第46話 デミズを救う為にPART2
「結構…すごい作戦にゃね」
「当たり前だ。…さぁて楽しくなるぞぉ」
じゅんきはわくわくしていた。作戦をガタルと練り、かなり良い作戦にできたじゅんきは興奮を隠さないでいた。ガタルはその光景と、作戦内容に大分困惑していたのはここだけの話である。
「思ったのにゃけど、私と王子様の結婚式は明後日の婚約パーティにゃ。…それに入る方法はあるのかにゃ?」
「ふっふっふ。俺を誰だと思っている」
そう言いながら、ピラッととある紙を取り出した。
「そ、それはにゃ?」
「婚約パーティの招待状だ。俺と、シストリエスの2人分あるぜ」
「何処でそんなのをもらったのにゃ」
「実はウイングズで帝国内を走行していたら、王族の奴らのお目に止まってな。それで帝国の王様に気に入られてな。もらった。なんもなければ、行かないつもりで居たのだが…丁度いい」
「王族はさぞ後悔しそうにゃね…」
「ふっふっふ。王族よ、後悔するなら勝手にしておくといいさ」
じゅんきは自信満々にそう言った。帝国の王には感謝である。
「さて、明日もやることができたな。ガタルもそろそろ寝ておいたほうがいいだろう」
「そうにゃね」
そう言いながら、ガタルとじゅんきは、木から降りた。じゅんきは降りる時に変な降り方をしたせいで足首をやってしまい、ガタルの前では平然としたものの、じゅんきとシストリエスの泊まっている場所でめちゃくちゃに悶絶して、寝る時間がほぼほぼ朝方になったのはここだけの話である。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「さて、それじゃあ。ガタルと、ブルテナ帝国で奴隷や従者となっている獣人の救出作戦を皆に発表しようと思う」
翌朝、じゅんきは、シストリエス、ガタル、ユウラ、ライガ、ベアフ、ベアサ、ユイイト、ポメラ、レッキスという獣王攻略の時のメンツがそのままレッキスの働く食事処に集まっていた。
現在は昨日の夜、じゅんきはガタルとの共に話した作戦を皆に伝えていた。ここの状況をよく知らないシストリエスや、ライガ達アイス・フォレストに住んでいた者達は怒りを隠さないでいたが、ユウラ達デミズに住んでいる者達は「ボスがいるから」と希望を持つものや、逆にボスの身を案じる者も居た。なぜ案じられるのかわからないじゅんきだった。
「ですがボス。獣人達を助けると言っても…」
「何処に居るかなんて…」
「「俺におまかせあれ!」」
そう言いながら席から立ち上がったのは、ユイイトとポメラの2人である。2人とも自信満々だ。
「俺たちの種族が何かをお忘れですかい?」
「犬の耳に…尻尾…あっ!」
ユウラはそういいなら、閃いたような顔をした。じゅんきもわかった顔をした。
「俺たちは犬人族。人間の匂いと獣人の匂いくらい簡単に判別できるし、何処に居るかもなんとなくわかるぜ!」
「ならば、獣人救出班にはユイイトと、ポメラを主軸とし、ここにいるガタル、ユウラを除いた獣人達全員にやってもらおう。…だが人数が少ないから、デミズの奴らからも引っ張ってこよう。数は……そうだな…30人くらい欲しいな」
「なら、俺が見繕いましょう!役に立つ素晴らしい奴らを集めますぜ!」
「頼んだ。ユウラ」
ビシッと敬礼したユウラは、ユイイトを引き連れて、獣人達を探しに行ったのだった。
「…さて、俺もやることあるし…失礼するぜ」
「…じゃあ私もやることあるし、失礼しようかしら。…またあとでね。じゅんき♡」
そう言ってシストリエスはじゅんきの頬にキスをした。ガタルがとんでもなか怖い顔で見てきているが、いつもみたいに襲い掛からず、待機していた。なので、じゅんきは気にしないことにした。
にしても、シストリエスがじゅんきに着いて行かないと言うのはとても珍しいなとじゅんきは思ったのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「ふむふむ。なかなかにいい出来具合。流石俺だな」
夕焼けで辺りがオレンジに染まる中、じゅんきは物を制作する時に来る…ほぼほぼ工房のような感じになったデミズ近くの岩場地帯に来ていた。
じゅんきの目の前には夕焼けに照らされ、オレンジに輝く銀白色のじゅんき作、V12魔力機動エンジン搭載のラ○ボル○ーニやフ○ラーリと言ったスーパーカーと呼ばれる車をモチーフにして造られた車。「zero counter」と名前を付けされたスーパーカーが、じゅんきの目の前で前に作ったL○A似の車よりも高音のアイドリング音を奏で、走り出す瞬間を今か今かと待ち望んでいた。
横ではなく縦に開くシザーズドアというものを採用しており、誰も載せることのないだろうってくらいのじゅんきの趣味全開で造られた車。そんな車を目の前にして、じゅんきの心はもうワクワクが止まらぬまま、車を直し、平野地帯へと移動した後に、試運転を開始したのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「いよいよ明日だな。zero counterの試運転もバッチリで最高の出来具合だったし、ユウラとユイイトの連れてきた獣人達も皆やる気十分で力もありそうな奴らだったしな。明日はこのままいけば、大成功だな」
夜も更け、獣人の皆が明日のために英気を養う為に早く寝たことで、静かとなったデミズの家の一室で、寝る準備をしながらそう独り言を呟くじゅんき。
じゅんきの新車「zero counter」の試運転、最終チェックを終えたじゅんきは早々とデミズへと帰宅し、明日の婚約パーティに出る為に、一足先にブルテナ帝国へと旅立ったガタルと、ユウラの乗る帝国の馬車を見送った後、いつも通り夕食を作り、(ガタル達には予めお弁当を持たせている)皆の体力を作り、そして早々と各々の寝泊まりしている住処へと帰宅した。
馬車とか、いつも使わないので、帝国に行った時以来であるが、やはり遅い。じゅんきの所有する3台の魔力機動車よりもかなり遅い。馬の機嫌とか、基本が木製のものに鉄を少し被せたくらいの弱々しい物に乗るのは勘弁したいとじゅんきは思った。
そんなことを考えつつ、シストリエスの方を見ると、シストリエスはなぜかニマニマとした笑みを浮かべながら寝ていたのでじゅんきに悪寒が走ったのはここだけの話である。
なぜだか、嫌な予感がするまま、じゅんきは眠りにつくのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「…さてさて、今日はブルテナ帝国へと行く日だな…」
そう独り言を呟きつつ、じゅんきはいつもの服を着ようとした。
「…待って。じゅんき」
「…なんだよ」
寝巻き姿のシストリエスに服を掴まれて着ることを阻害されてしまった。
「そのいつもの服じゃ…よくないでしょ」
「なんで」
「…最初出会った時からそうだったけど、その服結構ボロボロじゃない。前は良かったけど、今回は招待されている身よ?」
「だから…なんだよ」
「その服じゃ…失礼でしょ」
「なにが…失礼なんだよ」
いつもの服で行きたいじゅんきと、それを阻止したいシストリエスでの攻防戦が朝っぱらから繰り広げられた。
「当たり前じゃない。パーティよパーティ。お偉いさんとかが来るのが筋ってもんなのよ。そんな中でこの服は流石に良くないって!」
「…って言われても。これしか服ないしよ!」
そんな風に言い合いながら、綱引きをするかのように服を取り合うじゅんきとシストリエス。その攻防戦に、じゅんき愛用のボロボロ服が耐えられる訳もなく…
ビリビリビリー!!!
という、悲しい音とともに、じゅんきの愛着は真っ二つに裂けた。
「「…あっ」」
そう、2人の虚しい声が響いた。たった今、じゅんきの服が寝巻きだけになった瞬間である。
「…服…ないなった…」
「…ごめん。じゅんき」
シストリエスは申し訳なさそうな顔で言った。
「ま、まぁ、引かなかった俺も悪いし仕方ないけど…服…どうしよ」
じゅんきは、そう言いながら、シストリエスを許すことにした。…てかもう許す許さない所の話ではなかった。だって治せないしな!
「…とりあえず、私のチョイスした服…着る?」
「それしかないね」
そう言いながら、シストリエスは予め用意していた服を取り出した。
「…何故にタキシード」
「似合うと思って」
そう、ニコッと、さっきの申し訳なさそうな気持ちはどこへ行ったのかというくらいの笑みでそう言った。
そんなシストリエスが出したのは、綺麗な藍色のタキシードのような綺麗な服。ちなみにネクタイは蝶ネクタイではなく、会社員とかが使うネクタイである。パーティに招待された奴の服装としては正しいのだろうが、渋々とじゅんきが着てみると、ここに来た時に来ていた学校の制服ぶりの少し重めの服だったのか、またサイズがピッタリだったのか、じゅんきにはむさ苦しく感じた。しかし、服はこれしか無いので、仕方なく使うことにした。
「…かっこいい。イケメン。惚れ直した」
ポオッと、シストリエスの頬が赤くなった。
「そ、そうか…だが、久々の重めの服だから、少々違和感があるな…」
頬を赤くしながらのストレートな褒めっぷりに、じゅんきは少し照れ臭くなった。…これが終わったら絶対に服を買いに行こう。そうじゅんきは思った。
「それじゃ、俺は先に出てる」
「え?なんで?」
「…どうせお前も着替えるんだろ?」
「うん。でもそれがどうしたの?」
「…どうしたのではなくてだな…」
「…もしかして?私の裸見るのが恥ずかしいの〜。やだぁ〜じゅんきのエッチー」
「しばくぞ」
この瞬間だけ、自分の恋人であり、最愛のシストリエスにじゅんきは手をあげたくなった。…我慢はしたが。
「えぇ。そんな怖いこと言わないの〜。私、貴方になら全然見せれるよ〜」
知ってるよ。お前と恋人になる前に風呂でお前は堂々見せてきたもんな。この露出野郎が。俺はそう思った。
「知ってるわ。だけど恥ずいもんは恥ずいんだよ」
「そうなんだ〜」
「なんかイラッとするわ。…まぁ、いいわ。取り敢えず、俺は外に出て皆んなと待機しておくからな。あとでこいよ」
「えぇ〜愛する恋人の着替えシーン。見ないの?」
「みねぇよ。露出野郎」
そう言い残し、じゅんきは外へと出て、ユイイト達のまつ場所へと向かうのだった。
「ボス!…似合ってますね。男爵様みたいですよ」
「そうか…だが…なんだか、違和感凄くて…」
「ボス。いつも軽い服でしたもんね」
「…兄貴!…心変わりですか?」
ユイイトが褒め、ポメラが驚いた顔をし、ライガが疑問を持った顔をしながら疑問をぶつけた。
「そんなことないだろ…朝起きたら、シストリエスといつものあの服で行くなって言われてな。朝それで少しだけ言い合いになった時に服が破けてしまってな。…あの服…初めて購入したやつだからお気に入りだったのだがな…」
「まぁまぁ兄貴!丁度いいタイミングじゃないっすか?新しい服との出会いを…って奴?」
ベアサがそう言った。ベアフが気まずそうな顔をして、止めようとしていたが、それはどうやら無理だったようで、顔が青ざめていた。
「そうかもな。…ガタルや、獣人を助けた後に、新たな服を買うとするか」
「…ボスはその服でも似合いますけどね」
「重いから嫌いだ」
「そうですか」
そんな会話をしていると、コツコツと、聞きなれない足跡が響いた。じゅんきはその方向に視点を向けた。
「…………oh」
じゅんきは放心状態となった。なぜなら、じゅんきの目の前には…
「…お待たせ。どう…かしら?」
男性陣は全員固まった。なぜなら、視線の先にいた、長い紫の髪に似合うくらいの綺麗な真紅のドレスに身を包んだシストリエスが、少し恥ずかしそうに…なんで恥ずかしいのかは知らんが、恥ずかしそうにしつつ、そこにいたからだ。
「……」
「…じゅんき?」
「…もう…死んでいいな。未練ないわ」
「ちょっと!?まだやるべきことは沢山あるでしょ!?」
「…俺もっす…兄貴の奥様が…綺麗すぎて…やばい」
「…あ〜。癒されるねぇ〜」
「もう!なんなのよ!皆んなしてー!」
その後、じゅんきはシストリエスに、獣人男集達は女獣人達に揺さぶられたことで、正気を取り戻したのだった。
「俺たちも向かうとしようか。帝国へ」
じゅんきの声を聞き、獣人皆が雄叫びをあげた。気合いは十分のようだ。先程のシストリエスの美しさに見惚れる雰囲気でも、いつものデミズに流れるようなのほほんとした雰囲気ではなく、帝国にいる同族と、そして族長と、その娘を助かるという信念を固く持った者たちの真剣な雰囲気に包まれていた。
じゅんきとシストリエスはいつも通りじゅんきの愛車1号のPRVへ。獣人たちは異世界ならではの乗り物と言える馬車に乗った。じゅんき達はパーティに参加するのだが、獣人達は向こうに居る獣人達を運ばないといけないし、じゅんきと同じ速度で辿り着き、一気に帝国へと侵入すると、色々と面倒臭いことが起きそうだからである。できる限り多くの人数が乗れる馬車を選択させた。
車を新造しなかったのは単純に鉄資源が足りないからである。あとはじゅんき自身がデミズに住み着くわけでもないので、車というものに慣れてしまうと、馬車などのかつて使用されていた物が使われなくなったり、不満を持って使い続けると、予期せぬトラブルを引き起こすかもしれないからである。それを危惧しての馬車というわけである。
そんな獣人達を乗せた馬車と、じゅんきとシストリエスの乗るPRVは、帝国へ向けて出発したのだった。




