選ばれし者編「疑問の関係。不信な結果」
断末魔が目を覚ましたのは日が暮れてからだった。
重い瞼を開け、星が光る空をぼんやりと眺めてから上半身を起こす。
そして真っ先に目に入ったのは、既に目を覚ましていた葉乃愛だった。
断末魔は三角座りして縮こまっている葉乃愛に声を掛ける。
「なんで俺達は生きてるんだァ……?」
葉乃愛は自分の肩に顔を預けながら、地面から断末魔へ視線を移して言った。
「生きてるどころか、傷一つないわよ」
それを言われて断末魔は自分の体を確認する。
無くなったはずの手足を触り、そこで両目がしっかり見えている事に気付いた。
そしてもう一つの疑問が浮かぶ。
「傷が治っているのも不思議だがァ……那由多の奴、どこに行ったァ?」
「分からない。私が目を覚ました時にはもう居なかった」
「そうかァ……。まぁ消えるってんなら俺はそれで構わねェがな」
葉乃愛は立ち上がると、低い声で言う。
「構わなくない。絶対見つけて……殺す」
異様な雰囲気な葉乃愛に、断末魔は特に疑問を持つ事も無く普通に聞いた。
「お前のその殺意はどこから来るんだァ?」
そこで葉乃愛はしばらく黙ると、逆に不思議そうな顔を断末魔に向けて返事をする。
「……分からない。でも確かな殺意は感じる。でもあんただってグループのメンバーが消えてそれで良いってほんとに思ってるの? いつものあんたなら探しに行くって言うでしょ?」
「……確かにそうだァ。探しに行っても良いんだが……お前、殺そうとするんだろォ?」
「もちろん。だから探すの手伝ってよ、ねぇ断末魔様」
葉乃愛は笑顔ですり寄りながら言う。
断末魔も立ち上がると頭を掻きながら返事をした。
「ちっ、都合が良い奴め。だがァ俺もきちんと話をしねェとはなと思う。良いぜ、探してやるよォ。もっともあいつの返答次第では殺させる訳には行かねェがなァ」
「その時は一緒に倒して……」
葉乃愛はそこで言葉を濁らせると、断末魔の顔を見て続けた。
「ところで私達、気を失う前って何してたっけ?」
「……那由多と……戦ってたかァ? 思い出せねェな」
「私達の関係ってどんな感じ?」
「グループの一員だろォ?」
「じゃなくて私とあんたの関係。確かにグループの一員はそうなんだけど」
「あァ……? 友達……じゃねェなァ……?」
「そう、もっと近かった気がするけど認めたくないんだよねー。無理矢理仲良くさせられているような気がして」
「そんな事はどうでもいいだろォ。どちらにせよ当ても無いんだァ、帰るぞ」
「……そうね」