魔女魔人編「人間とは異なる人」
見せ付けるように露出された男らしい黒い肌の上半身。下半身は、黄色と淡い緑色と青紫色のサルエルパンツ。謎の人物は意外にも奇抜な服装だった。
「人間如きの相手はするつもりは無かったんだがぁ……思ったより成長してるみたいでなぁ。いっちょ遊んでやるかぁ?」
その言葉を聴いた途端、断末魔と泥まみれのアンノウンは、本格的な構えをとった。
アンノウンは、飛び跳ねるように断末魔の後ろまで下がり、断末魔はその場で謎の人物を警戒する。
「Re:Union『再結合』」
「CERN『axion』」
そしてほぼ同時に詠唱される魔法名。
断末魔の足元に現れた黒き門が開かれ、引きずり出される大きな鎌。柄には色取り取りの宝石が埋め込まれおり、鎖とその鎖に繋がれた懐中時計が揺れている。さらには刃を隠すように白い雷に覆われいた。
同時に、アンノウンは手を天に翳し、一筋の光を発生させる。やがてその光は徐々に細くなって行き、いつのまにかに手に握られている物の正体を少しずつ明かしていく。
それは、本だった。宙に浮く事以外は、なんの変哲も無い分厚い本だった。
「なんだぁ? お前たちもその気だったのかぁ? だったら、気合いれてやらねーとなぁ?」
謎の人物は、足を高らかに上げると、地面を強く蹴りつける。
すると地面はグロテスクにうねりを上げ、大量の土が波の如く、それも謎の人物を中心に波紋のように巻き上げられ、断末魔たちを襲う。
それに逸早く反応したのがアンノウンだった。
アンノウンは本を投げ、そのまま断末魔の前まで誘導すると、両手を大きく開く。すると本は、それに呼応するように巨大化し、目の前の断末魔はもちろん、その場から少し離れたアンノウンまでも優しく守り抜いたのだ。
その様子に対して、謎の人物は拍手をしながら、それも楽しそうに語り掛ける。恐直に関心しているのだろう。
「いやぁ。すごいねぇ。人間はそこまで自由に魔法を使いこなせるようになったんだなぁ? これから精進しろよぉ? お手本をみせてやるからさぁ」
そう言って断末魔の方へ、足場の悪い中、駆け抜ける。
「お手本をみせてやるからさぁ(キリッ」
と言っといて、駆け抜けていくなぞの人物。
私は、そんな彼をそこそこお気に入りです。そこそこです。