魔女魔人編「誤解」
2階位の高さのある本棚の上から少女を睨む断末魔。
本を読む為のテーブルの上から断末魔を睨む少女。
「(ちっ、なんだってんだァ、アイツ! ナンバー持ちがこんな所で何してんだよォ。それにあの格好……下着にタンクトップ一枚。変態じゃねェか)」
断末魔はそんな事を考えながら、さっき少女が放った魔法の向かった先を見る。
そこには当然だが本棚があり、特に変わった様子は無かった。しかし良く見るとその本棚の周辺だけ空間がねじ曲がっていて、空間が渦を巻くようにゆっくりと回転している。
「(なんだァ? あの現象……今までに見た事が無ェ。そして原理が見事にわかんねェ。オリジナル魔法とは言え、ベースは基本魔法……にも関わらず解らない。まったく、この俺にすら解らない魔法を使うって、どんな奴なんだァ? やはりナンバーは一桁台が妥当かァ)」
断末魔が次々に思考を張り巡らせていると、少女が動き出す。
長い前髪の為、口元しか見えないが断末魔は確かに見る。無気味な笑みを浮かべ、魔法名を唱えているのを。
「ταχyon『ザ・ファステスト』」
少女が空間に滲んで行く。まるで、水分の多すぎた絵の具で絵を描くように。
そして次の瞬間、少女の声が聞こえる。それも、背後で……
「2008/95%23%『dark matter』」
断末魔が慌てて後ろを振り向くと、少女が目を光らせながら断末魔の目の前に黒く光る右手の平を向けていた。
そして間髪入れずに、何かが放たれる。今度は色があり、とても太い黒色のレーザーの様に見える。そのレーザーの太さは尋常で無く、断末魔を簡単に飲み込んでしまうほどだ。
そしてレーザに吹き飛ばされ、次々に本棚を貫通して行く断末魔。
バラバラになった本のページが舞い上がり、断末魔の衝突による衝撃で関係無い本棚の本が滝の様に次々に落ちて行く。
やがて断末魔は七架目の本棚で勢いを止め、倒れてきた本棚に埋められる。
その様子を見た少女は安心したようにゆっくりと空中から地に足を着く。そして引戸の外に2人が居る事に気付いているのか、そちらに向かってそっと歩き出す。
その恐怖に怯えたのか、断末魔に罪悪感なのか、那由他は涙を流して震える声で葉乃愛に話しかける。
「あ、うぅ……ど、どうしよ……ぅ。だ、断末魔様がま、負けちゃっ、ちゃたよぉ! わ、私達のせいだよね、……わ、私達があんなイタズラしたからぁ……ぁ」
「そんな……そんな事って……くッ! ここは私が戦うしかない! 私の最高魔法で!」
葉乃愛に緊張が走る。少女を隙間からじっと観察する。そして謎の少女が引戸に触れると同時に、葉乃愛は魔法を唱える。
「轟々豪雨『ウォーターマニピュレ――』」
が、葉乃愛が発した魔法名をかき消すような大きな音が大図書室に鳴り響く。何かが爆発したような音の後に、大量の本が落ちて行く音。
少女は慌てて後ろを振り向くと案の定、大量の本が宙から落ちて来ていた。そしてさらに上、その上で顔の半分が血で赤く染まった断末魔が、上を向き胸を前に出すように両腕を開いていた。そしてその姿勢で『断末魔』の様な声で叫ぶ。
「くそッたれがッ! 誰がそいつらに手ェ出して良いって言ったァ! ゴラァァァァァァ!!」
前を向き、血に染まった紅い瞳で少女を睨む。そして魔法名を吠える。
「THOD『断末魔』ァァァァァ!!」
鎖に縛られた黒き門が現れ、何かが抜け出そうとしているのか、激しく揺れている。その振動で鎖が大きく揺れ、軽い金属音が不協和音を奏でる。
そして、門をこじ開け、黒き髑髏がムンクの様な叫びを上げ飛び出してくる。そのまま少女に噛みつこうと、大口を開け、ひたすら少女に向かって突き進む。そして、少女を一口で、飲み……………………込め無かった。
少女が髑髏の上顎を両手で、下顎を片足で喰い止めたのだ。しかし髑髏は遠慮なく、顎を振り下ろす。少女の両腕からミシミシと嫌な音を立てる。
さすがに少女もこの状況は望ましくないのか、冷や汗を垂らし、苦しみを露わにしていた。
そして、苦し紛れにこんな事を言い出す。
「な、何で君たちは泥棒なんてするんだよぉ!」
あとがき
最近疲れて、書き方が安っぽくなってきたかも……
はい、と言う事で今回は断末魔様が切れました。
彼を怒らせると怖そうですね……、元不良だし……






