断末魔短編『THOD』
「もう加減はしねェ。俺の本気をぶち込んでやる。そして俺が断末魔と呼ばれる、真の理由をその体に刻み込んでやるよ。なァに、遠慮はいらねェよ。俺を本気にさせた褒美だ、受け取れ」
断末魔がそう言い終わると校舎の外で優雅に浮いているゴリラの様な体格をした男は再び手の直線状と元生徒会室に居る断末魔を合わせる。
そして再び、何の予備動作もなしに手から強烈に回転する空気の刃が放たれる。
しかし今までと違い速度がかなり遅い、恐らく断末魔も何かの攻撃を仕掛けて来ると踏んで、速度を捨て威力を格段に上げたのだろう。そしてそれに対して断末魔は、
「THOD『断末魔』ァァァァァ」
狂気の様な声を上げ、両手を前に突き出す。その反動で、体が前へ反れる。
すると次の瞬間、断末魔の前に黒き門が現れる。恐らくこれも魔法陣だろうが、普通の魔法陣と容姿がかけ離れていて、どう見ても黒い門にしか見えない。
その黒き門は無数の鎖に縛られていて、中から何かが抜け出そうとしているのか、ガタガタと大きく震え、鎖同時がぶつかり鉄の音が鳴り響く。
そして、空気の刃がその門に触れると両開きの門が唐突に開き、中からムンクの様に悲鳴を上げる黒い髑髏が飛び出す。門に触れた空気の刃を真っ二つにし、その勢いを落とす事無く、叫びを上げながらひたすら前へ進んで行く。
そしてその先にはゴリラの様な体格をした男が、この髑髏を防げるとでも思ったのか腕を交差し待ち構えていた。
「じゃァな。次、会う時は『堕落者』からは卒業しとけよ」
黒き髑髏が大きな口を開け男に噛り付き、形を崩した髑髏が黒き霧となり男を包みこむ。その黒き霧は男を包み込んだまま、ゆっくりと地と降りて行き、完全に地に着いた時、その霧は風に流されて行く。
その様子をガラスが割れた枠しかない窓から見届けた断末魔は、衰弱した女の子を抱え、この部屋を後にした。
後、気を失った無傷の男は他の生徒に見つけられ、病院へと運ばれて行った。
~事後談~
「断末魔様~」
校舎の数だけ存在する屋上に、一つだけ置いてあるベンチに相も変わらず横たわっている断末魔。
そんな彼を見つけると相も変わらず暑さに負けた様な情けない声をあげ、ひょこひょこと近づく女の子。それに対して、断末魔は相も変わらずうんざりとしたような声で返事する。
「あんのんなァ。やっぱりお前、俺に恨みであんのかァ?」
「ここで聞き捨てならぬ耳寄り情報があります。断末魔様の倒した男ですが、どうやら記憶を失っており、真面目に勉強に励んでいるようです」
「そォかい。それを俺に言ってどうするつもりなんだァ? まさか、俺がそれを聞いて喜ぶとでも思ってんのかァ?」
「はい。そんな態度を取りながらも心の中では喜んでいるんですよね。断末魔様はツンデレですから。……ツンデレ断末魔様……ふふふふふふ……」
「殺す」
そんなかんだで、追いかけっこラウンド2を始めてしまった2人。そして走り出して早々、ニタニタとした笑みを浮かべながら楽しそうに走っている女の子がまたもや、唐突に倒れてしまった。
今度も特にわざとでは無いらしく、顔面から衝突した痛みを和らげるためにうつ伏せの状態で顔を猛烈に擦りまくっている。
そんな女の子の前で断末魔は屈むと、手を差し伸べ、
「そォいや、お前ェなんて名前なんだァ?」
女の子はその手を取り、細い身体つきしている割には男らしい力で起こして貰うと、改めて名前を聞かれたせいか少し頬を染め、数秒躊躇った後、吹っ切れた様に
「ここで聞き捨てならぬ耳寄り情報があります。男女問わず誰にでもフレンドリーな私、那由他Manyですが、残念ながら私の憧れは非禁禁忌と断末魔様だけです。」
自分で言っときながら顔を真っ赤に染めると断末魔をポカポカと数回叩いた後、どこかへ走り去ってしまった。
取り残された断末魔は誰も居ない屋上で独り言を呟く。
「なんだァ、あいつはァ。……憧れかァ。まァ、努力しただけはあるってェこったァ」
これで断末魔短編は終了です。
一応主人公は、あの青年であり、
断末魔であるので良い紹介になったと思います^^
次回からは両主人公が出る話を書きたいなと思います。
断末魔様はツンデレですね……ふふふふふふ
キャラ紹介
那由他 Many
性別:女
年齢:秘密
性格:自称個性的・他称変態
備考:那由他の入学の時、遅刻して走っていたら誰かにぶつかる。
それが断末魔でそれが断末魔との初めての出会い。
断末魔との関係は学園では先輩と後輩で、
組織では上司と部下。という関係。
代表台詞:「ここで聞き捨てならぬ耳寄り情報があります。」
代表魔法:不明