第34話 はぐれ転移者、教え子ができる
「て、帝国軍が…」
「…じゅんき。やりすぎ」
「えぇ。王混様。流石にやりすぎにゃ…」
「やりすぎではないだろう」
「「「………」」」
辺りに無惨に転がっている、かつて帝国軍人だったものを見て、シストリエス、ガタル、ユウラらの獣人達はじゅんきを目を細めながら各々が言葉を口にした。
現在、じゅんき、シストリエスと、ガタル達獣人達はかつて帝国軍に捕まっていた獣人達との合流をした後に、皆んなで隠れている軍人はいないか、そして、街の被害状況と亡くなった同胞、軍人の亡骸を葬るために回収しているところである。
敵のも葬ってくれるとは何とも優しい人たちだとじゅんきは思った。じゅんきの中では適当に山とかに遺棄するもんだと思っていたからである(最低である)。
話を戻して、亡くなった獣人達心臓部など重要な内臓の場所に弓矢が刺さっていたり、致命的な所を切りつけられたりした感じなのだが、軍人達の亡骸はそれはもうひどいものであった。
体の一部パーツしか残っていないものや、骨が全て砕けているのか体がぐにゃぐきゃになっており、もはや人間とは言い難い体制で亡くなっている者、そして、なにかで引き潰されたのかのようにペシャリとなっている者などだれがこんなことをしたのかがこの場にいた奴なら誰でも直ぐにわかるくらいの酷い惨状だった。
「まぁ、こんな酷い有様だが、この人が私たちのことを救ってくれた事は事実だ。我ら一同。感謝する」
「あー。うん。それよりもさ。…風呂…入りたい」
「あっ…はい」
ユウラと獣人一族の感謝の言葉は現在のじゅんきに届く事はなかった!じゅんきは感謝とかはどうでもいいのでさっさとさっきの蹂躙劇で浴びた返り血を流したかったのだ。
ガタル、シストリエス共に「ちょっとは空気を読みなさい」と思った。
「…なんで、こんな人が我らを助けてくれたんだろう」
ユウラは目の前で返り血にしか興味のないじゅんきに、疑念を抱くのだった。
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「さっぱり〜」
「そ、それはよかったです」
現在、じゅんきは奇跡的に残っていた水浴び場でじゅんきは自身に付着した軍人の返り血を洗い流した後、これまた奇跡的に残っていたユウラのお宅へとお邪魔し、一同で飯を食べていた。
服はシストリエスの魔法で綺麗にしてもらいました。(獣人の服を着るかと提案されたのをじゅんきは丁重にお断りした。だってあれははもはや服ではないからである)
床に座布団のような奴をひいて床で食べるという何とも異世界でありがちな展開である。そんなことにじゅんきは少なからずとも、わくわくしていた。
「…驚いた。獣人の作る飯も美味しいな」
「でしょう?我らの自慢の品々です」
じゅんき、めっちゃ失礼なことを言った。だいたい異世界漫画界で獣人の食しているのが生の野菜や、大きくそのまんま焼きましたって肉っていうイメージだったのだが、目の前に出される料理は適切に切られ、焼かれた肉に魚、それに添えられた水々しい野菜の数々。じゅんきが見たことはない形のものが多かったが、美味しいので気にしないことにした。
「…ところでなんですが、どうして王混様は我々の味方をしてくれたのですか?」
「…どうしてと言われても、俺はそこのガタルに依頼されたから。それを実行したまでだが?」
「…い、依頼?」
ガタル以外の獣人達が息を呑んだ。金銭か?それとも支配権か?それとも女を見返りに要求したのかと思った獣人達は息を呑んだ。
「あぁ。獣王を攻略するお手伝いをする代わりにここを助けるっていう契約だ」
「…え?」
「なんだよ?って、まさか拒否するとかそんな事は言わせねぇよ」
「…いや。そんなことでいいのですか?」
「なんで?」
「…見ての通り、私たちには力はない。だから私たちでは足手纏いだ」
「足手纏いがどうかは知らん。足手纏いだろうと、獣王攻略の条件には獣人も連れていかんといけない。だからこそ連れて行くんだよ」
「…父様、私からもお願いにゃ」
「ガタル…」
「今、私たちがこうして居られるのはこの人たちのお陰ですにゃ。私が勝手に取り決めた約束ではありますがどうかお願いしますにゃ!」
「う、うぅむ。しかしだな…」
「長!!これはチャンスですぞ」
そうして、じゅんきの裏でコソコソと話しをする長とその側近っぽい獣人。そうして、2人はニヤリと笑みを浮かべた後にじゅんきの方へと振り向いた。じゅんきは2人の様子を見てすごーくめんどくさいことを押し付けられそうな気がした。
「王混様。お手伝いは是非是非やらせてもらいます。そんなことでいいなら。しかし、そうとなれば、私たちからも、一つ、お願いがございます」
「なに?」
「お願いです。私たちを鍛えてください」
そうして、獣人達はユウラが起立した後に、続き、起立。ユウラが深々と頭をじゅんきにむけて下げた。その後に、他の獣人達も下げた。
「鍛えて欲しい…とは?」
「そのまんまの意味です。私たちも獣王の戦いに参加するって言うのなら、私たちもこの機会に自分たちでこの街を守れるくらいの力をつけておきたいと考えたのです!だからお願いします!」
そうして、再び深々と頭を下げた獣人族達を見て、じゅんきは不敵に笑った。
「…俺は素早さがないから遅い。だから実践的な物は俺自身が付けれない。俺の使う仲間を使用することになるが、加減とかはできればするものの、かなり危険になるだろう。そして、魔法の才は俺には多分ないぞ。特に攻撃魔法は教える事はできないぞ」
「そこは大丈夫よ!じゅんき!」
そうして、じゅんきの片腕に抱きつくシストリエス
「魔法は私が教えるわ!」
ぐっ!いいねポーズをするシストリエス。
「…確かに。トリエスなら安心、頼もしいな。それでいいなら、俺はお前らを鍛えてやろう」
そう言われ、獣人達は周りの同族を見て決心を深めたようだ。
「「「「「「お願いします!」」」」」」
と、獣人達は言ったのだった。この日、じゅんきとシストリエスに教え子ができたのだった。
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「なんだか、貴方といると退屈しないわ。今までの退屈さを全て消してくれるかのような濃ゆい日々を過ごせて満足だわ。本当にありがとう」
そう言いながら、唐突にじゅんきはシストリエスにほっぺにキスをされながら感謝された。現在は獣人達との食事を終えた後、じゅんきとシストリエスは獣人達から部屋を貸してもらいそこに停泊していており、ベッドの上に座っている状況である。
貸してもらった部屋はすごく綺麗だったが、周りの家々は破壊されているものもあり、この新略がすごく凄惨なものだったと改めて皆んなに認識させた。
ちなみにガタルや他の獣人達は居ない。おそらくだが、ユウラが気を利かせて2人だけの空間にしてくれたのだろう。ちなみにガタルは尻尾を立たせて「うにゃー!私もいるにゃー!」と怒りながら、父親に連行されていきましたとさ。
「俺もトリエスといると退屈しない。元の世界での生活はきついしかなかったから。…今が最高に楽しいぜ。やっぱり旅をしている者として、旅には仲間が必要だな」
「私は仲間じゃない」
え?仲間じゃないの?って少し悲しそうな顔でシストリエスを見るじゅんき。シストリエスはその顔を見て呆れながら
「私は仲間じゃなくて恋人!貴方と誓い合った恋人!そして未来の妻!いい?」
じゅんきは「あぁ。成程!」って顔をした。シストリエスはむぅとほっぺを膨らませている。なんで怒り顔もこんなに可愛いのだろう。おっきい帽子を取っているからかお顔がよく見える為、その顔は犯罪級だろとじゅんき頬をを赤くしながら思った。
「そ、それは悪かった。恋人といるともっと楽しいぞ」
そう言いながら、じゅんきはお詫びと言わんばかりにシストリエスの頭を優しく撫でた。シストリエスさん。大変ご満足だったようです。そして、ハァハァとし始めました。同時になんかのスイッチも入ったようです。
「それじゃあ未来の旦那様!」
「うぉっ!?」
そうして、じゅんきの見ていた光景が壁から天井へと代わった。
「…シストリエスさん?」
「なぁに?」
「今はどう言う状況なのでしょう」
「添い寝?」
「そうですか。ならもっと奥へと行こう?明日も早いしね」
襲われて…って展開にはならなさそうです。シストリエスに押し倒され、添い寝をしようと言われたじゅんきは当たり前だが、抵抗も拒否することもなく、明日も早いので一緒に寝ることにした。
「…ふふ。そうね」
そうして、2人はベッドの奥へといき、抱き合うようにして布団の中に入った。
「…なんか。夢のようだ」
「なんで?」
「だって目の前に魔法を使えるとかいう俺のいた世界ではありえないことを成し遂げる可愛い女の人がいて、その人が俺の恋人なんだぜ?そして今、添い寝もしてるし?」
「…そうね。世の中生きてると封印されて退屈な人生かと思ったら、それを救ってくれる人と旅をして、その人と恋人になれるって言う人生もあるからね」
「…あぁ。確かにな」
そう言いながらも、じゅんきは安心感からか、睡魔に身を委ねた。同じくして、シストリエスも、眠りにつくのだった。




