表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/50

第47話 獣人のお姫様とはぐれでないクラスメイト達

「やぁ。お初にお目に掛かります。デミズの王女ガタル様。私はブルテナ帝国次期帝王、タイクーン バルトルートと申します」


「…よろしくにゃ、タイクーン王子。デミズ族長の娘ガタルですにゃ」


そう言いながらガタルは目の前で握手を求めてきている黒く綺麗なかっこいい服を着ている爽やかな長身イケメンのタイクーンと名乗った男と握手を交わした。


城の中の女従者達が頬を赤らめながら王子を見て居るあたり、王子はすごくモテるのだろうとガタルは思った。


「にしても、こんなにも美しいお姫様が私のお嫁になるなんて…私は幸せ者だ」


そう言いながら爽やかな笑みを見せた王子の笑顔で、従者達は歓喜の声をあげるものもいた。…しかし、ガタルやユウラ、そして獣人の従者達はその笑みに恐怖を抱いた。底知れない雰囲気。ガタルは心の中で「助けに来る」と宣言してくれた彼のことを思うのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「ここがブルテナ帝国…王国にいた時もそうだったが、やはり大きな街だな」


「そうだな!しかも今日はここの王子と隣国の王女の結婚パーティに呼ばれて居るんだろ?ならば!美味い飯が沢山食えるってことだな!」


「こら!あまりはしゃがない!」


「…すみませーん」


そう木本先生に叱られる佐藤を見て、いつも通りのクラスだなと俺、天野 勇樹は思った。


ブルテナ帝国は俺たちの居る国ミッシェル王国と同じくらいの大きさ、人口を誇る国であるが、たった一つだけ、違うポイントがあった。


「なぁ愛川さーん。あの変な耳を生やした人間ってなんだ?コスプレか?」


「あー!俺もさっきから気になってたんだよ。小汚い格好の奴ら」


「さ、佐藤君…剛力君…えーっとね…」


さっき怒られたばかりの佐藤、剛力が、道を歩いてくると見てる動物の耳を持った人間や、動物そのものが人間っぽい体つきになりつつ、二足歩行に切り替えた様な姿の人々を指差しながら瑞姫に話しかける。全く反省してないなこいつらはと思った。


「佐藤君、剛力君。瑞姫が困ってるでしょ?それに、指を差したり言葉遣いも良くないわよ」


「あ?なんだよ俺たちは今愛川さんとお話してんだよ!」


「そーだ!馬童はお呼びでない!」


火に油を注ぐスタイル。流石クラストップのお調子者達の中のお調子者の佐藤と剛力である。そこに痺れもしないし憧れもしないが。


そう俺が考えつつふと沙羅を見ると、……沙羅が剣を抜いた。沙羅は剣士だし、真面目で毎日鍛錬を欠かさないので、普通に強い。無言で剣を抜く様はとても様にはなっているが、同時に恐怖すら感じた。


「そうなの」


「馬童?なぁーんで、剣を抜いてこっちに向けているのかな?…怖い」


「なんでってそりゃ。貴方達に制裁を加えるためよ?」


「まさかとは思うが…斬りつけたりしないよな?俺たちのことを」


「さぁ?どうでしょう?」


沙羅の心から笑っていない笑顔を見て、佐藤と剛力はまずいと感じたのだろう。慌て出した。…俺も沙羅が本気で2人のことを斬り捨てそうになっていたので、止めることにした。


「さ、さ沙羅!落ち着け、辞めるんだ」


「天野君?邪魔しないで貰えるかしら」


「駄目だ!クラスメイトを刃を向けてはならないー!」


「ちょっと!危ないわよ!」


本気でクラスメイトをやってしまいそうな沙羅の剣を振らせないようにし、5分くらいの格闘の末、どうにか止めることはできたものの、周りからかなり冷たい目で見られた。…代償は大きかった。


その後、再び人(瑞姫)に迷惑を掛けた佐藤、剛力、そしてその2人に剣を向けた沙羅は木本先生にしっかりとお説教されるのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「あぁあぁあ〜暇にゃ」


「仕方ないだろうガタルよ。ボスが来るのは夜だから、そこまでは待機しておかないといけないだろう」


「はぁ、こんな所、いますぐにでも出たいにゃね」


日が真上になったくらいの暖かなお昼頃。先程、自身の婚約相手との初面談を終え、父のユウラと共に城の一室に待機を命じられ、部屋のベットでガタルは暇そうにゴロゴロとしながらそう言った。


ごろごろダラダラとするガタルは、自身の夫になる予定の相手のことをふと考えた。見た目はイケメンで、高身長。お淑やかな性格そうに見えたが、彼の浮かべる笑みは爽やかだが、その裏には何処か恐怖を感じた。


貼り付けた様な笑みであり、その笑みの裏にはドス黒い闇のような感情…何か良くない事を渇望することを隠しているのだろうとガタルはなんとなく理解した。


そんな彼を見て思い出したのは、つい昨日まで自分の目の前に広がっていた楽しい光景。毎日自分の仲間達(獣人達)と狩りに出て、時には大成功を収めてパーティをしたり、時には失敗して超絶質素なご飯になって腹を空かせたまま笑い合い、ご飯を食べたりした光景。


そして、自分の住む街がこの国の人間族に襲われ、ピンチになった所にやってきた自身が初めて心の底から仲間としてではなく、1人の人として好きになった王混 じゅんきという変わった名前を持つ男との出会い。彼の持つ力や物に日々驚かされたり、彼に鍛えられてみるみると強くなってゆく日々。そして自身たちの最高の王である獣王に立ち向かい、その力と、王の信頼を得た光景を目の当たりにしたこと。


同じ種族の獣人達と暮らしている期間よりも遥かに短いが、その短い期間で自分が本気で好意を持った相手。


…しかし、彼の隣にいるシストリエスという女が、自分と彼の恋を実ることのないものだと実感させられたりもした。


自分よりも彼のことを当たり前だが、理解しているし、彼も彼女のことを理解している。パートナーを超え、一つの生命なのかと思わせるくらい息が合っている。


遅かったのだ、なにもかもが。告白することも、なんなら、出会う時も。仕方のないことではあると言いようがないが、一度想ってしまったこの感情を捨てることなどできるわけもなかった。


だから、ここにくる前に勇気を出して告白した。初めて(キス)も捧げた。しかし、それでも彼が自分に振り向いてくれることは無かった。このまま彼と婚姻してしまい、無理にでも帝国との婚姻を消してやろうと思ったが、見事に失敗に終わった。


だから、シストリエスのことを恨みもしたし、後悔も、絶望もした。彼の目の前では見せなかったが。


だから諦めて、自分の大切を壊した帝国に嫁ぐことだって渋々受け入れようともした。


だけど彼はそんな自分に手を差し伸べてくれた。自分のみならず、ここで奴隷みたいにひどく扱われている同族の者まで救い出してくれると宣言してくれた。胸が温かった。そして、諦めようとした気持ちにも再度火が付いた。全てが終わったもう一度挑戦しよう。例え、強敵に勝てなかったとしても。


そう深く決心をしたガタルは、夜の婚約パーティまで大人しく待機することにしたのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「タイクーン王子よ、久しいな。…大きくなったな」


「ミッシェル三世様…お久しぶりです」


日も落ちかけている夕方頃。俺たちの滞在している国の王…ミッシェル王がブルテナ帝国へとやって来て、俺たちと合流したことで、一足先にパーティ会場へと到着した。


ブルテナ帝国城はかなりの大きさであり、ミッシェル王国の城よりも装飾は派手ではないものの、広さがあり、100人入っても大丈夫そうなパーティ会場へと俺たちは来ていた。


会場は長机や椅子などが綺麗に並んでおり、俺が見て来た結婚式の時の式場まんまである。


そんな俺たちの目の前にはパーティの主役の2人、黒く伯爵様の着るようなかっこいい服に身を包んだブルテナ帝国次期帝王と言われているイケメン男タイクーン王子と、白く美しいドレスを着こなし、猫の耳や尻尾を生やした獣人と呼ばれる人族に分類される、こちらも美人な獣人の国デミズの王女ガタル王女、そしてブルテナ帝国の帝王、ミレミアム王というなんとも豪華なメンツの前に自分はいるのだろうと俺は思った。


「タイクーン王子様!その…普段はなにをしているんですか?」


「タイクーン王子のかっこよさの秘訣ってなんですか!」


高野、篠崎といった女の子集団がわらわらとタイクーン王子に群がる。


俺たちは一応はいつもの勇者パーティの服装や学生服…ではなく、王様より支給されたタキシードや、ドレスに身を包んでいる。


「ガタル王女の居るデミズってどんな所なんですか!?やっぱり王女様みたいな可愛い人がいっぱいいるんですか?」


「ネコミミ…美人女の子…映える」


佐藤、剛力といったメンツを始め、鍵山といった普段おとなしいメンツまでもが、ガタル王女にわらわらと群がっている。


俺たちは変に目立ちはしないものの、婚約パーティの主役達に群がる光景はなんとも歪である。…先生や馬童が呆れたような目線をしている。…これでも勇者パーティの一員なのかと思う。


王子は爽やかに対応しているが、王女はかなーりめんどくさそうな感じで結構雑にあしらっている。それほどにまで、あのイケメン優男のようなタイクーン王子のことが好きなんだなと俺は思いつつ、美男美女に群がるクラスメイト達を見るのだった。


この後にとんでもない衝撃の連続が待ち受けているなんて、この時、この場にいたほとんどの奴は知る由もなかったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ