魔女魔人編「緊急集会」
「な、何で君たちは泥棒なんてするんだよぉ!」
その一言に断末魔の動きが止まる。
「泥棒だとォ?」
髑髏が霧の様に消え去り、力を使い果たした少女はぺたんと座りこんでしまい、そのまま倒れ込む。
断末魔は地に綺麗に着地すると、少女に駆け寄る。そしてその様子を引戸の隙間から覗いていた2人も断末魔に駆け寄る。
那由他は泣いていた事を必死に隠そうとしているのか、走りながら目の周りを擦り涙を拭くが、目の周りが赤く腫れているので泣いていた事が一目でわかる。
断末魔はその事を指摘はしなかったし、自分を蹴り飛ばした事も話題に出さなかった。恐らくその事で一番傷ついているのは、断末魔では無く2人でだし 、那由他に至っては、再び罪悪感でいつ泣き出してもおかしくない状態だ。
断末魔はその事を踏まえ、今にも殴り飛ばしてやりたい所だがその拳を必死に抑えている。
これが彼なりの優しさなのだろう。
その時、断末魔の携帯電話に一通のメールが届き、初期設定の呼び出し音が周囲に鳴り響く。
断末魔は普段鳴らない携帯電話に疑心を抱きながら、折り畳み式携帯電話を開ける。そこには断末魔が所属している世界の平和と治安維持を目的とした組織からの緊急メールが届いていた。
内容は緊急の集会が開かれ、そこに断末魔を招待すると言った物だ。
「あん? 緊急集会のお知らせだとォ? ちっ、こんな時に……お前達には来ていないのかァ?」
「なにも……」
組織の上層部である断末魔にしかメールが届いていないと言う事は、かなり大きな問題らしい。少なくとも、下層部には言えない様な危険な事には違いない。
断末魔は2人に気を失っている少女を保健室に連れて行く様に命じると、しぶしぶ集会を行う教室へと向かう。
組織の話なのに集会の場所がなぜ、教室なのかと言うと、この組織の主催が学園だからだ。そして組織と言っても、そのほとんどは生徒で構成されていると言うのも理由だろう。
そんな集会へ向かっているその途中、廊下を歩いていると生徒達が断末魔の顔を異様に凝視している事に気付く。
「(あァ? 顔になんかついてんのかァ?)」
そんな事を思い、手を顔に当ててみると普段の生活では味わえそうにない感触がする。
手を確認してみると、そこには黒くなりかけた血がべっとりと付着していた。
「あァ。これかァ。ちっ、たかが血くらいで騒ぐなっての」
そんな事を思いながら、断末魔は現生徒会室へと到達する。
しかしその部屋には誰も居なく、とても今から緊急の会議が行われる様には見えない。
だが、断末魔はその事には何一つうろたえずに、部屋の端にある、人、一人ぐらいは簡単に入りそうな大きな暖炉の前へ向かう。
実は昨日作られたばかりの七不思議の1つであったりする。
そんな暖炉に断末魔は足を踏み込み、携帯電話を閉まっているポケットと、同じポケットからマッチを取り出す。
「ちっ、わざわざ、面倒くさい仕掛けしやがってェ」
そう言って着火する。しかしマッチから放たれたのは、赤ではなく無気味な緑の炎。
しばらくそれを虚ろな瞳で眺めると、マッチを足下へ落とす。ゆっくりと回転しながら高速で落ちて行き、足下にある薪へと火が触れた瞬間、爆発の様な無気味な緑の火柱が出来あがる。
その異常の様な火力は瞬く間に断末魔の姿を隠し、燃え盛っていたかと思えば一瞬で鎮火する。
しかし、そこに断末魔の姿は無かった。
あとがき
今回は謎の少女との闘いの後を書かせて貰いました。
それにしても断末魔様……
優しいですね……
予定では断末魔様は悪逆非道! って感じのキャラにするつもりでしたが
いつの間にか素直になれない照れ屋のツンデレになっていますね^^;
まぁ、私的にはこっちの方がいいかなっと思いつつある今日この頃です。
過去は落ちこぼれの不良だったらしいんですが、
その話もいつか、書けるといいな~と思います。
それにしても後半の、暖炉と緑の炎……理解して頂けたでしょうか?
ちょっと魔法世界っぽい事を書きたくなりまして、
暖炉と緑の炎を出すマッチを出したのですが、
まだまだ未熟だったため、上手に書けませんでした。
断末魔様がどこかへワープしたのと、雰囲気を感じっていただければ幸いです。
あと、備考ですが、暖炉の仕掛けは魔法ではなく科学です^^;
このあたりはまた小説で明かせていけばいいな、と思います。
珍しく大変長くなりましたが、ここら辺で筆をおきたいと思います。
では、次のお話で^^
断末魔 The Hour Of Death(だんまつま・ジ アワー オブ デス)
性別:男
年齢:16歳
性格:自称なし・他称ツンデレ
備考:学園のナンバー4。元堕落者で落ちこぼれの道を歩んでいた。
代表台詞:「くそッたれがッ! 誰がそいつらに手ェ出して良いって言ったァ! ゴラァァァァァァ!!」
代表魔法:THOD『断末魔』