選ばれし者編「始まり」
断末魔は外に居た。校舎のすぐ近くのだだっ広い庭で、気が付けば仲間のアンノウンも居なく、一人仰向けの状態で絶望としていた。
先程までとは言わないがそれでもやっぱり雨は酷く、びしょ濡れの白髪が頬にぴったりとくっ付いている。
断末魔はそのまま意気消沈とした顔のまま、近くのベンチに腰掛けた。そして防水機能を備えた携帯電話を確認する。
「緊急会議ィ? それも強制……だとォ?」
断末魔は一瞬、腰を浮かせ目的の会議に向かおうとする。が、すぐに諦めてしまい、豪快にベンチに寝転んでしまう。
「あァ、ほんとどうでもでもいいわァ」
そしてゆっくりと瞼を閉じる。
すると青年らしき男の声が、断末魔の耳に入った。
「おいおい……。強制だっつってんだろ……。ほらさっさと行くぞ」
「あァ? お前はァ……?」
ナンバー1だった。ナンバー1はそのまま断末魔の手首を掴むと、そのまま空間の歪みへと姿を消した。
そしてすぐに断末魔の目に入ったのが、例の会議室だった。さらにどう言う訳か、8を除いた1から9全てのナンバー持ちがそこに集結している。
「おいおい……どういう事だァ……?」
断末魔はこの異例の状態に率直な感想を漏らしてしまう。
そんな中、ナンバー1に座れと指示され、断末魔が一つだけあいている『4』の数字が描かれた椅子に座る事によって晴れて全員が終結した。
「揃ったか。では会議を始めよう」
ナンバー2が仕切るようにそう言った。そして続けて話す。
「以前、君たちも聞いていたと思うが、魔人の復活の噂がどうやら本物みたいでな。私共はその異例の状態故にここに呼び出されたのだ。そして残念な報告がある。……見て分かるようにナンバー8が魔人による襲撃に遭い、重傷を負ってしまった。まぁ、もっとも襲撃に遭ったのは彼女だけで無く、そこに居るナンバー4は命辛々生き延びる事が出来たようだ。非常に喜ばしい事だよ」
ナンバー2は区切るようにそこで話を中断させると、拳を握り潰す断末魔に向けて笑みを浮かべた。そして続きを話し始める。
「簡潔に言うが、私共に与えられた仕事は一つ。一人でも多くの人類を救う事。幸いにも魔人は5人だと確認している。だが、一人一人非常に強力な実力を持っているため、戦闘は避けるように。そして一般市民を逃がす事を最優先に行動するんだ。一桁台のナンバー持ちには担当地域が割り振られている。ナンバーの数字が小さいほど、割り当てられている地域が広くなっている。故に上位のナンバーは少し苦労すると思うが、罪無き市民の為、お互い頑張ろうではないか。では詳細は文面にて送らせて貰うので、これで解散させて貰おうか」
そこへ断末魔が猛抗議する。
「おいおいィ。これだけの人数を集めて……それも半ば無理矢理に連れてこられて、お話とやらはそれで終わりかァ? まさかそんなはずねェよなァ?」
それに対してナンバー2がすぐに反論する。
「事の大きさを貴様らに実感させれれば、それで良かったんだ。最初から文面で送った所で、貴様らが真面目に取り込むとは思えないものでな。それに私は忙しい。貴様らの10倍以上の地域の面倒を見なければならないものでね。それではこれで失敬させてもらうよ」
ナンバー2が椅子から降りて、出口の役割を持つ暖炉へと消えていった。それを見た他のメンバーも各々消えていく。
残ったナンバー1に断末魔は話しかけた。
「あんた、例の魔人と戦っほぼ無傷で生き残れたのかァ?」
「まぁな。俺の事はどうでもいいんだよ。そんな事よりお前さんの友達、退院したみたいだぞ。お前の良く居る保健室辺りにでもいるんじゃないか」
断末魔は舌打ちだけをすると駆け出した。
最後まで残されてしまったナンバー1も空間へと姿を消した。