第39話 帝王との対談
「にしても、本当にいい店主だったな」
「そうね。今度来る機会があったら個人的に利用したいわね」
「そうだなぁ」
そう、じゅんきとシストリエスはウイングズの車内で、優しき店主の顔を思い出しながらそう語り合う。獣王攻略の為に獣人達には万全の状態でいきたいので、ここで大量に食料を手に入れられたのはとても大きいことだ。と、じゅんきは嬉しくなっていた。
「…停まれ!!!」
そんなことを考えてあると、見たことのある軍服に身を包んだ男達がじゅんきの目の前にやってきて、武器を構えながらそう言い放った。じゅんきのテンウイングズは低速走行ということもあり、すぐに停まった。
「降りてこい!!」
おそらく馬車じゃないから、下ろし方がわからないのだろう。人が乗っていると言うことはわかるようになってるし。まぁ。こんな軍人はこのウイングズにかかれはなんて事はないのだが、今回はここで騒ぎを起こすのはまずい。なぜなら、現在じゅんきの背後には獣人、デミズという2つの大きなものがあるからである。
あの店主がイレギュラーだったのかも知れないが、仲間が死んだことくらいは情報が入ってきていなくても長い間帰ってこないとなったら、心配に思うのも不思議ではない。そうなると、最終的にその隊の行った場所、すなわちデミズが危険にさらされるのは至極当然である。今、せっかく育てあげた獣人が死ぬのはすごく惜しい。だから、俺は車から降りることにした。獣人達のことでないといいと思いながら。
「…貴様、名をなんと申す」
「…俺は王混 じゅんき。冒険者だ」
「王混 じゅんき。変わった名だ。あの勇者一向と同じ感じとはな。…まぁいい。取り敢えず、貴様には我ら帝王様の直々の命令として城まで来るように命じられている。その為、貴様を連行させてもらう。ちなみにその訳のわからん形の従魔も連れてきてもらう。大人しく着いてきておけよ?逆らうと、何をするかわからんからな」
あの…これ従魔じゃないっす。そう訂正しようとする口を頑張って押さえた後、俺は着いていくことを了承し、再度車に乗り込んだ。
「…じゅんき?どうしたの?そんな暗い顔をして。てか目の前のあいつらは何?」
「…今から帝国の本拠地の城へ行くぞ」
「…は?」
「…着いてこいとさ」
「…この車ならあいつらなんて一捻りでしょ?」
「それもそうだが、よくよく考えてみろ。今俺たちの背後には誰がいる?」
「…獣人…ってことね」
「その通り」
「はぁ。それなら仕方ないわね」
そう、2人でため息をつきながら、帝国兵達の後ろを着いていくのだった。
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「…我が帝国の王、ミレミアム・バルトルートだ」
「冒険者、王混 じゅんき」
「同じく冒険者、シストリエス」
「…ほう、じゅんきとやら、勇者一向と似た名前だな。なにか関係があったりするのか?」
「ま、多少ね」
「…そうか、その話を聞きたい…ところだが、今日はそんな目的のために貴様らを呼んだのではなかったな。早速本題へと入ろうか」
じゅんきたちはあれから、帝国の本拠地、ブルテナ城へと来ている。城の門をくぐった後にあった広場にトラックを停めた後、そのまま帝国の王の待つ王座の前に連れて行かれた。帝国の王は五十代くらいのイケおじって感じの人だった。帝国兵よりも大分豪華な模様とかが入った軍服に身を包んでいる。
ちなみに、敬語とかは辞めろと言われたので遠慮なくすることにした。従者達が恨めしく見ているが、気にしないことにした。
「本題?」
「…あぁ。まず1つ目として、最近、我の持つ部隊の一つが最近、獣人の街デミズを襲撃しに行ったと聞いた。その部隊の全員が帰ってきていないのだよ。力のない獣人達ではなし得られないことだ。…それは貴様らが倒したのではないか?」
「はっ。なんでそう思った」
「…貴様らからはすごく強い魔力を感じる。そして、貴様らが来た方面はデミズがある所だそれでと思ってな」
この王はすごくしっかりとしているから侮れない。そうじゅんきは思った。
「たまたまかもしれないだろ?」
「あぁ。そうだ、たまたまその方面から来たってだけかもしれない。だがな、そこの我の従者を見てみろ」
じゅんきとシストリエスはミレミアム王の指差す方向を見た。そこにはオレンジっぽい髪に犬のような耳、尻尾の小さな女の子がキラキラとした目でこちらを見ていた。
目の前の少女が犬と同じ特性を持つなら、彼女はきっと鼻がとても良いだろう。の匂いとかで俺たちがデミズから来たことを感じたのだろう。やはりこの王は凄い人である。こんな少女を連れてくるくらいだ。敵だとしても、尊敬に値する。
「…犬族の獣人か…鼻が効くらしいな。これで、俺がミッシェル王の持つ部隊を一つ壊滅させたことになるが、それを咎めるためにここへ連れてきたのか?」
「いや?今貴様とやり合うのは不利だ。しかも、ここにいる獣人達が我たちを襲ってくるだろう。だって貴様は街を破壊する悪から救ってくれた、英雄なのだからな」
キラキラとした目でじゅんきをみる獣人。…やはり王にはお見通しってことか。王はニマニマと不敵に笑いつつそう語った。じゅんきは今更しらを切ったとしても、どうせまた核心をつくような質問をするに違いない。なので包み隠さないことにした。
「流石は帝国の王様だ。あいつらは全員抹殺したと思うのだが、一体どこからそんな情報を仕入れてきたのだい?」
「それは秘密ってものさ。…さて、話を変えて、2つ目に入ろうか。…あの貴殿の乗っていた奴はなんだ?従魔か?どうやって従えた。教えろ」
「あれは俺の作った自身の魔力で動く車、魔導車だ」
「…ほう?中々に興味深いな。その魔導車と言う奴は。…形なども良く、新鮮味もあり、頑丈さもあると見た。どうだ?近日のうちに我の息子の婚約パーティーがある。その時に息子と、息子と婚約する者のために、あの大きな魔導車をくれんか?」
「断る。デミズにとっての敵のお前らに大切なあの車を渡す訳ないだろう?しかもその息子と結婚する女のことも俺は知らんしな」
「…アッハッハ!王にそのような発言ができるとは貴様、中々に肝が座ってあるな!!そこまで嫌だと言われたら欲しい気持ちが爆発してしまうではないか!…幾ら出せばいい?女を何人つければいい?」
「金の問題でも、女の問題でもない。金は稼ぐ方法を知ってるし、俺には大切な女がいる」
そうして、じゅんきは優しくシストリエスを抱き寄せた。シストリエスの顔は帽子で隠れているが、すごく恥ずかしそうだった。
「…それにな、この車を使ってる時の魔力消費量は尋常ではない。起動させた後から停止させるまでずっと魔力を消費するし、さらに動かすとなったらもっともっと魔力を消費する。どんな奴であろうとも、一瞬で魔力は無くなるだろうさ。魔力量だけは自信がある俺だからこそ操れるものさ」
「そうか。なら貴様がその車を操ってっていうのはどうだ?報酬は弾むぞ?なんなら、帝国に住まないか?良い地位で安定して暮らさせてやるぞ?」
「断る。そんなもんはいらん。ここではまったりと暮らせそうにないしな」
「…そうか。それじゃあその魔導車を渡さなければ、貴様の隣にいるその女も、デミズの獣人も危険な目にあうと言ったらどうする?」
「なんだ?帝国を潰されたいのか?」
じゅんきがそう言うと、なんとも言えない戦慄とした空気が流れた。一触即発、なにかが起きればそのまま戦争に発展しそうな空気だった。そんな空気の中、帝王とじゅんきは睨み合い、シストリエスや従者はオドオドとしている。
「…ハハハ!!!辞めだ!辞め辞め!部隊も待機させていないのに、私の一部隊を壊滅させた奴と戦うなんざ無謀だな!…いや。部隊が居ても壊滅させられそうだ。わかった。取り敢えず、貴様の魔導車のことは諦めるとしよう!」
シストリエスと従者はほっと息をついた。最悪は免れた様だ。
「ものわかりのよい王様でよかったよ」
「…気に入った!気に入ったぞ!貴様のことが!先程言った婚約パーティーに貴様も招待してやろう!」
そうして、王様が指をパチンと鳴らすと、近くにいた従者の1人がじゅんきに綺麗に封のされた手紙を渡した。
「それは我の息子の婚約パーティーの招待状だ。是非来るといい」
「…暇だったら来てやるよ」
「暇だったら来てやるか!いいな!ますます貴様のことが気に入ったぞ!来ることを期待しておこうぞ!」
そういうと、ミレミアム王は、じゅんき達を返ることを許可したので、じゅんきとシストリエスは従者に護衛されて、城を後にした。
「…王よ。本当にあんなやつに招待状を送ってよかったのですか?」
「あぁ。問題ない!あんなにも強い奴は初めて見た。あいつは、我もなし得なかったこと、この国を良い方向に変える英雄となるかもしれんな」
「…そうなると、いいですね」
ブルテナ城の玉座の間にて、ミレミアム王と、残った従者の1人はそう語り合うのだった。
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「なんか、どっと疲れた」
「本当ねぇ。こんな巨大な車を作っていることに驚くわ、沢山の食料がこの中に当たり前の様に入ったか様をみてまた驚くわ、帝国の城に行かさせるわ、そこで王様に気に入られて婚約パーティーの招待状を貰うわってなんか、色々と起きすぎよ。…まぁでも、そんな体験ができているから、私は楽しいけどね」
「…あぁ。俺もこんな体験ができて本当に今が楽しいさ。」
ブルテナ帝国を出て数時間、日も傾き始めている時間帯。短い草の生い茂り、あたりに少しだけ小さな木の生える平野地帯を「ブロロロ」というけたたましい音を響かせながら爆走する巨大な車、テンウイングズが獣人の街デミズへ向けて爆走していた。
爆走する車を動かすじゅんきのその横に乗るシストリエスはとてもとても疲れ切った様な顔で帝国でのことを思い出していた。
本当に色々なことがあったと思うと同時にじゅんきは、帝国について少し気になることもあった。
だが今そのことを調べると絶対に飯を作る気が失せそうなので、また近日中にやってしまおうと考えた。
そんなじゅんき達なのだが、岩場地帯をこのウイングズでどうやって切り抜けたのかについてなのだが、少し遠回りをして、平原から帰宅している。遠回りと言っても、ほぼほぼ反対側なので、あまりここをつかっての移動は避けるかとじゅんきは思いながらも、車を獣人のまた目掛けて走らせるのだった。
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「…到着だ」
「…長旅だったわぁ」
平原を走って1時間くらいが経過した。ウイングズの最大出力で走行した結果、見事に1時間くらいで到着した。デミズに着いてから、獣人達は行きとは違う明らかに巨大となった車を見て皆驚愕していた。自動で翼のように開いていく後ろの荷台。その中にぎっしりと詰め込まれた食料たちを見て獣人達は「ボスぱねぇ」と思いながらも、食料を運送するのだった。
ちなみに力がついているからか、重そうな食料を一気に幾つも持ち歩くという技を皆がしているので驚きを隠せないじゅんきとシストリエスであった。




