第28話 Get destiny
「…はは。そんなことはしないさ。我の理念に反するからな。…負けを認めよう」
愛用の剣、盾が使い物にならなくなり、ホナークルご自慢の魔法も効果がない新禁断王に勝てないと悟ったホナークルが、この勝負を投了する形で戦いは終わった。
「にしても、ブラックの力をそこまで引き出すとはな…」
「当たり前…ではないな。あいつの力が俺に馴染んでくれているからこそ使えたさ」
「ふふ。何事にも我関せずなブラックが1人の人間にここまで肩入れするとはな。意外だった」
「そうなのか?」
「ああ。あいつは昔からずっと他者のことは興味ないのだよ。お主らのような者達には当然、我らにも関心を示さなかった奴だからな」
「そんな奴だったのか…考えられんな。俺と会った時なんか超明るかったしな」
「…不思議だな。…ところで、ブラックの今いる場所はどんな感じだった?」
「なーんもない。質素レベルが限界突破してた」
「ふふふ。ほんと、そこら辺は変わらないな」
そうして、じゅんきとホナークルは会話を続けた。ホナークルはじゅんきの旅路や、ブラックとの出会いなどなどについて気になったようでじゅんきはそれに答えた。
学校に行って寝てたら魔法陣が浮かんでて、それから逃げた後に、ブラックによって呼ばれ、この世界へきたこと。そのときに力を譲り受けたこと。そこから、この神山へ来るまでの旅路を少し。ホナークルは「うんうん」と首を縦に振りながら、興味津々に聞いていた。
「それで、今に至るのさ」
「…来てそんなに時間が経っていないというのに、かなり濃い内容だな」
「そうだな。結構濃い内容だ」
「ますます、貴殿に興味が湧いた」
そうして、ホナークルの表情はほわわんとした感じから代わり、真剣な顔になった。
「今一度問おう異世界人。貴殿は我の力を得て何がしたい」
その問いにじゅんきはいつもの返事を返した。
「…俺がまったりライフを送る為、かな?」
「ほう?」
「俺がこの世界に来てからの目標だ。前の世界では辛いこともまぁ、沢山あったからな。主には自分に力が無かったから処理できなくて、されるがままの人生だったのだが。だがしかし、俺はこの世界に来てブラックと出会い、力を得たことで俺は変わった。今は力がある。俺自身を守れる力を。だからこそ、この世界で新しい人生を始めると同時に、まったりとした平穏な生活というものがしたくなった。その目標を達成しようとしたが、今度はつまらん神のせいで絶えず争いが種族間で続いている。そんな中で当たり前だがまったりと生活なんでできない。その魂胆の原因であるお前らの力を神達が手に入れる前に手に入れて、そして神を滅ぼしてまったりライフを勝ち取りたいから。かな?」
「…面白い。実に面白い!ますます気に入ったぞ!…決めた!我は貴殿に我の全てを授けようぞ!」
「…いや。俺に全てを渡されるのは困る」
そうじゅんきに返されたホナークルは、困惑の表情を見せた。
「ど、どうしてだ。貴殿は我の力が欲しくてここへ来たんだろう?そ、それに、まったりライフ?というのを送るには、我の力が…」
「そうだな」
「じゃあなぜだ!?」
「…簡単な話さ」
そう言いながら、じゅんきはシストリエスとツインクのいる場所へと向かい、シストリエスを揺さぶって起こした。シストリエスはゆっくりと起き上がった。
「んん?なぁにぃ?まだ寝てたいよぉ…」
じゅんきは、これがこんな王のある空間じゃ無ければ赤面していただろう。だって美人がほわわんとしてるのだから!だけど、今は王の試練中。だからこそ、じゅんきにその気持ちが湧くことはなく、「早く起きろや」っていう感情しか湧かなかった。
「…起きろ。トリエスが寝てる間に戦いは終わらしたぞ。だから起きろこの寝坊助。大事な話があるから」
「だ、大事な話!?うん!起きる起きる!」
じゅんきからの大切な話しという言葉を聞くと、先程までのほわわんな空気は消え去り、シャキッとし、ツインクの大きな足の上で寝ていた体を勢いよく起こした。
そうして、じゅんきはシストリエスを連れてホナークルの元まで来た。
「そ、それでじゅんき。だ、大事な話って…もしかして…」
「おっ!察しがついてるのか。やっぱり賢いな。そう!お前にはこのホナークルの力を一部でいいから受け継いで欲しいのだ!」
「…えっ?」
「…なぬ?」
シストリエスも、ホナークルも、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしながら、じゅんきを見た。
「わ、我の力をこの小娘に?」
「わ、私が…天命王の力を…?」
じゅんきよ言葉を聞いて、シストリエスはなぜかすごく落胆していた。なにかはじゅんきもわからず、話しを続けた。
「そうだ天命王。だが、お前の全てをトリエスにあげろというわけではないぞ。お前だってそれは望んでいないだろうし、シストリエスもそれは同様だろう」
「ま、まぁ、そうだな」
「…なんで私が力を…」
「トリエス。簡単な話しと言ったろう?今でもトリエスは強い。並大抵の敵にはやられないだろう。だがな、今回のように強敵が来た時に俺が対応不可になったとしても、己の力で対抗できるように…ということさ。俺だけが力を持ってても仕方ない。あと、俺、ホナークルが使ってた天命魔法?使えないんだよ」
「…どういうことだ?」
「魔法属性を持つ攻撃が俺は使えない…ってこと」
「「あっ…」」
ホナークル、シストリエスは息ぴったりにそんな声を漏らしたと同時に憐れみの目でじゅんきを見た。
「「なんか、ごめん」」
「…辞めてくれない?そんな目で見るの。悲しいから」
じゅんきは心に傷を負った。泣きそうになった。
「…まぁ、気を取り直して。どうかな?」
「…私からすれば、ありがたいけど…」
「…我は…」
「まぁ、天命王っていう肩書きを持つ傍ら、完全に認めた奴にじゃないと力を渡したくないってのは理解してる。だがな、お前の天命魔法は俺には使いこなせない。別にお前の力を全てこいつに渡せってんじゃない。お前が認めたのは俺だろう?なら、意思とかそこら辺は受け取る。だが、魔法に関しては俺が認めてる奴、かつ魔法に才のある奴に渡した方がいいだろう?」
そう言いながら、じゅんきはシストリエスの頭をポンって優しく叩いた。その行動にシストリエスはタコさんのように顔を真っ赤にしたことをじゅんきは知らないのであった。
「…なるほどな。なんでもかんでもを独り占めするのではなく、苦手な物や才のないものは、才のある味方に譲るか、やはり、貴殿は面白い!!いいだろういいだろう!貴殿のその願い聞こうぞ!」
ホナークルは澄んだ声で笑った後、シストリエスとじゅんきに力を譲る儀式を行った。じゅんきは、自分にわずかながらの力が流れ込んでくる感じと、ホナークルの意思を感じ取った。ホナークルも当たり前だが、神を憎んでいるようだ。だからといって、前回のようにしんどい感じはしなかった。なんというか、少しだけ心地いいかんじであった。
「…これで儀式は終わりだ。小娘、貴殿には我の傑作魔法、天命魔法のほぼ全てを授けた。そして、我に認められし者よ。貴殿には我が選んだ貴殿が使えそうな天命魔法と、我の意思を渡す。我の願い。どうか叶えてくれ」
「任せておけよ!天命王!」
「ありがとう。天命王、じゅんき」
そうして、シストリエスは抱きつこう…として、辞めた。悲しい顔をなぜか浮かべながら。その光景をじゅんきが見ることは無かった。
「力貰う儀式も終えたし、そろそろ帰るとしようか。疲れたわぁ」
「そ、そうね」
「あぁ。なら、ここでお別れだな。…最後に、一ついいか?」
「なんだ?天命王」
「貴殿達の名を教えてはくれんか?」
「それくらいは全然いいさ。俺は王混 じゅんき。こっちは」
「シストリエスです」
「王混 じゅんき、シストリエス…か。素晴らしい名だ最後に我が認めた奴らの名をかけて良かったよ。…またいつでも来るといい。今度は我の加護のおかげで我の下部一同も暖かく歓迎するだろう」
「また機会があれば来てやるよ。…またな、天命王 ホナークル」
「…あぁ」
こうして、じゅんき達は天命王の試練をクリアしたのだった。残るの王は3王。(六王は数に入れてません)
「王混 じゅんき。あいつは、この世界を変える奴だな。…我はどうやら、凄い奴と出会ったようだな」
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「…シストリエス。どうしたんだよ。さっきから元気ないけどさ」
「え?い、いや?そ、そんなこと、ないよ。ただ、考え事してるだけ」
天命王の試練達成後。近くに街があることをシストリエスに教えてもらったじゅんきは、その街目指して車を走らせている。車では行きの時のような会話をしまくっているわけではなく、シストリエスがずっと何かを考えているからか、エンジンの音だけが車内に木霊していた。
気まずい。さっきの戦いのことを気にしてるのかと思ったじゅんきは、心配になり、シストリエスに声をかけたというわけだ
「…話したくないなら、無理して話さなくていい。だがな。仲間が考え詰めて不安そうな顔をしているのを俺は見たくないってことだけ伝えておこう」
「そうなんだ。じゅんきは優しいね」
「俺は優しくない。敵は全て倒す。そんな非情な男さ」
どっかの最強錬成師が言っていそうな言葉をなんとなく真似しつつ、シストリエスにそう語った。
「いや、優しいよ。じゅんきは、私のこと、励ましてくれるし」
「仲間だからな。仲間がそんな悲しい顔をしているのは見たくないし、仲間とは本音で語り合いたい」
「!?も、もう///」
「で?結局話すのか?話さないのか?」
「話す…というより、貴方に聞きたいことがあったの」
「…なんだ?」
「…じゅんきはさ。私のこと好き?」
「なんだよ藪から棒に。好きだけどな。お前のことは(仲間として)」
仲間として、ということをじゅんきは言い忘れていた。なぜなら!唐突に可愛い美人の仲間から好きかという質問を上目遣いでされたからである!ちなみにじゅんき。平静を装っているが内心では「好き?なんだその質問ー!あとかわいい」って焦っていました。
「ほ、ほんと!?」
「あ、あぁ。当然だろ?」
「…嬉しい///」
笑顔になりつつも、お顔真っ赤タコさんになりました。じゅんきは「この笑顔。守りたい」って思いました。
「ねぇ。もし、今までの私が偽りの私として、本当の私を見せるよって行った時。貴方はそんな私のこと仲間だと思ってくれる?」
タコさん色から落ち着き、普段の綺麗な肌色に戻ったシストリエスは、先程のようなにへにへとした笑みを辞め、落ち着いた雰囲気を醸し出し、同時に顔もそんな感じの顔になった。
「なんだよ本当に。お前さっきからおかしいぞ。どんな姿でも性格であっても、お前はお前。シストリエスはシストリエスだ。本音で語り合えるなら、それは願ってもないことさ」
「…たとえ私が結構重い女だったとしても?」
体重が?それとも…?っていう言葉が喉元まできたものの、この言葉を言ったらぶちのめされそうなので、ぐっと堪えた。
「あ、あぁ。だが、本当に大丈夫か?お前らしくないぞ。そんなことを言うのは」
「そうね。さっきの戦いで私。大分疲れたのかも」
そうして、疲れた顔を見せるシストリエス。先程の戦いで、いろいろと疲れたのであろう。だからこそ、変な質問をしたのだろう。そうじゅんきは思うことにした。
「…しばらく寝ておけ。まだ街まではかかるからな。起きてから、また続きを聞かせてくれ」
「…うん」
そうして、シストリエスはドアにもたれかかるようにして眠りについた。
「…大好きだよ。じゅんき」
そう、小さく呟いて。これもまた、じゅんきは聞いてなかったのだった。




