魔女魔人編「七不思議」
学園には七不思議が付きものだ。そして、その七不思議にはつまらないオチが付いてくる。それが那由他の考え方だ。
しかし残念な事にこの学園にはそんな物は無かった。那由他はそれが納得がいかなかった。そして納得がいかないあまり、唐突に廊下の真ん中で、大勢の生徒がいる中、それも大声で、こんな事を言い出した。
「七不思議が無いのなら作れば良いのでは!」
その結果、散々悩んだ果て、七不思議を作る事が……出来なかった。本当にネタが何も無かったのだ。
しかし、諦め切れない那由他はある人物に助力を求める事にする。「善は急げ~。」などと意味のわからない事を呟きながら、ある人物の居る部屋へ駆け出し、その部屋の片開き扉を恐る恐る開ける。そしてその扉に隠れる様な姿勢で小さな顔だけをそっと出すと、
「断末魔様~。実はですね――」
「却下」
「ひ、ひどい~。お~いおい、あぁひどい。私まだ何も言って無いのに。迷える乙女がこんなにも悩んでいるのに~。上司ならば話ぐらい聞いてくれても良いのに~。あぁ~、私の憧れた断末魔様はどこに行ったの~?」
いきなり女座りしながら片手を口元に当て嘘泣きを始める那由他。
しかし、それに対して断末魔は興味を見せるどころか全然相手にしてくれない。
しつこく嘘泣きを続けるがいい加減、那由他も飽きたのか、超上目使いで誘惑する作戦へと変更する。
「断末魔様~」
「きもい。却下」
自分の全力を軽々しく否定され、本気で傷つく那由他。四つん這いになり、周りの空気を青色に染め上げていた。
断末魔もさすがにそれには同情したのか、話ぐらいは聞いてあげる事にする。
「えへへ~。ありがとうございます、断末魔様~。やっぱりツンデレですね……ふふふふふふ……」
「死にてェのか?」
「嘘ですよ~、多分。ってそんな事より聞いてくださいよ~。そういやこの学園って七不思議と呼ばれる物が無いですよね。でしたら私と一緒に探しませんか?」
「お前……どうせ、変なメディアの影響だろうォ? ここ最近、学園の七不思議を追う探偵物のドラマが放送されたって聞いた事があんだけどよォ」
「ち、違いますよ! わ、私がそんな物に影響されるはずがありません! あ、もし断末魔様のその話が本当なら、他の生徒たちが喜ぶかも知れませんよ。ね、だから、探しましょうよ。これも人の上に立つ者の仕事ですよ~」
那由他に腕を引っ張られ半ば強引に部屋から連れ出される断末魔。
彼は仕方なく、協力してあげる事にした。
そして学園寮の廊下を、無理矢理、腕を引っ張られながら歩いていると、那由他より1サイズ大きい少女と鉢合わせる。
非禁禁忌を捕まえる危険な任務に自らつき、それに失敗し断末魔にひどく説教されたあの少女だ。そしてその少女はぶつかりそうになった那由他を見ると、気が抜けたような声で、
「あ、あなたは……那由他ちゃん? あ、断末魔様、おはよう。子守り?」
「子守りじゃねェよ。あとお前、最近、全然敬語使わなくなったなァ? 敬意はねェのか?」
「え? だってこの子も会話の半分くらいしか敬語、使って無い訳だし、私も良いかな~って。それに私だけ敬語ってなんだか納得いかないし。あ、もちろん敬意はありますよ、多分」
「何で俺は部下に恵まれないんだよォォォォォ!!」
断末魔が『断末魔』の様な叫び声を上げ、撃沈していると那由他はそれを半ば無視するように少女に話しかける。
「あ、葉乃愛さん。今から私達、七不思議探しに行くんですけどよかったらご一緒しますか?」
「七不思議? そんなの、昨日あたりからブームを呼んでるわよ。まぁ、どこぞの変なメディアに影響されたどこぞの変態どもの仕業でしょ」
「そうなんですか! もうすでに私以外の人が七不思議を作っていたんですね~。ってどこぞの変態どもって……。ま、まぁ気を取り直してその七不思議を解明していきましょう。ね、断末魔様~」
それに対して断末魔の答えは、
「何で俺は部下に恵まれないんだよォ……」
今回からは非禁禁忌と断末魔様、二人の主人公が登場します。
ちょっと長めになるかも……
それにしても魔法名考えるのが楽しいが疲れる……