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孤高の天才  作者: 深水晶
第三部 波瀾の幕開け
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第六十五話 無駄

「これからどうする?」

 ラダーが仏頂面で言った。

「さて、どうしようか」

 私が頷くと、ラダーは嫌そうな顔をした。

「また谷崎のオッサンの迎えを待つなんて言われたら、俺はキレるぜ?」

「嫌なのか?」

 訊くと、ラダーは深いため息をついた。

「状況考えろよ? これ以上、誰かの助けを待って無駄に時間を過ごす暇があるなら、自分で動いた方が早いと思わねぇ? 逃げるだけなら、まだ可能性はある。俺は嫌だぜ。何もせず、理由も良く判らないまま、抵抗もせずに殺されたり危害受けたりするのはな。黙って他人の助けを求める性分じゃない。悪あがきでも、何もしないよりマシだ。俺はあんたほど諦め良くないんだ」

 苦虫を噛み潰した顔でラダーは言った。

「……ラダー」

「なんだ?」

「いざとなったら、お前一人でも逃げろ。お前だけなら逃げられるだろう」

 ラダーは現在の技術力ではほとんど無敵のロボットなのだから。

「はぁ?」

 ラダーは眉間に深い皺を寄せ、嫌そうな顔で私を睨み付けた。

「おい、リック、あんたふざけてんのか?」

「どういう意味だ」

「あんたを見捨てる気なら、最初から助けたりしねぇんだよ。本当ふざけんな。やっても良いなら、マジに殴り殺してやりてぇよ。あんた、本当に人の話を聞かない男だな。俺がなんでこんなに腹立てなきゃならないんだよ。あんたはいけしゃあしゃあとシラケた顔してやがるのに。本当ムカつく」

 ラダーは苛々と吐き捨てた。

「すまん」

 私は頭を下げて謝る。彼が何を怒っているのかいまいち良く理解できなかったが、私の言動に腹を立てていることだけは間違いなかったから。

「意味も判ってねぇくせに謝るな!」

 ラダーに怒鳴りつけられた。

「申し訳ない」

「……あー、もう、良いよ。あんたが信じらんねーバカなのは良く判った。もうあんたには何も期待しねぇよ。言葉を喋って俺より年上に見える分、すげー質悪いけど、仕方ねぇもんな。何を言ってもムダだし」

「無駄?」

「そうだろ。だからもう良いよ。あんたがどうでも良いと思ってる事を、俺一人グチグチ言ってんの、自分でも嫌になってきたからな」

 そう言ってラダーはため息をついた。

「私のせいなのか?」

「だから、もう良いって。ところで、俺は体力ありあまってて健康だから平気だけど、あんた休まなくて大丈夫なのか、リック。あんまり体力ある方じゃないだろ。しょっちゅう青い顔して」

「……私はそういうイメージなのか?」

「少なくとも、筋骨逞しいとか、頑健だとか、健康優良なんてのには縁遠いだろ?」

「それなりに健康だと思っているのだが」

「……誰もそうは思わねぇよ。大酒飲みで、アル中で、ブランデーオタクだし。だから、研究室の連中だってあんたを心配してんじゃねぇか」

「別にアルコール中毒ではないぞ」

「あんたのは尋常じゃない飲み方なんだよ。肝臓かすい臓壊しても知らねぇぞ」

「安心しろ。それなりに節制はしている」

「……嘘くせぇよ」

 ラダーの言葉にため息をついた。

「とりあえず距離をある程度稼いだら、何処かで仮眠取って、朝になったらアシを確保しようぜ。無理は禁物だぜ、イイトシなんだから」

「……お前に比べたら、軟弱に見えるだろうが、そもそもお前を比較対象にすること事態間違ってる気がするぞ。お前より体力・筋力・身体能力がある人間なんて、この世にいないだろう」

「ひでぇな。俺は化物かよ?」

 一瞬ギクリとした。慌てて取り繕おうとしたが、私の動揺を即座に感知したラダーが、白い目で私を見た。

「……うっわ、そういう目で俺を見てたのかよ。ひっでー。俺はこう見えてナイーブなんだぜ?」

「知っている。すまん」

「そこで本気で謝られる方がダメージでかくて凹むんだけど!」

 ラダーはムッとして強い口調で言った。

「……すまん」

 どう言えば良いのか判らない。ついまた謝ってしまった。

「……も、良いよ。ヒーローでも化物でも。深く考えねーことにする。ムカつくから」

「すまん」

「だから謝るなって! 本当、俺の神経逆撫でするのが得意だな。とりあえず過度の期待されなきゃどうだって良いよ。本当はどうだって良くないけど、我慢する」

「……迷惑かけている」

「そう思うなら、自重しろよ。あんたの言動は、滅茶苦茶で無謀でとんでもねぇよ。そのくせ本人だけは平然としてるんだから、腹立てるだけ損した気分になる」

「すまん」

 謝ると、ラダーは無言で私を見た。

「次に謝ったりしたら、死なない程度に首を絞めて気絶させてやる」

 本気の目つきだった。

そろそろクライマックス近くなってきました。

次回アクションあり。

やたらカースに力入っているのは、お気に入りキャラだからです。

主人公エリックは実はあまり好きになれないので、眼鏡キャラにしてみました(眼鏡好きなので、少しは愛着わくだろうと期待して)。

しかし、やたら言動がオッサンくさいので、時折どうしたもんかなと思います(そういうキャラに設定したからですが)。

谷崎の性格についてはほとんど趣味な気がします。

谷崎とライオネルのコンビは、エリックとカースのやり取りの次に、書いてて楽しいです。


ところでジェレミー可哀想だなと最近思っています(出番ない)。


恋愛要素は非常に薄いですが、メインではなく付加的ですが一応多少はあります。

研究室メンバーも誰と誰が、とか考えて書いています。

その辺の話はまだまだ先になりますが。

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