魔女魔人編「卒業確定者」
学園と言う名の土地内に、たくさんある学び舎の内の一つに非禁禁忌は居た。
何かを探しているらしく、視線は一定のものを見つめていない。たえずキョロキョロと、眼球を忙しく動かし、手当たり次第に何かを見つめて行く。
そして目当ての、ものを見つける事が出来ないと校舎を移動すると言う事を繰り返していた。
「……ここもはずれか……」
尋常では無い速度で次々に校舎を変えて行く非禁禁忌。
その速度からは非禁禁忌がただ者では無いと言う事が読みとれる。そしてもっと不思議な事に非禁禁忌は誰とも出会って居なかった。つい今までは。
「学園内をこそこそ這い回る不法侵入者が居るかと思えば、お前だったのか」
何気ない渡り廊下を歩いていると突然、後ろから声を掛けられる。
その渡り廊下には、なぜか生徒の姿は全く見えず、非禁禁忌と声の主の2人しか居ない。恐らく非禁禁忌の力だろう。
そんな不思議な空間で2人だけの会話が進められていく。
「……お前は? なぜ俺と出会う事が出来た? ただの魔法使いが俺と出会う事が出来るとも思えない。何者だ?」
「あぁ、説明がいちいちめんどくせぇ。卒業確定者、学園のナンバー1。こんだけ言ってわからねんだったら勝手に推理してろ。んでぇ、俺が言いたい事はそんな事じゃないって話。……お前、非禁禁忌だろ? 世間を騒がす裏切り者として有名だからな
、間違えるはずが無い。んでぇ、肝心なのがそんなお方がなぜこんな所に居らっしゃるんだって事。あ、一応言っとくが逃げようなんて思うなよ? 俺も一応仕事でやってるんでねぇ。さぁ、答えて貰おうか?」
自らをナンバー1、そして卒業確定者を名乗った男は話しながら渡り廊下の窓に近づき、窓を全開に開ける。外から涼しげな風が吹きナンバー1と非禁禁忌を優しく包み込む。
ちなみに卒業確定者とは、すでに卒業に必要な条件を満たした者の事である。つまりあとは卒業式が訪れるのを持つだけで卒業が出来る魔法使いと言う事だ。
「……魔女、魔人を追いかけている。それだけだ。あと一応言っとくが、邪魔しようと言うのなら容赦はしない」
「こえぇ回答だな。まぁ、お前の目的を邪魔しようって気は微塵も無い。魔人、魔女の事については興味が無いんでね。仕事ってのも適当にやってりゃあいい。けどなぁ、お前には興味がある。あ、別に変な意味じゃねぇぞ? んまぁ、簡単な話、俺はお前に攻撃を仕掛ける事にした。一応、理由を述べるとしたら、暇だからか? 自慢じゃねぇが俺の力はこの学園内では断トツでねぇ、ろくに戦える奴がいねぇって訳。んじゃ、行くぜ?」
そう言ってすぐ、ナンバー1が窓から仰向けで落ちて行く。もし他に生徒がいたなら数名の生徒が窓に近づき下の様子を窺っただろう。
しかしこの空間には非禁禁忌とナンバー1の2人だけしか居ない。つまり窓から下の様子を窺う者など居ないと言う事だ。
今も誰も居ない窓からは優しげな風が吹いている。
そんな中、非禁禁忌は廊下に中心でただ立っていた。
「少しくらい心配してくれても、良いじゃねぇか」
またもや非禁禁忌の背後からナンバー1の声が囁くように聞こえる。
それと同時に非禁禁忌は背中を蹴られたらしく、窓は愚か、コンクリートで作られた壁をも、破壊しながら外へと放出される。
「悪いなぁ。俺は空間を操る魔法を得意としてるから、こんな事も出来てしまう訳よ」
ズボンのポケットに手を入れながら余裕をかましてるナンバー1。
次の瞬間、校舎全体が揺れ、校舎のあちこちからコンクリートにヒビがいく嫌な音と共に天井や壁から埃が落ちてくる。
「まさかな……」
あとがき
久しぶりの主人公の登場です。
そして、学園のナンバー1のお出ましです。
何しに出てきたんでしょうね^^;
まぁ、一応暇つぶしと言う事になっていますが……
と言うより、ナンバー1なのに損な役ですね^^;
まぁ、可哀想なので彼はちょくちょく登場させたいなと思います。