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第33話 時として、車は移動手段ではなく攻撃手段になります

「…完成だ」


戦火に包まれる街の中でじゅんきは自分の愛車を置いた(放置してきた)場所へと1人で戻って来て、少し久しぶりの生成師としての技能を使い、「グリルガード」と呼ばれる物を造った。(ツインクには適当に暴れてもらっています)


グリルガードとは、車の全面に装着する岩などの障害物から車を守ったりするものである。


グリルガードはじゅんきの元いた世界では樹脂やプラスチックでできている物であるが、この異世界にそんなもんは存在しないので、普通に鉄鉱石を加工して造った。防御力(攻撃力)、重さは格段に上がっただろう。


元から車に付けていたプッシュバーを外し、グリルガードに付け替えてみると、なかなかに様になっている。ラ○クルやR○V4といったオフロード車をモチーフにして造っただけはあるなと思いつつ、じゅんきは車に乗り、エンジンを掛けた。


「ぶっ○すぜ!ベイベー!」


じゅんきの元いた世界で国民的なアニメの映画には絶対出てこない事を車の中で1人で叫び、アクセル全開で車を走らせたじゅんき。側から見れば異常そのものであり、そして、無法者である。車はタイヤをゴゴゴゴと言わせつつ、砂埃を撒き散らし、空回りをしつつ勢いよく発進したのだった。











「あー。早く終わんねぇかなこれ。俺早く捕まえた獣人の女抱きてぇよぉ」


「お前はさっきからそればっかりだなぁ」


「だって見たか?ここの女。みーんな美人で胸でかい奴多くて露出高めの服装だぜ?エ○すぎだろ」


「…まぁ、気持ちはわかるが今は隠れてる獣人が残ってないかを探せそうぜ。…てかさ。なんか聞こえないか?なんか、轟音が」


「はぁ?何言ってんだよ。疲れてるのか?」


軍服に身を包んだ男が2人、呑気にそんな会話をしながら戦乱に身を包んだ街を歩いていた。そうして、2人は建物の間の街へと差し掛かった。


「なんか照らさせて…ってうぁぁぁぁあ!」


2人の男が十字路のような道へと差し掛かった時、突如現れた光が近づいて来たと思えば、「ドン!!!」という鈍い音と、「キーッ」と言う音、そして、「ゴゴゴゴ」と言う音が、辺りに響いた。


2人は何かによって吹き飛ばされたのか、天高く舞い、血を吹き出しながら、すぐに落下を始め、「グシャリ」という人が出してはいけない音を出して地面に叩きつけられた。


「あ…ぅ…な…にが起こった…」


「く…て…敵か?」


男たちは自分たちを吹き飛ばした奴がなんなのかを確認するため、痛い体に鞭を打ち、その方向になんとか首を曲げた。


男たちの視線の先には先程の白とは変わって、真っ赤な目のような物がこちらを見つめていた。


その刹那、赤い目は突如として、白く光り、「ブーン」と男たちは聞いたこともない音を耳にしながら、視線の先の奴は近づいてくる。


「ま…まって…くれ」


「く…くる…なぁ!」


そんな男たちの声も虚しく、「グシャリ」と言う音と共に、男たちは自分たちの知らないものに轢かれ、2度とその体を動かすことはなくなった。


その後、「バタン」と言う音と共に、男たちを殺したものの中から男が1人、出て来た。


「…馬車と違って、車は攻撃手段にもなるな。てか、こんなものに轢かれたら確かに死ぬわな。元居た世界恐ろしや」


そう独り言を言いながら前面が紅く染まった車から出て来たのはこの車の持ち主、〈王混 じゅんき〉その人である。


じゅんきは現在愛車の下で動かなくなった男たちを車で2回も轢いた。1回目は70キロくらいの速度で鉄製のグリルガードを装着した全面によって。これにより、男たちは血を撒き散らしながら天高く吹き飛ばられただけでなく、鉄になったことでより攻撃力(殺傷力)の増したグリルガードによってほとんどの骨が砕けただろう。そして、重力によっての一撃。男たち、瀕死になる。


そして極め付けはバックによっての確殺。これにより、男たちは2度と目を覚ますことはなくなった。


なかなかに酷いことをしたじゅんきは、「車が…汚れた」と思いつつ、再び車へと乗りアクセルを踏むのだった。














「よし。これで全員か?」


「現時点ではこれだけです。隊長!…しかし、まだあいつら2人が探したっきり戻って来てません」


「くそ、あいつらは何をしてるんだ。かれこれ30分は経っているぞ。まさかもう女を辱めてないだろうな?」


「少し様子見て来ましょうか?」


「…いや、いい。帰ってきてから問いただす」


「了解です。隊長」


「…にしても静かではないか?」


「…そうですね。さっきまであんなに轟音がひびいていたのに…もしかして、他の隊全てやられました?」


「はっはっは。バカを言え。こいつらは戦闘経験の少ない亜人だ。いい技能持ちがいたとしても、我らの軍勢には無意味さ」


「確かに!そうですねぇ」


そう鎖で繋がれた獣人達の前で会話をする軍人達。繋がれている獣人の目からは輝きがなかったり、絶望していたり、何かする事を諦めたり、また助けが来てくれると希望の目を持つものと色々だった。


そんな獣人達を現在軍人達は自身の国へ持って帰るための輸送用の馬車を待っているのだ。


「…来たのか?」


何かが、軍人達の元へと近づいて来る音が辺りに聞こえ始めた。人間ではない。乗り物などの音。希望を持つ獣人も絶望に飲まれ始めた。もう助からないと。俺たちはどうなるのだろうと。そう思い、涙を流す者も現れた。


「…待て!馬車じゃない!?なんだありゃ!?」


「せ、戦闘準備ー!」


馬が放つことのない白い光と、音を聞いて軍人、獣人達は驚き、軍人達は戦闘体制をとった。その間にも白い光は軍人達の元へと爆速で近づいて来ている。


「おい!そこのおま…え?それ?…なんでもいいわ!取り敢えず!止まれ!土の神よ。我らを守りたまえ!ロックウォール!」


軍人の1人が、白い光を放つものを通られせまいと、自身の持つ詠唱魔法によって、地面から自身達を守るようにして岩の壁を生成した。


壁が即座に出来た。これであれは来られないはず…だったがしかし、壁はいともかんたんに破られた。「バゴーン!」と言う音と共に壁にぽっかりと穴が空き、岩壁を生成した男の目の前に白く光る奴が姿を現し、そして。


「…か、壁が!?…なら、土の神よ我を…ぐっゔぉあ…」


詠唱の前に男は跳ね飛ばされた。「バキゴリ」と骨が砕ける音と血を撒き散らし、男は天高くへと舞った。軍人を弾き飛ばした奴はそのまま「ブーン」と言いながら、別の軍人の元へと爆速で向かった。


そう、囚われの獣人達の元へと来たのは、他の誰でもない、王混 じゅんきとその愛車、PRV殺意マシマシ(グリルガード装備車)仕様である。


じゅんきは車の中で「イエェース!」と訳のわからないことを叫びながら壁を生成した軍人をはじめとして、次々と軍人を跳ね飛ばして行った。80キロから速度を落とし、軍人達の走る速度くらい(だいたい10キロにした)という遅めの速度にも関わらず、鉄製のグリルガードを装着したPRVの持つ殺傷力というのは相変わらず高い。


「く、くそう!?なんだあれ!」


「た、隊長!撤退しましょう!」


「だが亜人を!」


「隊長!今はそんな呑気なことを言ってる場合ではないっす!今は撤退して、他の味方軍にこれを知らせるべきです!」


「むむむ。…仕方なしだな。ぜ、全軍撤退!!」


そうして、軍人達は撤退を始めた。じゅんきの車を背に向けて、音を頼りにじゅんきの車の攻撃を横へと避ける、避ける。


「だーっ!もう!この軍人が。ちょこまかと逃げんじゃねぇよ!」


PRV。オフロード走行に優れている反面、小回りは効きにくい車なので、撤退を始めた軍人を跳ね倒せないことにイライラを感じたじゅんきである。


「よし!あのわけわからない物から逃げているな」


「はい!このまま行けば撤退できますね!」


その言葉で軍人達の目からは希望が溢れ出た。何かもわからないものも速度を落とし、停車するかの勢いになった。


そんな光景に、軍人誰しもが逃げ切れると思った。









…が、それは俗に言う()()()と言う物である。そう慢心した後には、お約束の展開が待っているというものである。


軍人達が走っていると突如としてボロボロになった建物の壁をぶち壊しながら、頭、恐竜。体、オークの継ぎ接ぎ姿の異様な化け物が現れた。


じゅんきの忠実な仲間(下部)のダイナオーツインクである。ツインクは「グォォォ!」と言いながら自身の間近に居た軍人を捕まえて、喰った。


辺りに居た軍人に、血がかかる。それを見て軍人達は後退りする。しかし、後ろを見ると、じゅんきのPRVが速度を上げて迫って来る。


絶対絶命の状況で、軍人達はなす術なく、車に轢き飛ばされたり、ツインクに喰われたりして、亜人を捉えていた軍人達は全滅した。


亜人達は何が起こったのかわからないまま、その場に呆然と立ち尽くすのみだった。











「…獣人達よ。大丈夫か?」


「…あ、貴方は?」


「ガタルとの契約でお前らを守ることになった人間さ」


「が、ガタル様と…それに、貴方は…人間…か」


「その通り。まぁ、お前らからすれば人間に助けられるのはいい気分ではないだろう。だがな、俺は帝国っていう所の人間じゃないから安心してくれ。なんなら帝国を知らん」


「そ、そうなんですね」


「お兄ちゃん!助けてくれてありがとう!!」


「なに。いいってことよ」


車を獣人達の近くに停車させた後、車から降りたじゅんきは獣人達につけられた鎖をスムーズに外していた。その傍らで、じゅんきは獣人達に感謝を述べられていた。


「…全員に連れられていた鎖が全部剥がれたな。…ここら一帯の軍人は全員潰した。おそらくではあるがお前らの身に何かが起きることはすくないだろう。俺は今から仲間と合流しに行く。お前らはどうする」


「…我々はここで待機しておきます。我々とて、ここに集められた今なら、多少は抗えるので」


「…そ。ま、気をつけて」


そうして、自分たちを守れると宣言したことをきいたじゅんきはシストリエス達を探すために、車にのり、アクセルを踏むのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「嬢ちゃんすげぇな。俺たちあっという間に回復したぞ」


「任せてくださいよ」


「あぁ。本当に感謝する」


「すごいでしょ?私の連れて来た人はにゃ」


「…あぁ。ガタル。お前もやるようになったな」


「ふふん!」


「…ガタル?そういえばじゅんきは?」


「あー。みてないにゃよ。王混様は何処へ行ったにゃ?」


「…ガタル?王混様って誰だ?」


「王混様は素晴らしい人ですにゃ。人間でありながら私たち亜人を助けてくれている人ですにゃ」


「ふ…不思議な人…だな」


「お、長!?大変です!?」


「ど、どうした?」


「謎の光が、謎の光がこちらに爆速で向かって来ます!」


「て、敵か?」


「わかりません!」


馬ような足と耳を持った男のその一言によって、獣人達の間に戦慄した空気が流れ始めた。


新たなる敵襲かもしれない。けど、謎の光とは何なのか。全く正体の掴めないものに警戒体制を取るしかなかった。


「き、来たぞ!」


さっきの馬の一部を持つ男の一言によって、ガタルも、シストリエスも、警戒体制をとった。そして、辺りに「ブーン」という音が鳴り響いた。


「ブーン?この音何処かで…」


「聞いたことがあるにゃ…」


ガタル、シストリエスは聞き覚えのあるこの後に耳をすませると同時にその後のする方へと視線を向ける。


「「…あー!あれはじゅんき(王混様)(にゃ)ー!」」


「…え?」


獣人達が爆速で来る光に何度も視線をやる。あれがガタルや自分の恩人である人のいうじゅんき?王混様?なのかと。名前からして人間っぽいが、あんなわけのわからないでかいあれがじゅんき、王混様なのか?と。


そんなことを考えている間に光る目を持つ奴は獣人達の目の前に現れ、停車した。そして


「パカリ」


「「「「「…パカリ?」」」」」


光っていた目が奴の出す音と共に消えると同時にパカリという音が聞こえた。そして。


「ここにいたか!トリエス!ガタル!」


「じゅんきー!会いたかったわー!」


「王混様ー!」


なんともびっくり、中から人間の男が出て来たではありませんか。獣人達には何が何なのかもうわからなくなっていた。


車から出て来たじゅんきはシストリエスと、ガタルに抱きつかれていた。


そして、シストリエスはガタルがじゅんきにくっついていると感じると直ぐに、器用な脚使いでガタルを蹴飛ばし、ガタルをじゅんきから離した。


「なに()()じゅんきに触れてるのさ!」


と声を大にして、じゅんきにもっと深く抱きつき、ガタルに言った。ガタルは「なにするにゃー!ウニャー!」と猫らしい口調になり、威嚇をしつつシストリエスを引っ掻いたことで、それにキレたシストリエスと2人で喧嘩を始めた。


「はぁー」とため息をつくじゅんきはそのままこっそりと喧嘩する女達から離れ、屈強でなんか動物の耳が似合わない男達の元へと向かった。


「すまんな。うちの女が」


「あぁ。いえいえ。こちらこそすみません娘が。ですが、貴方達にはとても助けられました。とても感謝しています」



あっ、この獣人。語尾ににゃーつけない亜人か…と、じゅんきは目の前のムキムキなのに、ネコミミを生やしていると言う元いた世界では意味がわからなくて脳が理解を拒みそうな展開を「異世界だからな」でなんとか片付けたと同時に、こんな奴がにゃとかを語尾に付けていたら……と、少し失礼な想像をしたじゅんき。


「そうか。…自己紹介がまだ…って言ってもあいつらが散々言ってたから何となく知ってると思うけど、改めて。俺は王混 じゅんき。冒険者だ」


「私は〈ユウラ=メリアーヌ〉。この町デミズ全体を取り仕切る長です。この度は娘や私たちを助けてくださり、ありがとうございました」


「いいってことよ」


さぞ当たり前!って感じで答えたじゅんきだが、今、目の前にいる奴がこの街の長という超絶ビックな存在であること、そして、その娘ガタルも同様にここではかなり位の高い人間なのだと知った。それと同時に自分があの時車から追い出したこと、そしてシストリエスのさっきの行動を思い出し、少しだけ青ざめた。


「貴方様から受けたものはいつか絶対に返します。俺たちも大分回復しましたし…おいお前ら!残りの同胞を助けにいくぞ」


そうして、「うぉー!」と大声を上げ、士気を高める男達。


「…助けに行くとは?」


「他にも囚われの身の我が同胞達がいるかもしれない。悪しき帝国の奴らの手には落とさせいために!」


と、ユウラは右手をグーにしながら挙げた。


「…なぁ、この状況でさ。大変言い難いことなんだけどさ?俺、その帝国軍人…って奴ら多分全員倒したぞ?」


男達が「え?」と言わんばかりの顔で固まる。そして、やけに静かな獣人の街デミズ。獣人達がデミズから帝国軍人がいなくなったことに気づくまでにはそう時間は掛からなかったのだった。

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