魔女魔人編「ドジっ子」
断末魔の通う学園には旧校舎と呼ばれる、今はもう使われていない、古い学び舎が存在する。
科学の発展により近未来的な力を備えた校舎が次々に建てられて行く中、ポツンと取り残された様に佇む木で出来た校舎だ。
その校舎は侵入する事を特に禁じていないとは言え、人気は少なく、たまに掃除係が訪れるくらいで、好き好んで中に入ろうとする者は少ない。
しかしそんな薄汚い旧校舎に三人の生徒が訪れる。
「第一の七不思議、今はもう使われていない旧校舎の大図書室にナンバー持ちの正体不明の少女が現れる。」
メモ帳に目を通しながら説明する様に話すのは、葉乃愛と呼ばれた少女だ。
葉乃愛はメモ帳はもう必要無いと判断したのか、グシャグシャに丸めてポケットにしまう。それに疑問を抱いた那由他はすかさず葉乃愛に問いかける。
「その紙には七不思議の内のひとつしか書いて無いのです?」
「まぁね。私も七不思議を考えた奴の変態面を拝んでやろうと思って、七不思議の事を調べ始めたのは、ついさっきの事なのよ」
そこへ断末魔が間髪入れずに問いかける。
「ほんとにナンバー持ちが現れるのかァ?」
ナンバー持ちと言うのは学園の中で実力が百位まで与えられる力の序列を表す数字の事で、単純に数字が小さければ小さいほど強いと言う事だ。ちなみに断末魔はナンバー持ちだったりする。
「それを確かめる為にここに来たのよ」
「それはいいが……何でお前が居んだよォ?」
「いいじゃない。私が居たって、減るもんじゃないでしょ!」
葉乃愛は切り捨てる様にそう言うと半分腐食した木で出来た両開き扉を蹴り飛ばして開け放つ。
『ギィー!!』と言う猛烈な摩擦音が『ひぃぃぃ!』と言う扉の可哀想な悲鳴に聞こえる。暗い旧校舎内に光が差し込み、扉を蹴り飛ばした事により浮かび上がった埃を鮮明に映し出す。
そこへ葉乃愛が顔だけを覗かせると、両開き扉の片方だけが跳ね返ってきて、葉乃愛の顔面へクリーンヒットした。葉乃愛はあまりの衝撃で後ろへ倒れ込み、痛みのあまり顔を両手で押さえ体を激しく捩じらせている。
ぶつかった後の扉の『ギ、ギ、ギ、ギ』と言う摩擦音が『ひっひっひっひ』と言う扉の皮肉な笑い声に聞こえて仕方が無い。
その様子を断末魔は呆れ顔で見届け、那由他は何か無気味な笑顔をこぼしていた。
「(ここまで天然なドジっ子さんは珍しいです……ふふふふふふ……)」
なんとか痛みが引いて来た葉乃愛はそこから立ち上がり、中途半端に開いている扉を完全に開けようとドアノブに手を伸ばす。
そして、腹いせにそのドアノブを思い切り強く握ると、手の平に木以外のグニョとした感覚がある事に気付く。
顔を真っ青にしながら恐る恐る手の平とドアノブを確認すると、何かの虫が潰されたのか、ドアノブと手の平に変な色の体液を撒き散らしていた。
「い……い……いやぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!」
あまりの衝撃(精神的な意味で)に全力で跳ね上がると、真上にあった扉の枠に頭を強打してしまう。
その勢いは凄く、木で出来た枠を簡単に折り曲げてしまった。そして葉乃愛はまだ理性はあったのか、虫の死骸が付いていない方の手で頭を押さえると、枠を潰された事で不安定になった扉が大きく揺れ葉乃愛を旧校舎から跳ね飛ばす。跳ね飛ばされた葉乃愛は仰向けで地面に転がり、半泣き状態で放心していた。
その様子を見た那由他はさすがに同情したのか笑顔は無く、断末魔は、もはや引き気味で数歩後退していた。
「お、おい。お前……良い所のお嬢様なんだろォ……? 何て様してんだよォ……」
それに対して葉乃愛はすでに泣きべそをかいていて、震える声で質問に答える。
「う、うるさい。そんな事、私が聞きたいよぉ~」
「ダメだァ、こいつ……」
そんなかんだしている内に時は過ぎて行く。
もうすぐ授業が始まる時刻なのだが、この学園は好きな授業に好きな時に参加する。 と言う制度なので、問題にすべき事では無かったりする。
あとがき、
葉乃愛ちゃん……
以前は非禁禁忌へ立ち向かうかっこいい少女だったのですが……
今はただのドジっ子扱いですね……
好きな授業に好きな時に参加する。
↑なんて素晴らしい制度なんだ……私の学校でも採用するべきだと思う。うん。
それにして断末魔様の周りには常に女の子がいますね。
実はたらしだったり……おや、誰かが来たようだ。