第7話 恐怖と怨念のダンジョン攻略
「…やはり、寝心地は悪いな。寝た気がしない。これじゃ俺の目指す生活とは程遠いな。…さて、今日からは冒険者だし、俺の目指す生活を手に入れる為、お金を稼ぐとしましょうか」
昨日、資金が底をつき、飯を食えてない為、今日こそは飯にありつく、そして、泊まる場所を確保する為、じゅんきは車を降り、再び草むらに車を隠し、冒険者ギルドへと向かうのだった。
「ほうほう。この依頼。良さそう」
じゅんきが目をつけたのはあるダンジョンを攻略するという依頼である。ダンジョンの魔物が外に出て、人々を襲っているらしく、被害が出ている為、それを止めたいらしい。この依頼はちょうどランクCでも受けることができ為、取り敢えずでこれを手に取ってみた。ちなみに、依頼はどれでも好きなものを受けれる訳ではなく、パーティなどに最低1人はその依頼の適正ランクにあった人が居ないと受けることはできない。じゅんきは現在、ぼっちである為、B以上の依頼は受けれないのである。この依頼はちょうどC以上の冒険者が受注できる為、じゅんきはこの依頼は受けれる。そして、なにより、じゅんきはダンジョン攻略などをゲームみたいで面白そうという理由で手に取った。能天気である。
「ダンジョン攻略依頼を承りました。それでは、どうかお気をつけてください」
と、依頼書を受け付けに持って行き、じゅんきは依頼を受注した。初めてのダンジョン攻略開始である。じゅんきはわくわくしながら、目的のダンジョンを攻略しに行くのだった。
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「ついたぜ。ダンジョン!わくわくするなぁ!!」
じゅんきはオタクである。特にこういうダンジョン攻略系のゲームは好きであった。そして、今は禁断王より譲り受けた力もある。どれだけ強いかは知らないが、始めてのダンジョンに胸を踊らせながら、車を再び近くの茂みに隠し、ダンジョンへと入って行った。
「お!来たな!敵!…ゴブリンの集団か!」
ダンジョンに潜って40分くらい、じゅんきは初めて敵と遭遇した。ゴブリンの集団。初めての魔物と対峙する。ゴブリンとはありがちではあるが、じゅんきはわくわくしていた。
「さて、それじゃ、いっちょやってみますか!…形態変化!禁断王!」
そう言い放つと、じゅんきの頭にはブラックのような黒く、所々に真紅の色が不気味に光る角が2本生えてくる。そして腕や足なども同様の色になってゆく。そして、どこからか、禁断槍が目の前にやってにて、Xという文字を表すかのように地面に突き刺さる。その場で適当に考えて行ったが、成功したようだ。
「なるほど。これが禁断の力を纏った感じか。なんか、強くなった気がするし、技名は結構ノリで考えたものだし、できるかどうかは不安だったがイメージしながらしてみるとら案外成功するものだな!さて!そしたら、ゴブリン達よ!覚悟!」
と、禁断槍を抜いてゴブリン達を倒そうとした。しかし、ゴブリン達は変化したじゅんきを見るなり、血相を変えて声もあげることなく逃げ出して行ってしまった。じゅんきは「は?に、逃げたのか?」と情けなく発した。内心、初討伐ができないことに悲しさを覚えたが、取り敢えず進むこととした。
そこからは、ヌルゲー、八百長とでもいうべきなくらいの勢いで、簡単にダンジョンを攻略した。この姿になったはいいものの、解除の方法がわからなく、姿をこのままにして探索していたが、ゴブリンや他の魔物はじゅんきの今の姿を見るなり、血相を変えて逃げ出してゆく。なんか、しょうもないと思った。そして、一度も戦闘になることもなく、最深部まで着いてしまった。
「…なんか、つまんない。まぁでも!この扉、いかにもボスって感じ!!ボスは流石に逃げないでしょー」
と、最深部にある大きな扉を前にして、1人呟く。ボスは逃げないだろうということに期待をして、扉を開けた。扉を開けた先にはいるボスモンスターはサモナーというモンスターらしい。ゲームに出てくる様な魔法使いの様な見た目で、服装は黒い。情報によると、このダンジョンのモンスターを意のままに操っており、更に、自身も新しくモンスターを召喚したりできるという。いわば、人々を困らせているのはこいつである。正直、他人がどうなろうと関係はないが、面白そうと受けた依頼だ。ならやりきろうかと思い、槍を改めて握りしめ、ゆっくりと近づいた。
「ナ、ナニ!?キ、キサマハ…キンダン…ワレラノニクキテキイィィィィィ!!!!!」
え?喋れるのか?まぁ、魔物が喋るなんて良くある展開だがと思った。
「な、なんだよ。憎いって」
「ホロベェェェェ!キンダンーーー!!」
じゅんきの質問に当たり前だが答えることはなく、サモナーはただこちらを睨み、警戒MAXでそう言葉を吐き捨てる。目には恨みが篭っていた。そして、サモナーは予め用意していたであろう魔法陣に力を注ぎ始めた。
「マジュウショウカン!シュツリョクサイダイ!ワレノスベテヲササゲテショウカンスルゥゥ!!」
そう、言い放つと、魔法陣は赤く光り出した。そうして、魔法陣から、魔物が出てくる。出てくる魔物を見てサモナーは両手を広げ、まるで出てくる魔物を崇拝しているかの様な姿勢をとった。そして、狂ったように笑い。
「オマエノイノチハナイゾ!キンダンー!オマエハココデハテルノダー!」
そう、吐き捨て、サモナーは力尽き、動かなくなった。多分、自身は贄として捧げられたのだろう。その姿を見てる間にも、新たな魔物は魔法陣から、完全に出ており、じゅんきの方を見つめていた。じゅんきは出てきた魔物はサモナーとは比べ物にならないくらい強いと肌で感じ取った。情報にはない魔物。名前はわからない。ただ、姿は全体的にさっきのサモナーのように黒い。黒い覇気がどよどよと周りにひしめき、白い目を不気味に光らせ、こちらを見つめる。そいつは先程のサモナー同様。恨みの目線をこちらに送る。それと感じる圧。じゅんきは「こいつは強敵だ!…楽しめそうだ」と、なんとも狂気的な感情が、脳内を支配した。両者が戦闘体制となる。先に仕掛けたのは黒い魔物。両手を広げ、黒く、不気味に光る魔法陣を作り、そこからは圧倒的な速さで黒いビームが放たれ、じゅんきにそのビームが直撃した。
「…あれ?痛くも痒くもないぞ」
痛みも何もない。煽っているのかと思い、じゅんきは苛々とした。
「…やるなら、殺しに来るくらいでしろやー!舐めてるのかぁー!」
そう、言い放ち、黒い魔物の打つビームの中を、じゅんきは突き進む。そして、魔法陣に近づいたタイミングで、右手の槍で奴を真っ二つにする角度で槍を振った。。…見事に命中したはしたもの、避けられ、攻撃は掠っただけであったが、急なる攻撃、そして、あの攻撃を喰らわないのかと驚いているようで、魔物は姿勢を崩し、黒い魔物は地面に落ちて行った。追撃といわんばかりに、じゅんきは魔物に突進し、魔物に槍を突き刺した。魔物は「ア、アァ」と情けなく言い放ち、動かなくなり、黒ずんだ石の様なものを残して跡形もなく消えた。多分ドロップ品だろう。
「…しょうもな」
ボスが自分をも捧げて読んだ魔物なのだから、もっと激しい戦いができると期待していたが故に、じゅんきはひどく落ち込んだ。はっきり言って、期待はずれだった。じゅんきは「はぁ」とため息をつき、サモナーの居たであろう場所に落ちている石(こんどは綺麗な虹色)を拾い、奥に見えたダンジョン定番!宝箱を発見し、開けた。中には結構な数の財宝が眠っていた。
「財宝は、そこそこあるな。なんか、苦労して取ってないから、なんか、ゲットした気はしないけど、貰っていくか」
禁断の姿をなんとか解除して元の姿に戻った後、財宝の入った宝箱を抱え、出口へと向かうじゅんきなのであった。(ちなみに、解除と叫んだら、禁断の姿は解除された)
何故、禁断を見た魔物は逃げたり、恨んだような表情を主人公に見せたのか。そして、禁断の強さとは?今はまだ、不明ですな。
※禁断の力ってなんか最高にかっこいい(小並感)