魔女魔人編「因縁尽いた出会い」
「ナンダァ? クソガキ。気安ク俺ノ名ヲ、クチニ、シテンジャネェゾォ?! 殺スゼェ?」
そう言って、那由他の蟀谷を片手で掴み、持ち上げる。
那由他はあまりの恐怖に、声にならない叫びを上げ、断末魔の手を必死に握る。頭蓋骨が割れるような強烈な痛みのあまり、何の思考も出来ない。那由他はその回らない思考の中、断末魔が『断末魔』と呼ばれる理由を自分の体で体感する事になってしまった。
その後ろで、恐怖のあまり、涙を流す葉乃愛が那由他を助けようと、破れかぶれになり、ヒステリック気味に抗議する。
「あ、あんた、何やってのよ!! や、止めなさいよ!! あ、アンノウンはどうしたのよ!! あんたと一緒に居たじゃない!!」
断末魔は片手で掴んでいた那由他を地面に叩き付ける様に放り捨て、今度は葉乃愛の腹部を押し、奥の壁に叩き付ける。ドシンッ……と、人の体から鳴ったとは思われない、重く深い音が鳴り響き、再び校舎全体を大きく揺らす。
その衝撃で壁にひびが入り、葉乃愛の体と地面に、壁の破片が落ちてくる。
葉乃愛の体から力が抜け、ぐったりと手足が垂れる。
「力無キ者ハ哀レダナァ……! ギャハ! アギャハハァ……! ヤッパリ一寸ノ虫ニハ所詮、一寸ノ魂シカ宿ラネェナ! オイ、ナントカ言ッタラ、ドウダァ?! オイ、聞イテンノカァ?! ゴミヨォ!!」
断末魔は、魂が抜けたかのように力無い葉乃愛を、そのまま壁を破壊ながら地面に捻じ伏せ、小さな体を何度も蹴り潰す。
そのたびに校舎が揺れ、地面にひびが入り、くもの巣のようにひびを拡大していく。
「もう……! やめて! 断末魔様! お願いします!」
辛うじて意識が残っていた那由他は、何度も蹴り潰される葉乃愛を助けようと、倒れたまま止めに入る。
その声を聞き、断末魔の動きが、ピタッと停止し、しばらく静止する。
「断末魔様……?」
自分の声が届き、断末魔の理性を取り戻せたのかと、安堵する那由他。しかしそれは間違いだった。今の断末魔に、那由他の声が届くはずも無かったのだ。そう、『那由他』の声が届くはずも無かったのだ。
断末魔は、首だけを那由他に向けると、那由他をギロギロと睨みつける。
「ひっ!」
その恐怖に那由他は、大粒の涙をボロボロと滝の様に流し、硬直してしまう。
「オイ……。ドコノ、ドナタカ、存ジ上ゲマセンガ、気安ク俺ノ名ヲ、クチニスルナ、ッテ言ワナカッタカァ?! アァ!? 何様ノツモリダァ?! オイ、クソガキィ!!」
断末魔が、逃げる力も失い倒れたままの那由他に、じりじりと近づいて行く。
その遅い一歩一歩が、那由他を恐怖と絶望の渦の中心へと、引きずりこんで行き、那由他の顔から血の気を引かせていく。
そんな中、その様子を見るに見かねた非禁禁忌が現れる。
「……それくらいにしたらどうだ? 断末魔。もう、周囲の人に迷惑をかけるな」
主人公同士の大切な戦いなのに、私はスランプですorz