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3. カラフル世界の喪失

『――さん夫婦が殺害された事件は、もうじき時効を迎えようとしています』

 あれから何年経っただろう。気づけば、あの事件が時効になろうとしていた。今日の24時をもって時効になる。そうなれば、もう俺を探すやつはいない。

 電気店に並ぶテレビに映るニュースは当時を振り返って解説している。目撃情報もなく、容疑者の絞り込みさえできなかった。時効になるのも当然だ。たまたま誰にも見られなかったのか、それとも見たことを忘れられたのか。

 店を出て、歩道を歩く。平日の昼間の割には人通りが多い。ふと視界に入ったのはカーブミラー。俺が立っているあたりを映しているのに、俺の姿はない。俺の横を通り過ぎた、重そうな荷物を持った主婦だけが映っている。

 世界は今日も俺を無視する。白黒の世界は終わりが見えず、俺の目覚めもまだ遠い。

 目的地もないまま、歩き出す。道は適当に選ぶ。どこでもいいから、どこか遠くへ行きたかった。誰もいない場所へ、行きたかった。

 ふと教会の前を通りかかった。一瞬だけ、色の洪水のような幻が見えた。思わず足を止めて、教会を眺める。なかなか立派な造りだ。なんだかひどく気になって中に入ってみる。

 聖堂の中には誰もいない。白黒の世界でもおごそかな雰囲気があった。また、幻が見える。多くの人が見守る中、白いタキシードを着た俺が、白いドレスを着た知らない女の人と一緒にこの教会の中を歩いている。


――ああ、どうして。


 その幻のせいで、わかってしまった。もう俺はあの世界に戻れないんだと。

 違う、ほんとはずっと前からわかっていた。ただ目を逸らしていただけで。いつかは戻れると夢を見ていたかったんだ。

 いつだって俺は逃げてばかりだった。あの幻の中、幸せそうに笑っていた「俺」はきっと、あの時逃げなかった俺。両親を殺さなかったもう一人の俺なんだ。


 エヴェレット、ドイッチェ、あんたらの言い分は正しかったのかもしれない。

 あの幻の中にいた「俺」は、あの時俺と違う選択をした、パラレルワールドの「俺」なんだ。

やっぱり昨日は無理でした。でも今週中には完結できてよかったです。

初めての連載がこんな鬱展開とか…自分にドン引きだ。


なお、ヒュー・エヴェレットはアメリカの物理学者。可能性の数だけ世界が存在し、その一つ一つを選択しながら過ごしている、という「多世界解釈」を説いた人です。いわゆるパラレルワールドってやつ。


タイムトラベルを扱う物語でよく問題になるのがタイムパラドックス。タイムトラベルに伴って起きる時間的矛盾のこと。この話で問題になっているのは「親殺しのパラドックス」。未来から来た人間が自分を産む前の親を殺したら、もちろん自分は産まれない。そうなると親を殺す人間がいなくなるから、親が死ぬことはない、という矛盾です。


この親殺しのパラドックス解決に前述の多世界解釈を用いたのが、イギリスの物理学者、ディビット・ドイッチェです。過去で自分の親を殺した時点で、自分がいない世界に分岐すると考えれば矛盾しません。その代わり、過去を変えたように見えても、変わった世界と何も変わっていない世界が平行して存在することになります。


説明がわかりにくくてすみません;

なにはともあれ、完結ってことで、ここまで付き合ってくれてありがとうございました。

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