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第45話 ガタルの告白

「なんだか、数年振りって感じだぜ」


「そうね。アイス・フォレストにはほんのちょっとしかいなかったと言うのに…ねぇ」


「ボスが凄すぎて…俺たちいる意味あったかわかんない」


「そうね。ユイイト。ねぇ、ベアフ…だったかしら?今まで、獣王様をあんな速度で倒した奴いたかしら?」


「いるわけないだろ。…兄貴がとんでもないだけだ。…でも不思議だな。あんなにも強いの名前を俺たち…いや、皆が知らないなんて。兄貴が8、9歳とかの小さい年齢ならわかるんだが、あの身長で顔つきとなると…10代後半とかそんな感じなのにな…」


「いままで隠れて生活してたとか、つい最近冒険者始めたとかじゃないか?…兄貴の服装…まぁ、なんというか…」


「始めたて初心者って感じの貧乏服ですよねぇ」


「バッ!?ベアサ!」


「えぇ〜だぁって〜…むぐぐぐ!?」 


「黙ってろ。お前一旦黙ってろ。兄貴に失礼だろうがよ!」


「…俺がどうかしたのか?」


「「い、いいいや!?な、なんでも!」」


「む、むぐぐぐー!?」


「…そうか」


なんだったのか。わからんな。


しかし、楽しそうに話していたので、じゅんきはこれ以上の詮索をしないことにした。


じゅんきたちは、獣王 ワイルドポーラーベアの攻略を終わらせ、丁度今、デミズに帰ってきたのである。


新たな仲間、ライガ、ベアフ、ベアサを連れて。彼らはここ、デミズには居ない獅子族と、白熊族の、獣王によって選別され、アイス・フォレストへと住処を移した獣人達。なのでここでは超レアキャラなのである。


元ナンパ三人衆ということもあり、顔はすごーくイケメンだし、身長も、じゅんきよりも大きく、ムキムキ。ワイルド風イケメンな彼らが注目されないわけもなく、デミズの住民達がわらわらと寄ってたかったいた。ライガ達はものすごく困惑していた。


そんな光景を横目に、じゅんきは取り敢えず、飯を作ることにしたのだった。









「…なんだか、静かね」


「あぁ。ものすごく落ち着くぜ」


「ウフフ。そうねぇ」


「こぉら。トリエス。後でいっぱい構うから、くっつくのはやめろ。危ない」


「ブーブー」


そんな豚みたいになるなよ、と言う言葉をなんとか言葉にすることを俺は辞めた。…危ない危ない。


そんなことを考えられるくらいの甘く、静かで優雅な時が過ぎていっている。じゅんき&シストリエスは、近くにいたレッキスに飯を作ってくるとだけ伝え、レッキスとじゅんきが飯を作っていた所へとこそこそと流石に抜け出すように行った。


抜け出しは成功したので、今この優雅な時間を送れているのである。


仮に抜け出したことがバレても、レッキスが伝えてくれるだろう。…いや、おそらく、伝えている。じゅんきシストリエスはここ、デミズの救世主であり、皆を守れる力を教えてくれた先生でもある。そんな人たちが突然いなくなったらみんなは探すだろう。


しかし、レッキスの伝言によって最近じゅんきとシストリエスの2人きりの時間を作れていないことを知り、察してくれていたら?そうじゅんきは考えることにした。


ちなみに、今この場にガタルは当然だが居ないし、来る可能性も…低いだろう。ここに帰ってきて早々に、ガタル、ユウラ、そして数人のデミズの人たちと共に何処かへと歩いていったから。


そう思いつつも、じゅんきは再び飯を作ることに意識を寄せるのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「やっぱ。じゅんきの作るご飯はおいしいわ〜」


「兄貴〜もう一生ここで暮らしましょうぜ〜」


「馬鹿言え、俺にはスローライフ実現のために王の力を手に入れるという目的があるんだよ」


「じゃあ俺。兄貴に着いていくぜ〜」


「俺も!俺も!」


「…はいはい」


酒が出て、料理が出て。デミズの民皆が集まり、好きな料理を好きなだけ取り、皆と楽しく食べる。


ワイワイガヤガヤと明るく楽しく食べ合う光景。なんと素晴らしいことかとじゅんきは思う。


じゅんきはそんな中でユウラやガタル達デミズの長や、その幹部達の集まる場所で飯を食べている。…幹部がいることをじゅんきは初めて知った。…ちょっぴり驚いた。


全員堅物そうなお年寄り。種族は様々だが、全員、融通の出来なそうな奴らである。実際、わいわいとした空気ではなく、どよどよと話すことを禁じているような空気で着々と飯を食べているから。


隣に座るシストリエスや、ワイワイしてる所から来たライガ達3人は全く空気を読んでないが。…おかげ様で、堅物獣人達のすごく不機嫌そうな顔の所で飯を食べないといけなくなり、じゅんきはとても居づらかった。


「…お、王混様。後でここにきて欲しいにゃ」


ガタルが、そっとじゅんきに紙を渡しつつそう言った。


「おっお!愛の告白っすか?いやー兄貴は凄いっすねぇ」


「…」


「…ライガ。茶化すなよぉ!」


「本当に本当にぃ!」


「おい。ライガ、ベアフ、ベアサ挽肉にされて魔物の餌にされたくなければ大人しくあっちに戻れ」


そうじゅんきは声色を低くし、PRVを出し、エンジンを掛けて吹かしながら、そう言った。


ライトでロックオンするかのようにライガ達を照らし、獲物を捕食するような威嚇のような感じで吹かすPRVを見て、ライガ達は「ご、ごめんなさーい!」と弱い悪党のように逃げ去った。車は偉大である。とじゅんきは思った。


「んでガタルよ。この紙は?」


「…来て欲しい場所の地図、時間を書いたにゃ。時間になったら、ここに王混様1人で来て欲しいにゃ」


いつもの明るく、活発少女のようなガタルの雰囲気とは代わり、静かで、淑女のような雰囲気をただよわせていた。


「…泥棒猫。なんのつもりかしら」


そう言いながら、シストリエスは、じゅんきから紙をスッと奪った。


「じゅんきと話すなら、私も交えてもらえるかしら」


嫉妬心からか、ガタルに対して攻撃的になっているシストリエス。いつもなら、そんなシストリエスに牙を向けるように反抗するガタルだが…


「…どうしても、どうしても。伝えたいことがあるのにゃ。だから。お願いにゃ。紫…いや。シストリエス」


そう言って、ガタルは席を立ち、深々と頭を下げた。


「…あ?…え?」


いつもなら、「フギャー!」と叫んだりしながらシストリエスに反抗するガタルだが、シストリエスのことを紫女とも言わず、初めて名前で呼び、そして深々と頭を下げられる光景に、シストリエスは硬直した。


じゅんきは、ユウラ達を見た。ユウラ達はとてもばつの悪そうな顔をしていた。その顔を見て、じゅんきはガタルが、すごく大切なことを言いたがっているのがわかった。


「トリエス。ガタルの気持ちもわかってやろうぜ。俺はガタルに何を言われても、お前の元から居なくなったらはしないさ!」


「…その言葉信じるわ。泥棒…いや。ガタル。私のじゅんきに余計なことしたらただじゃおかないわよ」


シストリエスも、泥棒猫呼びから、ガタルに呼び変えた。


「…うんにゃ………多分」


多分と言う部分はシストリエスに聞こえることもなく、食事は片方は騒がしく、片方は静寂に包まれるという謎の空気感のまま、終わりを告げたのだった。


ちなみに、じゅんきは静寂側におり、その静寂ぶりから、飯の味があまりしなかったのはここだけの話である。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「…でっか」


ガタルとの約束の時間。じゅんきは時間通りにガタル指定の場所へと着いた。デミズの街から少し離れた先、じゅんきの目の前には巨大な木があった。神木ともいえるような巨大な木が。


「来てくれてありがとにゃ。王混様」


木の太い枝の所から飛び降りてきたガタルが、じゅんきに感謝を伝える。


「構わないぞ」


「まずは、この木を登ってほしいにゃ」


そう言いながら、ガタルは軽々しく登って行った。


「…さて、木登り経験はほぼ皆無。ゆっくりと登りますか」


軽々しく登るガタルを羨ましく思いつつも、四苦八苦しながら、じゅんきは木を登るのだった。







「ウボァ…木登り辛いな」


初の木登りをなんとか終えて、ガタルのいる太い枝まで辿り着いたじゅんき。結構疲れた。


「ありがとにゃ。王混様♡」


そう言いながら、ガタルはなんとじゅんきにキスをした。しかも口と口と合わせるキス。


「…!?」


「私の初めてにゃ♡」


理解できなかった。木登りしたら、キスされる。じゅんきの脳はその事実を処理できなかった。


「驚いたかにゃ?…今日呼んだのはこの気持ち…好きを伝える為なのにゃ」


「どう言うことだ?」


「…私、初めて助けてもらった時から、王混様のことが1人の男ときて好きだったのにゃ…だけどこの気持ちは叶わないことも同時に悟ったにゃ。紫…シストリエスが、王混様の隣にはいつも居た。ラブラブで、2人の絆が深いことを知っていくうちに、胸は痛み、辛かったにゃ。…だけど、その気持ちも今日で終わりにゃ」


そう、ガタルは全てを悟ったような顔で言った。


「今日で終わりって?どういうことだ?」


「…私……隣の帝国…ブルテナ帝国の王子様の元へと嫁ぐのにゃ」


「…ゑ?」


またもや理解できないことを教えられた。じゅんきの頭は困惑しっぱなしである。しかし、そんな頭をじゅんきはなんとかフル回転させた。


「ブルテナ帝国に嫁ぐって…あそこはお前らにとっては敵国だろう?」


「そうにゃ。…王混様たちと夕食を取る前、私と父様は帝国の人と対談したのにゃ…いや、対談というより、交渉にゃ。内容は、近日中にここ、デミズを攻めること。だけど、それを止める方法は一つ。私がブルテナ帝国の王子様に嫁ぐことにゃ。それをすれば、デミズには攻め入らない。だから…それを受け入れたのにゃ…だけど、私が好きなのは王混様。だからせめて、ファーストキスくらいは…」


そう言ったガタルは震えていた。涙目で屈辱的なことをさせられていることを悟っているのだろう。それを見て、じゅんきは飽き飽きとした。


「ハァ……お前はその選択でよかったのか?」


「にゃ?」


「お前は一つ、勘違いしている。選択肢は2つじゃない。3つだ。まずはブルテナ帝国からの話を受け入れて嫁ぐ。お前が選んだ奴だ。そして次の選択肢、ブルテナ帝国からの話を断って戦争の道をたどる。お前が危惧していた奴だ。だが、3つ目の選択肢を忘れてないか?」


「3つ目…にゃ?」


「…お前の目の前にいる奴に助けを乞うこと」


「…助けを?」


「あぁ。仮にも、デミズを救った奴だぞ?」


「…確かににゃ…だけど王混様はそれで…」


「なに。一度は救った国だ。その国のお姫様がしたくないことをさせられそうになっているなら、また助かるまでだ」


「…王混様…」


「それに、あの国はお前ら獣人を良くて召使…悪くて奴隷にしたりしている。それをブルテナ入った時に見てきた。丁度いい。そいつらも助けるとしよう」


「王混様…何から何までありがとうにゃ」


「なに。構わないさ。好きと言う気持ちには答えられないが、困っていることには答えることができるからな」


ガタルの顔がぱあっと晴れた顔になった。…やっぱり元気な女の子に暗い顔は似合わないな。そうじゅんきは思いつつ、ガタルと帝国の獣人と、ガタル自身を助ける作戦を考えるのだった。

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