ギルド〈ダイス〉
ーー〈敗れし王の城〉にてーー
「ギ、ギルマスぅ!なんかすげーアンデット涌いてきてるんですけどっ!?」
「うん、そうだね。」
仮面の笑顔と称される柔和な笑顔を、貴公子然とした顔に浮かべながら、ギルド〈ダイス〉のギルドマスター、キースが頷く。
男にしては少々長い黒髪、瞳の色は笑みに細められたせいで見ることができない。
「問題、ないよね?レベル差はあるし。」
キースと付き合いの長い〈ダイス〉メンバーは、文句言うと殺されると悟る。冷や汗をかきながら、副ギルマスのローズが、あはは‥と笑った。
「も、問題なんて‥あ‥あるわけないです‥い、逝きますよみんなっ!」
目の前のモンスターは皆アンデット。200体あまりの不死生物が、〈ダイス〉30人の前で不気味に動いている。既にアンデットと幾戦か交えてはいるが、誰もかれも微妙に腰がひけている。
しかし、臓器がとび出ているようなモンスター達よりも、キースの方が恐ろしいらしい。
キースが手を打つと、やけっぱちに叫びながら、1人が飛び込んでいった。
さらに1人、2人と戦闘に加わり、ついにはキースを除いた全員が戦闘に加わった。
キースは、にこにこと、その戦闘を見ている。
「〈スプリンクル・オブ・ライト〉!」
不死生物達の頭上に、一瞬光精霊と、光精霊の持つ槍のエフェクトが現れ、次の瞬間、光の雨を不死生物へ降らせる。
一瞬にして多くのモンスターを倒したのは、水色の髪をコーンアップにした、不敵な笑顔が似合う美女。
ごっそりと減った不死生物モンスターの間を駆け抜け、次々に撃破していくのはローズだ。
不死生物への攻撃力が高いという特性を持つスタイル、〈白騎士〉であるローズは、剣を振るうたびに、肉も骨も何もかも関係なく断ち切っている。気分の悪くなる光景なのだが、ローズ本人は口元に笑みさえ浮かべている。
一種の無我の境地なのだろう。
水色の髪の美女、ガロアがさらに広範囲に光の雨を降らせた。
他のギルドメンバーも、ここが押し時とばかりに、ある者は棍棒を振り回し、またある者は、ありとあらゆる付与呪文をばらまいている。〈冒険者〉達は確実に、不死生物達を押し始めた。
後方でその様子を見ていたキースの背後に、どこからもれでたのか、数体の〈動く死体〉がせまる。
キースは腰の双刀に手を置いてはいるものの、目の前の光景をにこにこと眺め、背後に注意を向けていない。
これはいけると思ったかーーいや、ゾンビに知能らしい知能は無いのだがーー1体の〈動く死体〉が生前使っていたのであろう斧を振り上げーー
ーー振り下ろすことはできなかった。
いつの間にか、キースの背後の数体の〈動く死体〉は、全て首と胴を切りはなされていた。
キースが動いたようには見えない。微笑も、立ち位置も、まるで変わっていない。
ただ、少し、キースの黒髪が風にそよいだ。
それだけだった。
いつ抜刀したかさえ分からない、圧倒的な速さから彼につけられた二つ名は〈神速〉。それを目の当たりにして、〈ダイス〉メンバーはいつもの事ながら背中に冷や汗を流す思いだった。




