありえんだろう。
「おじさん。その新人の名前は分かりますか?」
「んん? いやあ。なんでか、俺は目立ちなくないのにな。とかブツブツ言っておったんでなあ。名前は言えんのだ」
目立ちたくないか。なかなか謙虚な奴だ。
「あら? カモナーちゃんじゃない。どう? 調子は」
換金してホクホク顔のカモナーに話しかけるのは、登録でお世話になった受付のお姉さんだ。まだ働いていたのか。
「うん。見てみてぇ。薬草を売ってこんなに儲かったよぉ」
「あら! 凄いわねー。でも」
お姉さんは声を潜める。
「あまり他人に見せちゃダメよ。お金をたくさん持ってると分かると何があるか分からないから。ね」
「あ! ああぁ。そうかぁ。グリちゃん居ないし、注意します。ありがとう」
そのまま立ち去ろうとするお姉さんにカモナーが声をかける。
「あ、そうだ。お姉さん。モンスターの骨を使う闘技って名前はあるの?」
「? どうして? カモナーちゃん。骨なんかで戦うつもり?」
「んぅ? あ、僕じゃなくて。ユウシャさんが骨で戦うんだ。それで、闘技を見せてくれたんだけど、その名前がおかしいんだよぉ」
いったい勇者アタックの何がそんなに受けたのか?
やはり若い子の感覚は分からん。
「骨で? あの人どこの蛮族出身なの?」
露骨に顔をしかめるお姉さん。美人なのにもったいない。
「うーん。僕も知らないなぁ」
「駄目よ。モンスターと戦うならきちんと武器を揃えないと。武器を買うお金もないなら骨も仕方ないかもしれないけど。ね」
そう思うなら、俺に直接アドバイスしてほしいものだ。
ま、せっかく会ったんだし俺も挨拶しておこう。
「あ、受付のお姉さん。どうも」
「はい。それじゃ、ごきげんよう」
「うん。お姉さん。またねぇ」
元気に手を振るカモナー。
チラリと俺を見たあと、カモナーに手を振りながら去っていくお姉さん。
コイツのコミュニケーション能力が羨ましい。




