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空っぽ鎧の黒騎士様!!  作者: ken
一章 魔女開放編
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5話 狼と犬

 配下が出来た。気分は上司である。


 予定としては、このヘルウルフ達に子供達の安全を確保してもらい、そこから戦闘に入るつもりだ。子供達が人質に取られでもしたら大変だからな。


 さて、敵じゃないとなればトトの事を知られても良いだろう。そう考えた俺はトトに話しかけた。


「トト。挨拶しておけ」

「わかったんよ」


 刀がボンッと白い煙に包まれて女の子に変わる。さぞ驚くだろうと思っていたのだが、ヘルハウンド達は全く驚かなかった。


「ん?驚かないんだな」

「ニオイ。シタ。ワカル」


 なんと。匂いとな。そういえば犬って嗅覚良かったっけ。危ない危ない。このまま突っ込んでたら危うく近づくだけで気づかれてたな。


「ジン。チ。ニオイ。イッパイ。スゴイ」


 ……あんまり嬉しくないな。道中たくさん戦ったけど、俺が楽しんで殺しをしているみたいじゃないか。


「襲われたから仕方無くだ。ところで川とか近くに無いか?」


 出来れば匂いは薄めておきたい。少しでも気づかれにくくしたいしな。


「アル。イクカ?」

「おう。行こう。けどその前にお互い挨拶な」


 という訳で俺とトトとヘルウルフ達は挨拶を交わした。ヘルウルフ達はトトに謝罪もした。トトは「関係ないならいいんよ」と言って許していた。優しい子である。


 ひとまず俺達は川にいった。


 そこで、水を浴びながらヘルウルフ達と話をしていると、自分達も俺みたいに強くなりたいと言ってきた。まあ、強ければ人狼も倒せただろうしな。そこは地道に頑張れ……となるのが普通。

 しかし、俺には【覚醒を促す者】という称号があるのだよ。フッフッフ。今は俺の部下だし、実験ついでにしてやってもいいだろう。正直な所をいうと、進化した後を見たいんだけどね!!進化ってワクワクする。進化のあるゲームをしてたときも、どんなふうに変わるか楽しみで仕方なかったな。


 という訳で、三匹を集めて進化させてみた。一匹辺りの魔力消費量はトトよりも少し高いくらいだった。俺にとったら大した量でもないけどな。


 そして進化後。衝撃的な事が起きた。人狼は二足歩行する狼みたいな容姿だと聞いていおり、てっきり同じように進化すると思っていた。だが、目の前の元ヘルウルフ達は想像した姿とまったく違った。


「す、すごい!!進化した!!ありがとうございます!!ジン様!!」

「!!」

「うわぁ。すごい!!」


 なんとほぼ人間の容姿である。どうやら亜人になったようだ。

 耳と尻尾は残しているが、話し方も流暢になって代わり過ぎじゃないか?


 俺とよく話していたヘルウルフは黒髪の少女になっていた。スラリとした体型で背が高い美人さんである。

 次に、俺が先ほど抱きかかえたヘルウルフは茶色の髪の少女になっていた。背は小さいが胸の大きい、おっとりとした可愛い感じである。

 最後の一匹、ずっと黙っているヘルウルフは、赤色の髪の美男子である。背の大きな細マッチョだった。腹筋も割れている。


 さて、何故おれが体型どころか筋肉の付き方までわかるのかというと。答えは簡単である。


 全員全裸だったのだ。


「あ、あああ」


 トトは男の全裸を見て顔が真っ赤だ。そういうの意識しだす年頃だもんね。仕方ないよ。


 そして俺だが、嬉しいのは嬉しい。だが辛い。鎧になってアレが無くなったショックを深く感じてしまった。転生前なら今頃元気いっぱいだったろうに。童貞はもう二度と捨てられないのか。


 落ち込みつつもガン見していると、元ヘルウルフの女性陣が俺の視線に気づいたのか、顔を赤くしてしゃがみ、手や尻尾で体を隠した。男は周りを気にせず、隠すどころか体の調子を確かめるべく飛んだり腕を回したりしている。

 やめとけ。そろそろトトが頭から湯気出しそうだ。


「あ、あの。あまり見ないでください。その、なんだか恥ずかしいので」

「あのっ、そのっ、お願いします」


 二人が上目遣いで頼んでくるので、後ろを向いてやる。

 手で目を覆ってチラチラ見たりなどしないのだ!!


「ありがとうございます。今まではこんな事はなかったのですが……。毛が無いとなんだか恥ずかしいです。」

「私もだよ。お姉ちゃん」


 ふむ、このままだとまともに動けそうにないな。全裸で動き回れって言うのも無茶だし、服が必要だな。

 それはそうとして走り回るな。もうトトが倒れそうにしてるから。


 俺は服を作ってやることにした。道具と材料は取り込んだ魔物で何とかする。

 まず布の代わりにはホノサウルスの皮を使用する。覇道の鎧の分解能力によ縫えば終わりの状態にしてから取り出す。

 次にホノサウルスの牙を、大きくて鋭い針の形にしてから。ジトカ草の蔓を細くして束ねた物を糸の代わりして縫い付けていく。皮は硬く、針を通すのはかなりの力技のため、何本も針が折れたがそこは仕方無い。

 後、ジトカ草の蔓をベルトぐらいのサイズにした物を作った。平たくすると強度が落ちそうなので丸くして紐のようになっている。これをベルト代わりにしてずれないようにするのだ。


 出来上がった服を着せてやった。男女共にタンクトップとズボンだ。ジトカ草の蔓は人が暴れても千切れ無い程頑丈だし、ホノサウルスの皮は結構丈夫なのでちょっとした鎧だ。サイズは目算だったがうまくいった。俺の手芸スキルは役にたったようだ。


「ホノサウルスの皮を着るなんて想像もしていませんでした。ありがとうございます」


 黒髪の少女が頭を下げると他の二人も頭を下げた。

 自分の作った物が喜ばれる。嬉しい事である。


「おう。さて、落ち着いた所でちょっと調べさせてくれ」


 そう言って俺は黒髪の子の頭に手をかざし、[理解]を使用する。不思議そうにしていたが、黙って受けてくれた。



個体名:

種族:犬人

称号:【犬人】…[剛力]筋力強化が可能

        [再生]怪我の回復速度を早める事が可能



 ……え?犬なの?狼じゃないの?そして名前は何処行った。無いんだけど。


「えっと。名前は?」

「名前ですか?ありません。私達は群れで動く為、個体名は要りませんので」


 なんと、名前が無いとは。予想外だった。なんだか名前が無いって寂しい感じがするな……そうだ!!


「良かったら俺が付けてもいいか?」

「はい。構いません。しかし、何故ですか?」

「亜人になったんだし、名前は必要だと思うからだ。なにより寂しい感じがするからな」

「そういうものですか……ではお願いします」


 名付ける権利はもらったけれど……どうしよう。考えてなかった。う~ん。髪の色から名前をつけるか。


 黒髪の少女を指差す。


「まずお前はクロナだ」


 赤色の髪の少年に指先を変える。


「次にお前はセキト」


 茶色の髪の少女を最後に指差す。


「それでお前はチャノだ」


 名付け終わると、クロナが頭をさげた。同じく二人も頭を下げる。


「名前を付けて頂き、ありがとうございます」

「ありがとうございます」

「……」


 セキトだけさっきから何も言わないな。無口な奴なのかもしれん。


「おう。気にすんな」


 俺は軽く手を振ってそう返事をした。


 名前を俺が付けたと思うと何だか親近感が湧くな。そうだこのタイミングならいいだろうか。


 俺は少し前から思っていた事を言ってみる事にする。


「あのさ、友達になってくんない?」

「友達……ですか?」

「ああそうだ。俺は友達が欲しいんだ。今は配下だけど、終われば自由だろ?だからその後からは友達になって欲しい」

「ジン様がよろしければ私は勿論構いません。二人もだろ?」


 チャノとセキトが頷く。


「というわけですので。よろしくお願いします」


 三人が微笑んだ。


「あ、あの~」


 気絶しかけていたトトが正常に戻って話かけてきた。


「ん?なんだ?」

「ボーッとしててごめんなんよ。もう平気なんよ」

「そうか。じゃあそろそろ行くか」

「うんなんよ。三人も強くなって心強いから、きっとうまくいくんよ」


 トトには正常に戻ったので刀になってもらった。そして走り出した。そうしながらも、俺は考え事をしていた。


 確かにこいつらは進化して頼もしくなった。けど、進化にも色々あるのか?こいつらは聞いてた人狼の姿とは違うんだが……訊いてみるか。


「あのさ、お前らは犬人に進化したみたいだけど。例の人狼も犬人なのか?」

「いいえ。あいつは人狼です。私達とは違った進化をしたのでしょう」


 進化について他にも訊いてみた。

 進化は状況によって代わり、能力も違ってくるらしい。さらに進化は何度も起きる事があるとか。一度で終わらないなんて楽しみが増えるな。

 教えてもらったお返しとして進化で手に入れた能力の事を教えてやった。称号を手に入れても能力の詳しい情報までは解らないからと嬉しがっていた。


 クロナ達に案内されて、森の中のヘルウルフがいない場所を進む。ヘルウルフの時よりも良くなった嗅覚で場所を把握しているんだとか。お蔭で崖の割れ目まで何事も無く来れた。初めはクロナ達に先に入ってもらって子供達を助けてもらうつもりだったが、進化したのでその作戦は潰れた。なのでこのまま全員で突っ込み、三人が人狼と腹心以外をを止めている間に俺が殺すことになっている。


 覚悟を決めて全員で突っ込む。するとそこには数十匹のヘルウルフ達が崖の段差に座っていた。地面には狐人族の子供達がいる。


「皆いるんよ!!」


 安全を確認したトトが嬉しそうな声をあげた。

 安心して子どもたちから目を離す。そして俺は驚いた。なぜならば、段差の一番上とそのすぐ下に、一匹しかいないはずの人狼が九匹(・・)いたからだ。


「おい、人狼は一匹だけのはずだろ?」


 それにこたえたのはクロナだった。


「おそらくですが……狐人族を食べ続けて進化したのではないでしょうか」


 リーダーの人狼は言っていた。自分が強くなるために必要だと。そして目の前にいる人狼は九匹。おそらく、八匹はリーダーの腹心だ。リーダーは腹心を自分の力として進化させたのだ。


 驚いていると、低い声が聞こえてきた。


「なんだ?貴様らは。逃げ出した狐人族もいるな。俺様の縄張りに入って来やがって。ただですむと思うなよ?」


 どうやらクロナ達が進化したと気づいていないようだ。


 声の主はズシンッと音を立てて俺達と子供達の間に飛び降りた。


 その声の主は他の人狼とは違い、体も一回り大きくて手足も太い。獰猛そうな顔をしながら、こちらを睨みつけてそいつは言い放った。


「皆喜べ!!今から俺がこいつらを殺す。その後、狐人族以外は食っていいぞ!!」


 ヘルウルフ達は喜びの声をあげた。

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