とある雑貨屋
惑星フライステの大陸アトランテー巨大なアヒルの様な形をしたその大陸は、世界8大大陸の1つだ。
現在、最も多くのプレイヤーが集まっている大陸でもある。
その大陸の北端には、フライステの民にアク・チーと呼ばれる浮游都市が幾つか存在する。その内の1つ、最も大きな浮游都市ラナにその店はある。
大都市の喧騒が嘘のように静まりかえった路地を進むと、暗闇から浮かび上がるかのように小さな明かりが現れる。
青白く漂う明かりは、暗闇の中に、小さな店があることを示す。
忘れ去られたかのような場所に、その店はある。
その店へ、1人の男が不安気に入っていく。プレイヤー独特の整った顔立。
金髪碧眼、長身を軽鎧に包んだ男は、思いがけず明るい声に迎えられた。
「いらっしゃいませっ、雑貨屋カラスへようこそっ!」
「‥‥」
一瞬、男は店を間違えたかと考えた。先輩からは、無口な少女が店主だと聞いていたからだ。
男は改めて目の前の少女を見る。蜜色の髪、菫色の瞳。背は、その年代の少女にしては高い方だろうか。ツインテールにした髪をくるんとゆらすあたりは、可愛いとしか言いらようがない‥が。
(違う!イメージ違う!)
「あれ?お客さん、ですよね?じゃないとこんなトコ来ないですもんねっ。あ、おにーさん、フレンド登録しませんかっ!?」
「‥あの‥だ‥君は、この店の店主‥か?」
男の言葉に、少女は、ぷぅと頬をふくらませ店の奥へ声をかける。
「クロさーーん!お客さんですよーー!?」
突如、暗がりから、影が立体的に盛り上がるようにして、人が現れる。黒色に包まれたその体は、2、3度首を回すと男の方を向いた。黒髪、黒瞳、その顔は無表情。
「‥‥何で?」




