魔女魔人編「おぞましい何か」
右手首から手の甲周辺を包帯で隠している青年は、闇がひたすら続く長い廊下を歩いていた。青年の着ている服は黒が基調の為、それが保護色となり、この場所に無駄に良く馴染んでいる。
当然だが、青年はこの廊下がどこに向かっているのか分かっているらしく、常闇だと言うのに、その歩みからは不安や恐怖といったものは一切感じさせない。それどころか、馴れによる余裕までもを感じさせる。この場所は青年にとって、安堵を与えてくれる場所なのだろう。
それから幾分歩いた先に、青年はステンドグラスで出来た大きな扉に直面した。そのステンドグラスを良く見ると、女の人が着物や花で綺麗に彩られている。そして、その大きな大きなステンドグラスの扉の先からは微かな光が漏れており、青年を優しく包み込んでいた。
「……あいつはこの世界を我が子のように愛してるみたいだ。けどそれは俺も同じ事。だったら、俺は、俺の出来る事をするまでだ」
青年は目を瞑り大きく頷く。自らを納得させたのだろう。そして、急に険しい顔付きに変化したかと思えば、目の前の扉に手を触れだした。
それと同時に扉全体を覆うような大きな魔法陣が現れ、地響きのような、また雷のような、けたたましい音が鳴り響き、大きな扉が開放される。
青年は、扉の先を紅い目で凝視しながら再び歩みを再開する……が、さっきまでとは違いその時の青年の顔には余裕は無かった。
非禁禁忌と称される彼に、険しい顔をさせるようなおぞましい何かが、この先にはあるのだろう……
目の前の扉に手を触れだした……って、変じゃないですか?
まぁ、いいや。