惜しむらくは………
「〈黒騎士〉だ。‥アンデット系への攻撃力が低い。知ってるかもしれないが。」
「‥‥他は?」
ある程度までレベルを上げるとスタイルを2つ持つことも可能なのだが、スタイルを2つ持っていると、1つ1つのスタイルの効果は弱くなる。そのためヨイミヤは1つのスタイルしか取得していなかった。
「いや‥‥俺は1つしか」
ヨイミヤの言葉をしっかりと耳に入れたのか入れていないのか、クロは呪符のつまった本の頁をめくっていたが、本の中程を開いてヨイミヤに向けた。右側の頁には、短冊形に赤い色で、光を表す紋章と、呪文字の描かれた呪符。左側にはヨイミヤにとっては初見の、割れた鏡にも蜘蛛の巣にも見える紋章が、同じく赤い色で短冊形の呪符に描かれていた。
「右は〈光の収域〉。この呪符を中心とする半径20メートル以内のアンデットモンスターは、30秒に1割HPを失う。ボス級、中ボス級、変異種には効果がない。‥‥左は〈職破壊〉。数分間だけ、〈スタイル〉の特性を弱める。どちらも〈黒騎士〉使用可。ペナルティ無し。消費MP500以下。」
「‥‥っ」
あまりのアイテムの性能の良さに、ヨイミヤは絶句する。彼の先輩が彼にこの店を進めた理由が分かったようだ。
(こんなアイテム、見たことないぞっ)
1つ金貨十数枚は下らないだろう。他の店で売っているものに比べれば破格だが、この商品にはそれだけの価値がある。
ただ、惜しむらくは‥‥少女のネーミングセンスが壊滅的なことだろうか。
「そこの‥は、〈光精霊の羽飾り・改〉。光の精霊が十数分具現化して、攻撃、防御を命令により行う。〈黒騎士〉使用可。ペナルティ無し。消費MP100。」
カウンターに置かれたアイテムを指だけで示すと、クロは開けていた本を横にのけ、その下から別の本を取り出した。こちらも暗色系の背表紙だ。クロがペラペラと頁をめくっていることから、ヨイミヤにも、それが先程と同じアルバム式になっていると分かる。
クロは、丁度ヨイミヤが手を広げた程の大きさの、人の形に切り取られた紙を取り出した。紙の裏側には、黒色の文字がびっしりと書き込まれている。
「蘇生用アイテム〈チェンジ・ヒトカタ〉。このヒトカタは、2つ1つ組になっていて、片方を地点Aに置き、地点Bでこのヒトカタを身につけた状態で死亡すると、地点Aで復活する。消費MPは無し。」
(‥‥つまり、蘇生用アイテムがつきるまで何度も死亡するという悪夢を見なくていいわけか‥。いや、アイテムは凄いんだが、名前で損してるな‥‥絶対)
そう思いつつも薄暗い店内が宝の山に見えてくるヨイミヤだった。




