第十一話:崩壊
第一部(仮)完結です!ここまで読んで下さった皆さん、本当にありがとうございました。
「やっぱり、そうだったのか‥‥。」
僅かばかりの希望も断たれて俺はうなだれる。
「データ見たんだろ?なんでここに来た?」
山田さん、もといPrayer(祈る者)は言う。
そう、俺が手に入れた機密事項、それは、Prayer(祈る者)が敵と通じているというもの――。
「信じたかったからだよ!なんでだよ!?組織に誰よりも忠誠を誓ってたあんたが!なんで!?」
俺はすがり付くように言った。
「うるさい!!おまえに俺の気持ちがわかるか!?ずっと、組織に尽くしてきて、なのに、Prayer(祈る者)と罵られる俺の気持ちが!」
悲痛な叫びだった。俺は何も言えずに黙りこむ。しばしの沈黙の後、俺はどうにか声を絞りだすと、言った。
「それでも…それでも、俺は、知ってる。あんたがどれだけ組織のために力を注いできたか。周りのみんなだって、本当はわかってる。ただ、何においても、完璧だったあんたを、ちょっとからかいたかっただけなんだ。」
「ああ、知ってるさ。」
「なら!」
俺はPrayer(祈る者)の言葉が終わるのを待たずに言った。Prayer(祈る者)は続ける。
「けどな、気付いた時期が遅すぎた。俺が組織を裏切ったのは、何も一、二年前の話じゃないんだよ。それにな、長いこと向こうの組織にいると、向こうの言い分もわかって、俺は何を信じればいいのかわからなくなった。聞けば、聞く程、向こうの考えの方がもっともらしい気がしてな。」
「じゃあ、もしかして、俺に情報を洩らしたのはわざとか?」
Prayer(祈る者)は俺の返答に答えず、ふっ、と笑みを零すだけだった。
「なぁ、俺と一緒に来ないか?」
Prayer(祈る者)の言葉に俺は即答した。
「断わる。俺はハナから組織なんか信じちゃいねぇ。だから、あんたみたいに失望もしない。」
「そう言うと思ったよ。セノはおまえを仲間にしたがっていたがな。」
「だから、あんたを誘拐して、それを俺に追わせるようなまどろっこしい真似をしたのか。大体なぁ。わざとらし過ぎんだよ。der Damon(鬼神)とまで呼ばれた男があんな簡単に捕まるなんて。」
俺はため息をついた。
「確かにな。」
そう言ってPrayer(祈る者)は苦笑する。俺は言葉を続けた。
「それに、瀬野の申し出なら尚更だ。あいつとは馬が合わねぇ。」
「それもそうだ。」
俺達は笑い合っていた。空気が昔に戻った気がした。今後は、一生戻ることはないだろうけれど――。
空気が張り詰める。俺達は笑うのをやめた。俺は銃を構えると銃口をPrayer(祈る者)に向けた。
「あんたは俺が殺す。」
Prayer(祈る者)は口角を吊り上げる。それは、相棒としてのそれではなくて、敵としての笑みだった。
「おまえに出来るか?」
俺は、引き金に手をかけた。けれど、それを引くことは叶わなかった。そうしている間にPrayer(祈る者)はヘリに乗り込む。
「今度おまえと会ったら、俺はおまえに容赦しない。だから、おまえも覚悟を決めろ。」
そう言い残すと、俺の待てと言う制止も虚しく、ヘリは夜空へ飛び立った。俺はただ、小さくなっていくそれを見送ることしか出来なかった。
俺は結局なにも守ることは出来なかった。今までみたいに、大切な物はいくらしっかり掴んでいても、手の間から零れ落ちていくんだ。守護神は迷える小羊がいたとしても、手をこまねいて、見守ることしか出来ないのだろうか――。
まずは、読者のみなさん、ここまで、作者の駄文を読んで下さりありがとうございました!ここで、重要なお知らせがあります。実は当初の目的では、ここで物語は終わらせるはずでした。けれども、書いているうちに愛着が湧いてきて、今続きを書くべきか、悩んでいます。取り敢えず、書きたい短篇(これは守護神とは関係ありません。)があるので、それを書きつつ、続きを書くかどうか考えようと思います。なので前書きでは(仮)となっております。作者の気紛れに振り回してしまってすみません。では、またお会いできることを祈りつつ。




