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とある雑貨屋  作者: 檸檬
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勘違い

りるるが目覚めると、クロはまだ品質チェック作業を続けていた。終わっている、とは思っていなかったので、りるるはクロに声をかけることはせずに店の開店準備に入った。

入り口の鍵を開け、店の照明、そして路地の灯りをつける。


それからハタキで棚やアイテムの埃を払う。床の埃は箒で掃いた。

りるるの毎日の掃除のおかげで、店は雑然としていながらも汚い印象を与えない。


一通り掃除を終えると、りるるは外の空気を吸いに店から出る。路地を抜けて、浮游都市ラナの端まで来た。

まだ少し夜の色の残っている空を見上げ、大きくのびをする。白っぽい月が地平線のそばに見えた。


「おはよう、りるるちゃん」

「あ、おはよーございます!シエラさん、お久しぶりです。お嬢さんの具合は大丈夫ですか?」

りるるに声をかけたのは、1人の気さくそうな女性だった。


浮游都市であるラナでは生活用水を川などの水源から得ることが出来ないため、空気中の水蒸気を水に変える装置が幾つかある。その内の1つが、今りるるのいるこの場所だ。

りるるとシエラはここで知り合った。シエラの娘が大病を患い、それをりるるが(クロに貰った薬で)治してから、親しい間柄になっている。


「もちろん大丈夫よ。半年前の事じゃないの!」

あっははは、と豪快に笑うシエラに、りるるも笑う。

「あはは‥‥良かったです。じゃあこれで」

「ちょっと待ちなさい!」

シエラがドンと水汲みバケツを置いた。

「りるるちゃ~ん?旦那とは仲良くやってる?」

「や、あの、ですからね?クロさんは‥」

「りるるちゃんは可愛いけど、押しが足りないの!いい?男ってのはねぇ、口では冷たくても身体は」

「わぁあーー!違うんですって!」


ツインテールが乱れるのも構わずに首を振るりるるに、シエラは分かってるわ、とでも言いたげに大きく頷く。そのまま住宅街へ去っていった。

クロさんは女性なんですーーーーーっ!という少女の魂の叫びは聞こえなかったようである。

りるるは食料調達をすることにした。



りるるが店に戻っても、クロはまだ作業を続けていた。いつもながらすごい集中力だ。りるるが出ていったことにも、帰って来たことにも気付いていないのだろう。

りるるはパンをかじる。

甘く香ばしい香りも、クロの元へは届かないらしい。バリアが張ってありそうな気さえする。


りるるは店の方に視線をずらす。〈雑貨屋カラス〉は開店休業状態だ。まあ、店側に売る意思も無いようなので良いのかもしれないが。

儲けが無いのにどこから生活費が出ているのかクロに聞いたところ、特許のようなものでお金を手に入れているらしい。

りるるにはいまいち想像できないが。


穏やかな一日が始まろうとしていた。




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